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干ばつから氷河の消失まで:アフリカの気候の現状を考える

2030年までに、水ストレスの増加により、アフリカでは7億人が避難を余儀なくされると予測されています。

2030年までに、水ストレスの増加により、アフリカでは7億人が避難を余儀なくされると予測されています。 Image: REUTERS/Alkis Konstantinidis

Claire Ransom
Assistant Scientific Officer, World Meteorological Organization (WMO)
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COP28

  • アフリカでは、過去50年間に干ばつによる被害で50万人以上の命が奪われています。
  • 気候変動はアフリカ大陸の水域に甚大な被害をもたらし、食料安全保障に打撃を与え、生態系を脅かし、社会経済の発展を阻害しています。
  • 水ストレスにより、アフリカでは2030年までに7億人が避難を余儀なくされると考えられています。

気候危機について議論するために、あらゆる分野から数万人もの人々がエジプトのシャルム・エル・シェイクに集結しています。COP27は、各団体が気候変動に関するレポートを発表、各国が気候変動に対する取り組みを協議し、世界が気候変動による起こりうる大惨事を回避する方法について合意に達するための場です。

多くの人にとって、COP27は、気候変動が将来世界に与えるインパクトと、それをいかにして回避するかの理解を深める機会となりますが、さらに重要なのは、この会議が大河・ナイル川を擁するエジプトで開催されるため、アフリカ大陸が水ストレスを中心として直面ししている深刻な課題に人々の関心を集める絶好の機会であることです。

アフリカの水域と氷河に対する脅威

水ストレスの危険にさらされている場所は、世界に11ヶ所ありますが、そのうち3ヶ所はアフリカです。過去50年間にアフリカで干ばつにより失われた命は50万以上。損失額は700億ドル以上に上ります。

ソマリアでは、2021年だけでも国土の約90%が干ばつに見舞われ、320万人以上がその被害を受けています。マダガスカルでは、過去40年で最悪の干ばつが続いており、河川の枯渇や水の価格高騰によって、地域の人々は命の危険にさらされる状況に追い込まれています。2021年末には、マダガスカル南部の70%の人々が飲料水を手に入れることができず、50%の人々は水、トイレ、衛生に関する緊急支援が必要な状態になりました。

干ばつと降水パターンの変化は、アフリカ大陸の最も著名な水域にも影響を与えています。例えば、ビクトリア湖は、水量の約80%を降雨に依存しているため、エルニーニョ(雨季)やラニーニャ(乾季)の年には大きな影響を受けます。チャド湖のように降雨の影響が少ない湖でも、湖水面積は1960年代から1990年代にかけて90%近くも減少しています。これらの湖の変化は、食料安全保障、エコシステム、生物多様性など、広範囲に影響を及ぼしています。また、水不足の悪化は、周辺国の社会経済の発展にも悪影響をもたらし、強制移動や減少する資源をめぐる紛争が深刻化しています。

1973年1月から2018年5月までのアフリカのチャド湖の水位低下
1973年1月から2018年5月までのアフリカのチャド湖の水位低下 Image: 米国地質調査所のランドサット画像をもとに国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)が作成。

しかし、この地域で懸念される水関連の危険は、干ばつだけではありません。アフリカには氷河が残っている山が3座ありますが、うち2座では、2030年までに氷河が完全に消失。有名な観光地である3座目のキリマンジャロでは、2040年までに氷河が消失すると予測されています。こうして、人為的な気候変動によって氷河が消失するのは、世界で初めてのことになります。一方、アフリカの標高の低い地域では、海面が世界平均よりも早い速度で上昇しているため、沿岸の洪水や浸食の頻度・規模ともに増加し、淡水資源が被害を受けています。


これらの脅威により、すでに脆弱な状況で生活している数百万人の命が脅かされているだけでなく、地域の社会経済的な発展が損なわれ、持続可能な開発目標(SDGs)の進展が阻害されているのです。アフリカでは、2030年までに1億800万~1億1600万人が海面上昇による影響を受け、7億人が水ストレス増加で避難を余儀なくされます。また、アフリカ諸国の5ヶ国中4ヶ国では持続的に管理できる水資源がない状態になると考えられています。

アフリカの水の脆弱性に対処する

COP27は、気候変動に関する経験は各国に差があることを明らかにすると同時に、早期警戒システムの導入、能力格差の是正、より効率的な資金調達など、対策の優先順位を決める貴重な機会となります。

早期警報システムは、災害リスク軽減の基本的な要素であり、大きな財政投資効果が期待されます。9月の国連総会の開催に合わせ、世界気象機関(WMO)を中心とした国連機関が発表した最新の気候科学関連情報に関する報告書「United in Science(科学の統合)」によると、早期警報システムに対する投資は、1ドルに対して平均約9ドルの経済効果があることが分かっています。それでも、アフリカの人口の60%は、異常気象や気候変動に対処する早期警報システムが適用されない地域に住んでいます。さらに、干ばつや洪水の影響が明白であるにもかかわらず、総合的な干ばつ予報や警報を出している国は(十分なデータが得られた国のうち)わずか20%しかありません。


警報システムの実施と水資源管理を改善するには、基本的な水文学変数のデータ収集における能力格差を解消することが重要になります。このデータは、早期警戒システムや気象予報の基本となるもので、SDGs目標6の重要な要素である統合的水資源管理(IWRM)においても不可欠なものです。IWRMデータポータルによると、このようなシステムを効果的に運用するキャパシティがない国は、データが入手可能なアフリカ諸国の50%以上となっています。それでも、格差解消のためには十分な資源が必要です。

資金調達を改善する

早期警戒システムの適用範囲を広げて、能力の格差を解消し、アフリカ大陸全体で気候変動対策を推進していくためには、資金調達と既存の資金フローを改善することが重要です。パリ協定に基づき国が決定する貢献(NDC)を提出した53の締約国のうち、約80%が国際社会からの資金援助を必要としています。特に、最も貧しい人々が既存資金調達メカニズムの恩恵を得られていない可能性が調査で指摘されていることもあり、資金援助の必要性はさらに高まっています。

COP27に参加していなくても、対話に参加することは可能です。アフリカ大陸の水資源の問題は、気候変動が世界の人々に与えている影響の一例にすぎません。各地域の気候の変化については、世界気象機関の「アフリカにおける気候の現状報告書」、「アジアにおける気候の現状報告書」、「欧州における気候の現状報告書」、「ラテンアメリカ・カリブ海地域における気候の現状報告書」、「南西太平洋における気候の現状報告書」をご覧ください。

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