エネルギー転換

フロート式ソーラーファームはネットゼロ達成の救世主になるか

フロート式ソーラーファームはアジアで多く見られます

フロート式ソーラーファームはアジアで多く見られます Image: Pexels/Tom Fisk

Victoria Masterson
Senior Writer, Forum Agenda
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  • NASAの人工衛星が、中国・徳州市にある世界最大級のフロート式ソーラーファームの画像を撮影しました
  • 水力発電貯水池のわずか10%をソーラーパネルで覆うだけで、全世界の化石燃料による発電量に相当する電力を生産することができます
  • 韓国、インド、ドイツなどで、フロート式ソーラープロジェクトが進行中です

フロート式ソーラーファームの建設が世界中で進められています。

米国の宇宙開発機関・NASAによると、特にアジアで多く造られているこのソーラーファーム。NASAは、世界最大級のフロート式ソーラーファームを宇宙から撮影した写真を公開しています。


中国山東省にある320メガワットの徳州丁荘フロート式ソーラーファームは、徳州市の脱炭素化を促進する一環で建設されました。人口約500万人の徳州市は、ソーラーバレーと呼ばれ、電力の約98%を太陽エネルギーで賄っていると言われています。

NASAの衛星画像システムで撮影された、中国・徳州市にある世界最大級のフロート式ソーラーファーム
NASAの衛星画像システムで撮影された、中国・徳州市にある世界最大級のフロート式ソーラーファーム Image: NASA

フロート式ソーラーとは

陸地には限りがあり、太陽光発電所の建設に使用するとなれば、高額な費用がかかる上、「農家や自然保護団体などとの間に緊張が生まれかねない」とNASAは指摘しています。

そこで、有望な解決策となるのがフロート式ソーラーファーム。正式には浮体式太陽光発電システム(floating photovoltaic systems、または、floatovoltaics)と呼ばれ、湖や貯水池、工業用水池、沿岸域などの水面にソーラーパネルを係留させた設備です。


NASAによると、フロート式ソーラーファームは、2050年までの脱炭素化社会の実現に向けて鍵となるテクノロジーと考えられています。ネイチャー誌の研究では、世界の水力発電貯水池の10%をフロート式ソーラーパネルで覆うことで、全世界の化石燃料による発電量に相当する4,000ギガワットの発電が可能と算出されています。

増大するフロート式ソーラー

フロート式ソーラープロジェクトは世界的に増えてきています。

例えば、韓国では、完成すれば世界最大と見込まれるフロート式太陽光発電所の開発が進行中。エネルギー業界のニュースサイト、パワーテクノロジーによると、韓国西海岸に広がるセマングム干潟で行われてるプロジェクトの発電能力は2.1ギガワットで、100万世帯分の電力消費量に相当します。

ポルトガルには、欧州最大のフロート式ソーラーパークがあります。欧州最大の人口池であるアルケヴァ貯水池に浮かぶこのファームには、サッカー場4面分の広さに1万2,000枚のソーラーパネルが設置され、近隣市街の電力需要の約3分の1を供給しています。

フロート式ソーラーに全力で取り組む、インドとシンガポール

インド、マディヤ・プラデーシュ州では、ナルマダ川にあるオムカレシュワル・ダムに、600メガワットのフロート式太陽光発電所を建設中。また、同州のインディラ・サーガル・ダムでも、1ギガワットのフロート式太陽光発電プロジェクトの計画が報じられています。太陽光発電に関するニュースサイト、ソーラークオーターによると、マディヤ・プラデーシュ州はすでに再生可能資源から5,500メガワットを発電しており、2030年までに2万メガワットの増産を目指しているとしています。

シンガポール、テンゲ貯水池にある巨大なフロート式ソーラーファームには、サッカー場45面分の広さに12万2,000枚のソーラーパネルが設置されています。シンガポールの5つの浄水場に電力を供給する同ファームは、2025年までに太陽光発電量を4倍にするという国の目標達成の一端を担っています。

米国とドイツにおけるフロート式ソーラープロジェクト

米国では現在、カリフォルニア州で米国最大のフロート式ソーラープロジェクトが進行しています。電力供給会社のソノマ・クリーンパワー社によると、ヒールズバーグのフロート式ソーラーファームは、1万1,600枚のソーラーパネルを備えた、発電能力4.8メガワットの設備です。これは、ヒールズバーグの電力需要の8%を賄える発電量です。

ドイツ最大のフロート式太陽光発電所は、ハルターン・アム・ゼー町の採石場の遊休湖に建設されており、年間で最大1,100トンの二酸化炭素排出量削減が見込まれています。ロシアのウクライナ侵攻以降、ドイツをはじめとする欧州各国は、ロシアの石油や天然ガスへの依存を低減するために、これまで以上に再生可能エネルギーを重視しています。

ソーラーパネルはちょっと変わった場所にも

ソーラーパネルの設置場所は、水上だけとは限りません。

道路、ゴルフ場、駐車場など珍しい場所にも設置されています。

例えば、オランダのアムステルダム近郊にある70メートルの「ソーラーロード」自転車道は、最初の半年で3,000キロワットを発電しました。これは、一人分の年間電力消費を十分賄える発電量です。

太陽光発電専門のサイト、PVマガジンは、日本では閉鎖された巨大なゴルフ場がソーラーファームに生まれ変わったと報じています。


米国では、ソーラーカーポートが普及し、イケアターゲットなどの小売店での設置が進められています。

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