東南アジアで新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかわず、生産拠点を置く日本企業のサプライチェーン(供給網)に重大な懸念が生じつつある。長期化した場合、自動車だけでなく半導体や機械など幅広い業種の生産下押しになりかねない。日本の景気回復が輸出頼みとなる中、大きな打撃になるリスクが急浮上している。

ある政府関係者によると、感染状況が悪化しているインドネシアでは、日本企業の社員と家族が約2万人の規模で入国していたが、約1万5,000人は「退避措置」によって日本に帰国した。日本企業の現地工場の中には、感染したインドネシア人の従業員の休業者が急増し、操業を止めているところが続出しているという。

コロナ禍による経済への影響は、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどにも広がっている。世界保健機関(WHO)によると、7月10日から16日の1週間平均での1日あたり感染者数はインドネシアが4万6,413人、タイが9,200人、マレーシアが1万303人、フィリピンが5,013人、ベトナムが2,291人となっている。

スズキとホンダは21日、8月に国内四輪車工場の一部で非稼働日を設けることを明らかにした。ホンダは半導体不足に加え、インドネシアやマレーシアでコロナ感染が再拡大し、部品調達が停滞することを理由に挙げている。

2021年1〜6月期の日本の貿易統計によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)から日本への輸入額は約5兆9,000億円。輸入全体の15.2%を占めており、中国に次いで2番目の規模となっている。

製品別では、乗用車やバス・トラック、自動車部品の比重が高いが、半導体等電子部品や一般機械、絶縁電線・ケーブル、化学製品など幅広い。

政府内では、世界的な半導体不足による自動車減産と在庫の減少は「前哨戦」の可能性があり、さらに広い範囲で各種の部品やその他の製品不足が本格化し、サプライチェーンの機能低下が深刻化するリスクがあると警戒する声が出ている。

ワクチン接種が急速に進み、7月21日に政府が公表した回数は7,397万回を超えた。旅行や飲食など対面型サービスの急速な回復が期待されたが、東京都に8月22日まで緊急事態宣言が発令され、ペントアップ需要の盛り上がりは先送りされた。日本経済を失速させないパワーは、輸出系企業の業績拡大に頼る「一本足打法」的な構図になっている。

そこに東南アジア発の供給懸念が浮上すると、日本経済のエンジンが一時的に「停止」することになりかねない。東南アジアでのコロナ感染拡大がどこでピークアウトするのか、生産への影響がどの時点で軽減されるのかを注意深く見ていく必要が出てきた。

東京市場がこの点についてほとんど材料視していないのは、大きなリスクであると懸念している。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。