化石燃料とクリーンエネルギーの対決物語は新たな章に入り、かつての敵が味方同士になるかもしれない。原油価格が一時、1バレル=75ドルを超えたことで、米エクソンモービルや米シェブロンなどの石油大手は1年半に及ぶ厳しい局面を脱し、ようやく果実を刈り取ろうとしている。

他方で石油価格の上昇は、消費者が燃料の使い方とその種類について考え直すきっかけにもなり、長期的にはクリーンエネルギーへの移行を後押しするだろう。

コロナ禍で石油需要が落ち込んだため、石油大手は投資を控えて手元資金を蓄えてきた。調査機関のライスタッド・エナジーによると、新規石油・天然ガスプロジェクト向けの掘削投資は過去2年間で2,850億ドルも減少。

その後、人々の移動と経済活動が復活するにつれ、北海ブレントの価格は昨年から約75%上昇した。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟主要産油国でつくる「OPECプラス」の協議が合意に至らず、歴史的な大幅減産の巻き戻しにきちんと道筋をつける作業が後ずれしたことで、価格はさらに跳ね上がる可能性がある。

最も恩恵を受けるのは、掘削に携わる企業だ。ライスタッドの推計では、油価の上昇と本格的な生産再開により、上場している米石油企業のフリー・キャッシュフローは、今年600億ドル近くに達する見通しだ。

投資家や取締役会、裁判所からクリーンエネルギーへの移行を迫られているエリクソンや英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルなどの石油大手は、風力や太陽エネルギーなどに投資できる軍資金が増えるだろう。油価が上がったことで、シェルが米国で売却しようとしているような、不要になった石油資産もこれまでより高く売れそうだ。

もっとも石油大手は同じくらいの確率で、転がり込んだ資金を単に株主に還元したり、新たな化石燃料プロジェクトを始めたりしないとも限らない。ここで重要になるのが、油価上昇を受けて消費者が反乱を起こす可能性だ。

米エネルギー省は最近の報告書で、プラグイン型ハイブリッド車の維持費が1マイル当たり0.06ドルと、内燃エンジン車の同0.10ドルを下回っていると指摘した。油価が上がればこの構図に拍車が掛かるだろう。

世界で最も石油需要の伸びが大きい国々が集中するアジアでは、すでに他地域に比べて自動車の運転コストが高くなっている。モルガン・スタンレーによると、シンガポールでは低硫黄軽油の価格が自国通貨建てで2012〜14年並みに近い水準まで上昇している。

中国やインドなどの主要石油輸入国は、早くも油価の上昇にいら立ちを見せている。インドは今年3月、国営製油業者に対し、石油の調達先を中東以外に急いで広げるよう求めた。北海ブレントの上昇に弾みがつき、1バレル=100ドルに向かうようなら、こうした国々は「ゼロ炭素エネルギー」を増やすための公的投資も加速させるだろう。

皮肉なことに、石油価格の上昇はクリーンエネルギーの追い風になりそうだ。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。