2021年の新興テクノロジートップ10

ここでご紹介する新たなテクノロジーは、今後3~5年の間に世界へ影響を与えるようになるでしょう。
Image: 世界経済フォーラム
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テックとイノベーション
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- 世界経済フォーラムが発表した「新興テクノロジートップ10レポート(Top 10 Emerging Technologies Report)」の10周年記念版では、今後3年から5年の間に世界に影響を与える可能性を秘めた新技術を紹介しています。
- 世界経済フォーラムとサイエンティフィック・アメリカンが招集した専門家たちは、農業、健康、宇宙に革命をもたらすとされる技術の進歩に注目しています。
- 自家受精型の作物、オンデマンドでの医薬品製造、呼気診断、3Dプリンター住宅などの技術がリストアップされています。
COP26では、各国がこの10年間で温室効果ガスの排出量を削減するため、新たな野心的な目標を約束しました。この目標を達成するためには、グリーンテクノロジーの開発と拡大が不可欠です。
「グリーン」アンモニアの製造や、自ら肥料を作ることのできる遺伝子組み換え作物の研究といった、農業をより持続可能なものにする2つのテクノロジーが、今年の新興テクノロジーとして選ばれています。
新興テクノロジートップ10
病気を診断する呼気センサーから低消費電力機器のワイヤレス充電に至るまで、今年のトップテクノロジーリストには、環境、健康、インフラ、コネクティビティに関連する革新的な技術進歩が多く見られます。数多くの候補の中から、現状を打破し、真の進歩をもたらす可能性を秘めた新たなテクノロジーを、専門家が厳選しました。
2021年の新興テクノロジートップ10をご紹介します。
脱炭素化の進展
大気中の二酸化炭素が過剰になると、大気が熱を保持するようになり地球温暖化を引き起こすと科学者が提唱してから一世紀が経ち、日常生活のあらゆる面で脱炭素化を推進するための世界的な取り組みが続いています。こうした中、各国政府と産業界は、二酸化炭素の排出量を削減するため、将来にとって重要な意味を持つ約束をしました。
これらの公約を実現するためには、今後3年から5年の間に、大規模なエネルギー貯蔵、低炭素や無炭素の化学物質源、再整備された鉄道輸送、炭素隔離、低炭素農業、ゼロエミッションの自動車や電源などの新技術を、かつてないほど革新的に産業レベルまで拡大することが求められます。同時に、合意に基づくコンプライアンスを、世界規模でモニタリングしていくことも必要になります。
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自ら肥料を作る農作物
現在、世界では作物の生産性を高めるために、年間1億1,000万トン以上の窒素肥料が使用されています。もし、大豆や豆などのマメ科植物のように、作物が自ら窒素を取り込み、アンモニアの形で自らに「固定」することができたらどうでしょうか。現在、研究者たちは、最先端の新興テクノロジーの一つとしてトウモロコシやその他の穀物などマメ科以外の作物でも自家受精させることを目指しています。
一つのアプローチとして、マメ科植物とバクテリア間の共生関係を模倣し、マメ科植物に存在する、自ら養分を作り蓄えることができる根粒を作る研究が進んでいます。その他、通常は穀類の根に生息し、根粒を形成しない土壌細菌から、大気中の窒素を植物に適したアンモニアに変換するのに重要な成分となるニトロゲナーゼを生成する研究も行われています。
息を吐くだけで病気を診断
近い将来、患者がただ息を吐くだけで病気の検査ができるようになるかもしれません。新しい呼気センサーは、人間の呼気に含まれる800以上の化合物の濃度をサンプリングすることで病気を診断することができます。例えば、呼気中のアセトン濃度が高いと糖尿病が疑われるように、このセンサーは、呼気中の化合物が金属酸化物半導体を通過する際の電気抵抗の変化を検出し、そこで示されたデータをアルゴリズムによって解析します。
この新しい技術は普及に向けて改良が必要ですが、2020年3月に中国の武漢で行われた研究では、センサーは新型コロナウイルスの検出において95%の精度、また患者の識別では100%という驚くべき高い感度を示しました。

オンデマンドで医薬品を作る
現在の医薬品は一般的に大規模なバッチで製造されており、世界各地で複数の工程を経てやっと完成に至ります。このプロセスには何百トンもの材料が使われ、完成までに数ヶ月かかることもあり、一貫性と信頼性のある供給には課題があります。しかし、マイクロ流体工学とオンデマンド医薬品製造の進歩により、一般的な医薬品は必要に応じてオンデマンドで製造することができるようになりました。その数は少ないながらも増えつつあります。
このプロセスは「連続フロー製造」とも呼ばれ、チューブを介して原料を小さな反応器に移すものです。この薬は、遠隔地や野戦病院において持ち運び可能な機械で製造することができ、個々の患者に合わせて投与することができます。しかし、この新技術に要する高いコストを削減することが課題となっています。
無線信号のエネルギー
IoTとは、何十億もの電子機器がインターネットに接続され、それぞれが持つ機能を果たしている状態を指します。日常生活に欠かせないデータを報告するIoTセンサーは、非常に消費電力の低いデバイスであることが多いものの、バッテリーの寿命が限られていることや、一度設置されても現地の環境では物理的な接続が不可能なことも多いため、充電を維持することが課題となっています。
5Gの登場により、十分な電力の無線信号が提供されるようになったため、IoTセンサー内の小さなアンテナがその無線信号からエネルギーを「収穫」できるようになりました。このような新技術の先駆けとして、ドライバーが料金所を通過する際に発する無線信号を利用した、自動化された「タグ」が以前から使用されています。

より長い「健康寿命」を目指して
世界保健機関(WHO)は、2015年から2050年にかけて、世界の60歳以上の人口割合は12%から22%に増加し、約2倍になると予測しています。高齢化は、がん、2型糖尿病、認知症、心臓病などの急性疾患および慢性疾患の双方に関連性があります。
研究者は、加齢における分子メカニズムを早期に解明しており、これにより私たちは、単に長生きするだけでなく、より健康的な生活を送ることができるようになるかもしれません。オミックス技術(細胞内のすべての遺伝子活動やすべてのタンパク質濃度を同時に数値化できる技術)とエピジェネティクスの知見を用いることで、研究者は病気の強い予測因子である生物学的マーカーを特定し、積極的な治療のターゲットを示すことができます。
アンモニアのグリーン化
世界の食糧需給を満たすためには、作物の生産においてアンモニアを原料とする肥料が必要です。しかも大量に。また、肥料用のアンモニアを合成するには、ハーバー・ボッシュ法と呼ばれるエネルギーを大量に消費する方法が取られ、膨大な量の水素を必要とします。現在、水素の多くは、電力を使って水分子を分解する電気分解や、炭化水素の高温分解によって製造されており、両方式ともエネルギーを必要とするため、膨大な量の温室効果ガスが発生しています。
再生可能なエネルギー源が普及しつつある現在、温室効果ガスを排出しない「グリーン」な水素が作られています。グリーン水素は、大気中の余分な炭素を排出しないだけでなく、原料として化石燃料を使用した場合に混入する汚染化学物質を含まないため、より効率的な触媒作用が得られ、純度の高いアンモニアの生成を促すのです。
バイオマーカーデバイスのワイヤレス化
注射が好きな人はいないでしょう。しかし、一般的な急性疾患や慢性疾患では、がん治療や糖尿病などの進行状況を把握するのに重要なバイオマーカーをモニターするために、大小様々な採血を頻繁に行う必要があります。こうした中、低消費電力の無線通信や、光と電子の両方の探針を用いた新しい化学検知技術の進歩により、重要な医療情報を継続的かつ非侵襲的にモニタリングすることが可能になっています。
100社以上の企業が、世界的に増加している糖尿病に焦点を当てながら、様々な用途の無線バイオマーカー・センシングデバイスを導入、または開発しています。ワイヤレス通信によって、離れた場所にいる医療従事者が必要に応じてデータを即座に入手することが可能になるのです。

現地の材料を使った3Dプリント住宅
大規模な3Dプリンターを使った住宅の建築は、米国やその他の先進国では、限定的ではあるもののすでに導入されています。一方で、インフラが整っていない開発途上国では材料の輸送が課題となりますが、3Dプリンターを使った最近の実証実験では、現地で調達した材料、粘土、砂、繊維を使用することで、建築現場への輸送が必要な材料のうち約95%を削減するという、飛躍的な進歩が見られました。
この新しい技術によって、住宅のニーズが切実でありながら、実行可能な輸送ネットワークのない遠隔地にも、頑丈なシェルターを提供できるようになります。その結果、これまで取り残されがちだった国々の状況を、大きく一変させるかもしれません。
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宇宙が地球をつなぐ
IoTに搭載されたセンサーは、天候、土壌の状態、水分量、作物の健康状態、社会活動など、数え切れないほどの貴重なデータを記録し、報告することができます。最近では、地球の低軌道上に無数の低コストの超小型衛星が設置され、これらのデータを世界中で収集し、中央施設にダウンロードして処理することができるようになりました。その結果、IoTは、インターネットインフラがなく、これまでアクセスできなかった開発途上地域に至るまで、前例のないレベルで国際理解を可能にしていくでしょう。
安全なデータリンクの低消費電力化や、低軌道衛星の寿命の短さなどの課題は残っていますが、この技術は着実に進歩しており、今後3年から5年で世界的に普及することが期待されています。

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