エネルギー転換

ウクライナ、自国のエネルギーシステムと原子力災害の回避への支援を世界に呼びかける

核のリスク?ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所。

核のリスク?ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所。 Image: REUTERS/Gleb Garanich

Robin Pomeroy
Podcast Editor, World Economic Forum
Julie Masiga
Communications Lead, Centre for Health and Healthcare, World Economic Forum
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ウクライナ

  • 世界経済フォーラムの特別セッションで、エネルギー大臣とエネルギー企業のトップが発言。
  • 彼らは、欧州に対し、電力供給の維持とロシアのエネルギー購入の停止を要請。
  • 日本では、福島原子力発電所事故の際のメルトダウン同様のリスクを危惧。
  • 国際エネルギー機関(IEA)の代表が、世界は1970年代初頭以来のエネルギーショックに直面していると発言。

世界経済フォーラムが開催した特別セッションで、ウクライナのエネルギーシステムを担当する政財界のリーダーたちが、欧米の企業や政府に対し、電力供給の維持、原子力発電所の安全確保、そして戦争を終わらせるため、ロシアへの制裁の強化を求めました。

エネルギー省のヤロスラフ・デムチェンコフ欧州統合担当副大臣は、3月11日に世界経済フォーラムが開催した「ウクライナのエネルギー危機に関する特別ラウンドテーブル」で、「ロシアは我々の生命、土地、インフラを破壊しているが、国内の団結と自由を破壊することは決してできない」と語りました。

デムチェンコフ氏は、世界中のエネルギー企業幹部や業界団体など数十人を前に、ロシアが侵攻して以来2週間以上戦争が続いている中、ウクライナは電力システムの稼働をほぼ維持できているとも述べました。

「この極めて厳しい状況下でも、ウクライナのエネルギーシステムは稼働し続け、人々や産業、軍にエネルギーを供給しています」。

エネルギー省欧州統合担当副大臣、ヤロスラフ・デムチェンコフ氏

同時に同氏は、西ヨーロッパをはじめとする世界各国からの支援を呼びかけ、ウクライナの原子力発電施設の攻撃を受ける、維持することのできない状況に追い込まれるなどした場合に生じる危険性を強調しました。

「ヨーロッパ全体に影響を及ぼす可能性のある最大の脅威は、核です」とした上で、デミチェンコフ氏は、次のように述べました。

「ロシアはすべてのレッドラインを越えて、核テロリストとして行動しているのです。 我々は皆、核戦争を恐れていますが、今まさに歴史上初めて大きな戦争が起きているのです。十数基の原子炉と数千トンの放射性使用済み燃料を持つ国で」。

さらに、「ロシアの行動により、ヨーロッパは日々、核災害の危険にさらされています。 今止めなければ、最悪な事態を招えることになるのです」と加えました。

Yaroslav Demchenkov addresses the energy roundtable
特別ラウンドテーブルについて語る、ヤロスラフ・デムチェンコフ欧州統合担当副大臣 Image: 世界経済フォーラム

核の脅威

日本エネルギー経済研究所の寺澤達也理事長は、原発の安全性リスクについて、11年前にメルトダウンを起こした福島原発と現在のウクライナの状況を比較しながら、次のように述べました。

「福島原発の事故は、津波という自然災害が原因となりました。 しかし、今回は人為的な原子力災害となる可能性があります。これは非常に残念なことであり、我々は懸念をしています」と語りました。

原発の停電や、緊急事態に対応する人員不足は、重大な危険をもたらすと語りました。

IEAは「大きなエネルギーショック」を警告

国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、戦争が世界のエネルギー供給に与える影響を強調し、次のように述べました。「世界的に、我々は当面、2つの大きな課題を抱えています。ひとつは、世界のエネルギー安全保障を維持すること、また同時に、ロシアのエネルギー収入を無効化しないまでも、いかにして最小化するかということです」。

「問題は、親愛なる同僚の皆さん、ロシアは今日、世界第一位の石油輸出国と世界第一位の天然ガス輸出国であり、これらによって、我々は、1970年代に見られたものと比較できるような、大きなエネルギーショックの時期に入るかもしれないのです」。

IEAは、欧州のロシア産天然ガスへの依存度を下げるための10項目からなる計画を発表しています。

電力会社DTEK社長、マキシム・ティムチェンコ氏は、ウクライナは石炭とガスの供給を戦争前の水準になんとか保っているとした上で、ウクライナの電力網を欧州と統合する計画により、ロシアが発電所や配電線を攻撃した場合、ウクライナは15%余分にエネルギーを確保できるようになると述べました。

そして、ロシアのエネルギー輸出に対する制裁を強化するよう求めました。

DTEK CEO Maxim Timchenko
DTEK社長、マキシム・ティムチェンコ氏 Image: 世界経済フォーラム/screengrab

「ロシアの石油、ガス、あらゆるロシア製品は有毒であるべきで、それらを買う行為は不道徳であるべきだ」とティムチェンコは言った。

デムチェンコフ大臣とウクライナのエネルギー企業DTEKとNaftogazの代表は、ロシア産の石油、ガス、LNGの即時禁輸からエネルギーインフラのスペアパーツのウクライナへの供給まで、世界からの支援要請リストを独自に発表しました。

デムチェンコフ氏は、ウクライナを支援することは、ヨーロッパとその他の国々にとって自国の利益のためにもなると述べました。

「ウクライナで始まった戦争は、プーチンにとって文明の衝突。その目標は、ウクライナではなく西側諸国です。戦場となっているウクライナで、欧州の未来は決まることになります。ヨーロッパの未来がかかっているのです」。

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