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「分散型自律組織」(decentralized autonomous organizations (DAO) は未来の事業構造となるのか

DAOにより、デジタル空間とグローバル空間において新しい形の組織構造とコラボレーションが期待できます。

DAOにより、デジタル空間とグローバル空間において新しい形の組織構造とコラボレーションが期待できます。 Image: Mike Kononov/Unsplash

Geoffrey See
Chief Executive Officer and Co-Founder, Poko
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  • 「分散型自律組織」(decentralized autonomous organizations (DAO)が今日の企業のあり方にとってかわる可能性があります。
  • DAOは、コードとブロックチェーン上に築かれた新しいタイプの組織構造です。
  • 真にグローバルなデジタル革命を起こす手段となり、Web3の可能性を解き放つ力があります。

分散型自律組織(DAO)は、ブロックチェーン上でコードとして実行される新しいタイプの組織構造。通常、トークンを保有するメンバーによって所有、運営され、トークン保有者には組織の意思決定権および経済的な権利(または、そのいずれか)が付与されます。

2021年、DAOの参加者は世界全体で1万3,000人から170万人に増加し、一段と大きな関心を集めています。新たに生まれたWeb3スペースをどう運営すべきか、また、デジタル空間における起業手段としてDAOをどのように活用できるかという問いや、アカウンタビリティに関わる問題とともに、ますます高まるDAOの重要性は考慮するの価値があります。

DAOのメンバーは、世界中どこからでも資金をプールし、資金の配分方法に関するルールをコード化することができます。これは、ガバナンスがコードによって自動化され、分散されることを意味します(つまり、誰もルールを改ざんできません)。ガバナンスに用いられるスマートコントラクトテクノロジーはまだ初歩的なもので、その大部分は当面、理論上のものにとどまっています。

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DAOがデジタル関連の課題に挙がる理由

暗号資産の額は2019年の2,000億ドルから2021年半ばには2兆4,000億ドルと、10倍に増加しました。2022年初頭にはハウンベンチャーズ(Haun Ventures)のような数十億ドル規模のファンドが登場し、Web3スペースに対する投資家の関心がピークに達しました。Web3の投資家の間では、株式よりもトークンへの投資意欲が高まっています。小切手の規模が大きくなるにつれ、ガバナンスの重要性が一層高くなります。起業家たちはDAOを設立して、資金を追い求めています。また、投資家もDAO形式でファンドを設立しており、よく知られているものにOrange DAO(オレンジDAO)、VC3DAO、BessemerDAO(ベッセマーDAO)などがあります。

DAOにより、デジタル空間とグローバル空間において新しい形の組織構造とコラボレーションが期待できます。非代替性トークン (NFT) またはメタバースを通じて大きなデジタル価値が創出されることから、DAOがサイバースペースにおける価値創出のネイティブエンティティになる可能性があります。ブロックチェーンプロトコルの多くは、国境を越えたグローバルなコラボレーションとして構築されます。DAOは、ガバナンスのルールをコード化することで、トラストレスで分散されたコラボレーションを可能にするとされています。

なぜ、DAOに関心を持つべきなのか

DAOはWeb3固有の経済主体です。分散型金融(または「DeFi」)のプロトコルはほとんどの場合、何らかの形態のDAOに統治されています。例えばPoko(ポコ)では、世界中の数百のビルダーがDAOの設立を求めています。これには、マイクロファンドのマネージャー、発明家や、企業を設立して成長するWeb3のエコシステムを利用しようとしている起業家も含まれています。

起業家たちはDAOを利用してグローバルに資金調達を行い、コミュニティに所有権を譲渡しています。ベトナムのアクシーインフィニティ(Axie Infinity)はブロックチェーンゲームを立ち上げ、世界中のコミュニティを巻き込むことでその時価総額は数十億コインに達しました。ポコはまた、カザフスタンのアスタナ国際金融センター(Astana International Financial Center)と連携し、世界初の投資DAO法人設立フレームワークを立ち上げるイノベーションを進めています。なお、カザフスタン政府は、暗号資産に関する国家戦略を打ち出しています。

Image: State of Crypto 2022 Report

DAO導入上の重要な課題

DAOでは通常、従来の株式ではなく、トークンを発行します。多くのトークン保有者やトークン発行者は、現実にはトークンによって得られるガバナンスの権利や経済的リターンを期待しています。ところが、トークン保有者とDAOの間に実際的な法的関係がないことが多く、この場合、トークン保有者はリスクに晒されていることになります。

DAOの法的形態に関する懸念もあります。DAOは正式な企業構造を持たないことがほとんどで、責任保護に関する明示的な規定や、参加者のさまざまな役割に関する明確な区分がありません。その代わりに、ガバナンス権付きのトークンの保有者はDAOが取るべきアクションを提案し、そうしたアクションに投票することができる仕組みになっています。DAOの法的形態が明確でなければメンバーの責任の本質が何なのか不明瞭なままとなり、メンバーに大きなリスクをもたらすことも考えられるのです。

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また、DAOは、票決されたアクションを実行するために今なお仲介者を必要とします。DAOのトレジャリーが(暗号通貨のような)デジタルウォレット上のオンチェーン資産で構成されている場合、アクションを自動化スマートコントラクトにコード化する際に、執行代表者の必要性を完全になくすことも可能です。例えばDeFi DAOのトレジャリーの管理は、票決されたDAOのアクション実行に必要な手段を取るべき個人が行っていることがよくあります。

DAOメンバーの個人的責任も不明確で、可決された提案の指示をメンバーが無視した場合の責任については、特にあいまいです。このため、オンチェーン環境外でDAOが運営可能なスペースには制限が生じます。オフチェーン資産に対しどのようなブリッジを開発する必要があるかが、引き続き問題として残ります。

ほとんどの国において、DAOは、従来型の企業と同じ方法で税申告を行うことや、それらの企業に付随した税還付の恩恵を受けることができません。DAOが明確な法人として課税されるのか、パススルー式ビークルとして課税されるのかも、なお不明瞭です。このことは、DAOに投資する個人が多くの管轄区において、DAOのメンバーであることで直ちに納税義務を課される可能性があることを意味します。

適切な規制枠組みの構築

DAOに対する法的認知度は依然として低いものの、一部の管轄区はこのギャップを埋めるために法を導入することを選択しています。2021年、ワイオミング州は米国で初めて州としてDAOを法的に承認し、有限責任会社と同等の法的権利を付与しました。また、DAOはマーシャル諸島でも、同様の承認を得ています。この他の地域では、DAOは明確な法的枠組みがない状態で運営されていることがほとんどです。例えばデラウェア州では、資産を保有し、ファンドの受益者として活動することを目的とする従来型の有限責任会社が、デラウェアを拠点として多く設立されています。

この分野では、テクノロジーが規制を上回るペースで進化しています。現在とられているアプローチは、紙とペンの時代に構築された会社登記の枠組みにDAOを適合させようとしています。このため、DAOの規制枠組みを早急に構築することは必至です。そのためには、技術者、規制当局、起業家の間で官民パートナーシップを築く必要があります。デジタル起業家の未来がここにかかっているのです。

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