裕福な国の子どもたちが開発途上国の子どもたちに比べ、将来を楽観視しない理由とは
年齢が1歳上がるごとに「世界はより良い場所になっている」と答える割合が1%低くなることが調査で明らかになりました. Image: Unsplash/ Nikhita S
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教育・ジェンダー・仕事
- 若者が経済に対して抱く悲壮感は、低中所得国に比べて高所得国でより強く見られます。
- 新たな調査「変わりゆく子ども時代プロジェクト」では、今の子どもたちの暮らしについて尋ねました。
- 楽観的な考え方の若者が多いものの、その程度については地域によって違いがあります。
- 全体では、年齢が1歳上がるごとに「世界はより良い場所になっている」と答える人の割合が1%減少することが分かりました。
親世代よりも豊かな生活を送れると思いますか。
これは社会の経済的発展を測る指標の一つとして、以前から存在してきた問いです。世界中の若者は、自国の子どもたちは親世代よりも全体的に良い暮らしができるようになると考えていますが、豊かな国と貧しい国を比較するとその考えには、顕著な違いが見られます。
これは世界こどもの日を前に、ユニセフが複数の世代を対象に実施した国際的な調査結果のひとつ。「変わりゆく子ども時代プロジェクト (The Changing Childhood Project)」で発表されたものです。
調査対象となった21カ国すべての若者のうち半数強(54%)が「現代の子どもたちの方が良い暮らしができる」と答えたのに対し、高齢世代では45%となりました。さらに、57%の若者が「世界はより良い場所になっている」と回答したように、今回の調査から、若者の間で楽観的な見方が広がっていることがわかります。
ユニセフのグローバル調査・政策局長、ローレンス・シャンディ氏によると、気候変動や平等への懸念を背景に若者が将来への不安や、政府や政治家に対する不満を抱いていることを示す証拠は、調査ではほとんど見当たりませんでした。
世界各国で異なる、経済的楽観的主義
それでも高所得国では、子どもたちの暮らしは親世代よりも悪くなると思う若者(59%)は、良くなると回答した若者(31%)の2倍に上り、意見の違いが明らかになりました。
「過去20年間にG20の新興国と開発途上国で実質賃金が約3倍になった一方で、先進国ではほとんど変化していないという経済の実情が、若者の意見には反映されている」と調査は指摘しています。さらにこう加えています。「高所得国の高齢世代は、この点について若者よりもさらに悲観的に捉えている」。
一方、高中所得国では、自国の子どもたちは親世代よりも経済的に恵まれた生活を送るだろうと答えた若者は50%で、低中所得国では69%でした。
回答者の一人、バングラデシュのシャミム氏は次のように話しています。「私たちの両親は貧困の中で育ち、私たちが経験しなかったような課題に直面してきました。私の両親の時代には、仕事に就く機会がそれほど多くありませんでしたが、今では、衣料品業界やその他の分野で求人が増えています」。
国際労働機関(ILO)のデータによると、世界中で若者の潜在能力が十分に活用されておらず、労働力の活用不足は、全成人と比較すると若者層でより顕著になっています。
さらに、若者にとって雇用の質が依然として課題であることも示されています。
雇用機会
このレポートでは次のように指摘しています。「理論的には、雇用されている若者たちは、成功したキャリアと明るい未来へつながる道を開いていける貴重な就労経験と実践的なスキルを身につけている。しかし、実際には、多くの若者が生きるために質の低い仕事に従事している。これらの若者が従事する仕事は多くの場合、不安定な労働条件、不確実性、法的・社会的保護の欠如、トレーニングやキャリアアップの機会が限られていることなどが特徴となる」。
各国政府の中には独自の課題を認識し、若者を支援するために動いているところもあります。スペインのペドロ・サンチェス首相は、18歳から35歳までの成人が実家から独立できるよう、家賃補助を目的とした現金給付を計画しています。サンチェス首相は若者が「適正な賃貸住宅に入居できるようにしたい」と述べています。
世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2020」によると、積極的な対策を講じない限り、テクノロジーの到来やパンデミック(世界的大流行)の影響により、機会の不平等が悪化する可能性が高いとしています。
同レポートは「低賃金労働者、女性、若年労働者の雇用は、景気後退の最初の段階でより深刻な影響を受けた」と指摘しています。
ユニセフの報告書によると、年齢が上がるにつれて意識に変化が見られます。調査対象となった21カ国すべてにおいて、若者の57%が「世代を追うごとに世界はより良い場所になっている」と答えたのに対し、高齢世代では39%にとどまりました。
また、年齢が1歳上がるごとに「世界はより良い場所になっている」と答える割合が1%低くなることが調査で明らかになっています。
ほとんどすべての国で、「世代を追うごとに世界はより良い場所になっている」と答える若者の割合がわずかに高くなっている一方で、若者と高齢世代の間の考え方に大きな違いが見られます。特に日本、アルゼンチン、ウクライナ、ドイツ、スペイン、米国ではその差が顕著です。インド、バングラデシュ、モロッコ、ナイジェリアでは、若者と高齢世代が世界をほとんど同じように見ていることが、調査から明らかになりました。
「悪化しつつある数多くの問題がある」。イギリスの若者であるジョン氏は、気候変動や差別に対する意識の高まりを指摘する一方で、その双方に対処するための取り組みが始まっていることが、将来を楽観的に捉える理由になると述べています。
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