国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が9日、気候変動に関する報告書を公表した。これを読むと、ついつい諦めたくなる。66カ国の科学者234人がまとめたこの報告書は、人間の活動が温暖化を招いたことは「疑う余地がない」と断言した。

さらに人間がこれまでに排出した温室効果ガスにより、今後何十年にもわたって海面上昇、洪水、水不足、森林火災といった災害がはるかに頻発するようになるのは確実だと指摘した。しかし、この報告書は、金融業界に行動を迫る「挑戦状」でもある。

企業による気候変動対応に、弾みが付いているのは確かだ。投資家が参加できる環境関連のロビー団体は豊富にある。例えば、大規模な二酸化炭素(CO2)排出企業に一層の努力を迫る「クライメット・アクション 100プラス」には615余りの投資家が加わり、その資産総額は55兆ドルを超える。

特定の化石燃料を掘削する企業や電力会社への融資を拒否する銀行も増えてきた。イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー前総裁などから、より広範な「排出量ゼロ」目標を設けるよう迫る声も強まっている。

しかし、こうした動きの大半は現状では漸進的、あるいは小粒だ。それが今、変わり始めている。英保険大手・プルーデンシャルは複数のアジア諸国で、建設から15年以内の比較的新しい石炭火力発電所を購入して閉鎖する計画を策定した。こうした発電所は、放っておけば30年かそれ以上稼働を続ける。

アジア開発銀行が現在、音頭を取っているこのアイデアは、民間投資家が資金の大半を、公的機関がリスクの大半を、それぞれ担う仕組みだ。

もっと小規模な仕組みとしては、カーニー氏が幹部を務めるブルックフィールド・アセット・マネジメントとプライベートエクイティ企業のTPGが今年7月発表したような、いわゆる「移行期投資ファンド」がある。

目指すべき目標は、排出量を可能な限り早く削減する方法を見つけることだけではなくなった。そうした取り組みも不可欠だが、同時に変動する気候に適応していく必要もある。

例えば、失われた森林やマングローブを補充する、いわゆる「自然を基盤とした解決策」は、CO2の吸収と高温や洪水、干ばつからの保護につながる。

ただ、国連が今年公表した別の報告書によると、この仕組みには2050年までに約8兆ドルの資金が必要になる。現在の投資額の4倍だ。しかも、現在は政府部門が資金の86%を賄っている。

こうした広範な解決策への資金提供方法を考案することこそは、地球の危機克服のために、金融関係者らが発揮できる性質の創造性にほかならない。

<背景となるニュース>

  • 国連のIPCCは9日公表した報告書で、産業革命前と比べた世界の平均気温の上昇幅が今後20年以内に1.5度を超える可能性が非常に高いと指摘。数十年にわたる異常気象を招くレベルの温室効果ガス排出の原因が、人間の活動にあることは「疑う余地がない」とした。
  • 報告書は、平均気温が1.5度上がると、100年に2度起きるような熱波が約6年に1度襲うようになる可能性があると説明。また、10年に1度起きるような豪雨の確率が1.3倍高まっており、雨量が1900年までの50年間に比べて6.7%増えたとしている。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。