ランダムに選ばれた人が環境問題へ提言できる「気候市民会議」世界で広がる
ランダムに選ばれた人が環境問題へ提言できる「気候市民会議」世界で広がる Image: Unsplash/Jason Goodman
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スペイン
2020年10月、菅元首相が「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言したことは、記憶に新しい。近年、目標の達成に向けて国や企業など、多くの人々が、「レジ袋を削減しよう」「エネルギーを節約しよう」「リサイクルしよう」などと呼びかけている。
こうした大きな目標を達成するには、国民の理解や協力が欠かせない。しかし、国民が政府に対して「どちらかというと、これに投資してほしい」「この情報の透明化をもっとしてほしい」といった提案を行うことも、とても大切だ。
国民は提案を行うにあたって、環境問題について主体的に学ぶことができ、国は国民の声を政策に反映しやすくなる。このような利点が期待され、近年ヨーロッパを中心に広がっているのが、無作為抽出などによって選ばれた国民が環境対策について話し合う「気候市民会議」だ。
たとえば、スペインのバルセロナ市議会は2022年9月、カタルーニャ州の市としては初となる気候市民会議を開催した。抽選で選ばれた16~75歳の市民100人が1回目の会議に参加したのだ。
会議の参加者は10~11月、10人程度のグループに分かれて議論を進めていくという。それと同時に、専門家から気候危機に関するレクチャーも受け、議論に必要な知識を身に付ける。12月を目途に、市への提言をまとめることが目標だ。提言は、バルセロナ市のウェブサイト上で公開されるという。
これは市の取り組み事例だが、国が気候市民会議を開催することも多い。たとえば、2019年から2020年にかけてフランスとイギリスで開催された市民会議は、大きな注目を集めた。フランスでは、その後市民からの提言をベースとした法律が制定されたというから驚きだ。
その後、両国の試みが他の国々に波及し、デンマークや、スコットランド、スペインなどでも、国単位の気候市民会議が開催された。日本では、札幌市が行った「気候市民会議さっぽろ2020」や、川崎市が行った「脱炭素かわさき市民会議」などが注目を集め、他の自治体でも実施が模索され始めている。
気候市民会議は、地球に生きる一人ひとりが、環境問題について熟考する良い機会になりそうだ。専門家が正確な情報を提供し、市民が対立する論点を把握したうえで、今後ますます多くの国や地域で実施されていくことが期待される。
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