社会課題解決へのきっかけを教育現場でも
日本でも多くの企業や起業家が、さまざまなアプローチでグローバルな社会課題の解決に乗り出しています。 Image: Aleksandar Pasarik for Pixels
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日本
10月24日に迎えた「世界開発情報の日」。開発に関する課題と、それを解決するために必要な国際協力への意識を高める目的で、1972年に制定されました。日本における国際協力の開始は、1954年にさかのぼります。同年10月6日、戦後最も早期に組織された開発途上国援助のための国際機関コロンボ・プランに日本政府は加盟し、政府開発援助(ODA)を始めました。これにちなみ、日本では10月6日が「国際協力の日」のです。
地球規模課題の解決に挑む「ソーシャルビジネス」
世界的にソーシャルビジネスが身近になる中、日本でも多くの企業や起業家が、さまざまなアプローチでグローバルな社会課題の解決に乗り出しています。ソーシャルビジネスの特徴は、社会的インパクトを生み出すことを目的としながら、事業収益をあげて経済的な持続可能性も担保すること。世界が直面している課題がますます広範で複雑化し、先行きが不透明な時代を迎えている今、日本でもソーシャルビジネスは注目度が一層高まっているのです。
その一例が、グローバル企業を目指す味の素がガーナで進める乳幼児の栄養改善プロジェクト。自社のアミノ酸と大豆などの栄養素を混ぜて食べさせる離乳食製品「ココプラス」を開発し、栄養不足からくる乳幼児の発達遅延という同国の社会課題の解決に取り組んでいます。
SDGsへの意識が高いZ世代
自分の利益を最優先に追求する時代から、あらゆる物事のあり方や存在意義が問われるSDGs時代へと移行する中で、大きな変化がみられるのはビジネスだけでありません。
一般の生活者1,400人を対象に実施したSDGsに関する生活者調査によると、「SDGs」という言葉の認知度は86%に達しています。4年前から毎年行われているこの調査、2018年の初回調査から認知度は6倍にも上がりました。
特徴的なのは15歳〜24歳のZ世代で、10代は唯一、男女ともに過半数がSDGsについて「内容まで知っている」と回答。彼らは、その知識を学校教育で得ているのです。2011年の東日本大震災を筆頭に、相次ぐ自然災害を目の当たりにしながら育っていることや、気候変動、非正規雇用、ジェンダー不平等などの社会課題を日常的に見聞きしてきている背景も、Z世代が持つ社会課題への高い意識に繋がっていると言えるでしょう。日常生活の中でSDGs達成に貢献する行動や活動をしている人が相対的に多いのもこの世代です。
若手社会起業家による活動も盛んです。日本の伝統文化を繋げ、新しい価値を生み出しているアパレルブランド「AFRICL」は、西アフリカのベナンの伝統的な衣服作りの技術と日本の職人技術とのコラボレーションを通じたものづくりで、国際協力をしています。経済成長と国の発展で人々の暮らしが欧米化すると、課題となるのは伝統産業の縮小。「古くから受け継がれてきた豊かな文化をつなぐ、発展のあり方を模索していきたい」と、代表の沖田紘子氏は語ります。
国際協力の課題は若手の人材不足
日本の国際協力NGOが抱える長年の課題は、人材不足と人材育成です。セクターが小さく、若者の一般的な就職先の候補に入っていないこと、求められる能力が高い一方で、民間企業の平均年収と比べ100万円近く給与が低いこと、財政的に脆弱なために優秀な人材がいても雇用を継続できないことなどが、その主な理由です。持続可能な開発協力には、ソーシャルグッドとビジネスグッドを同時に叶えるアプローチが必要不可欠で、その要素が欠けると働く個人のウェルビーイングが犠牲になるリスクが高まってしまうでしょう。
教育現場できっかけづくりを
未来を担う若者たちが、世界が抱える課題を「遠い国の大変なできごと」としてではなく、自分ごととして向き合い、解決に向けた行動を起こす手助けをするために欠かせないのが、教育です。「人も国も内向きになってしまっている。世界を舞台に働こうという意思のある人が減っているのかもしれない」と、諸外国や他者への関心が失われている傾向にある日本への憂慮を語り続けた、元国連難民高等弁務官で、世界経済フォーラムとも協力関係にあった緒方貞子氏。社会課題を知って考える学びの機会と、関心をもった分野で学びを実践する機会の両方が教育現場で提供されることが求められています。若者たちのSDGsへの認知度が高まるこのモメンタムを確実に捉え、社会課題の解決には、政府、企業、国際機関やNGOなどマルチステークホルダーが「総働」し、未来に向かって一緒に責任を分かち合うことが不可欠であるという意識を育んで行くことが、より良い世界の構築を加速させる鍵となるでしょう。
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