海に及ぶ気候変動の影響:私たちに何ができるのか
海洋は巨大なカーボンシンク。気候変動の最も深刻な影響から私たちを守っています。 Image: REUTERS/Bazuki Muhammad
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- 海は巨大なカーボンシンク(炭素吸収源)で、気候変動の最も深刻な影響から私たちを守っています。
- しかし、気温の上昇が氷河を溶かし、海の温暖化はサンゴの白化を引き起こしています。
- サンゴ礁再生などの活動はすでに始まっており、研究の結果、気温の上昇に強いサンゴも見つかっています。
- 2030年までに海洋の30%を海洋保護区に指定することを求める声が高まっています。
海と気候は、切り離せないほど密接な関係にあります。地球温暖化による気温の上昇が極地の氷を解かし、氷河が溶解して海面の上昇を招いています。
海洋はまた、気候変動の最も深刻な影響から私たちを守る重要な役割も果たしています。科学者の指摘では、過去50年間に起きた温暖化全体の90%を海が吸収したそうです。
海水面が上昇
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、2100年までに海面は現在よりも0.26メートルから0.77メートル高くなると言われています。2100年までに海面が上昇し、低地の沿岸地域に暮らす2億人が脅威にさらされると推定されています。
研究者は、海面の上昇で世界の砂浜の半分近くが消滅する可能性があると指摘。海面が0.5メートル高くなることで、2050年までに570を超える都市に影響が及ぶと予測されています。
海の温暖化
IPCCは、たとえ地球の気温上昇を1.5℃に抑えられたとしても、今世紀末までに海水温は少なくとも2℃は高くなるとの試算も出しています。
海水温の上昇は、「サンゴの白化」の原因になっています。水温が高すぎると、サンゴは組織内に生息する藻を放出して白くなります。科学者によると、サンゴは白化現象から回復はできるものの、永久的に弱体化してしまいます。
変化する水
一方、世界の極地氷床から溶け出した淡水が海洋の化学組成を変え、一部の種の生存を困難にしています。バルト海に関する調査は、塩分濃度の低下が動物プランクトンの生存を脅かす可能性があると警告。動物プランクトンは、海洋の食物連鎖の基底にあるごく小さな生物です。
淡水は海流も変化させています。この海流の変化が、流路をなくしたり、流れを変えたりすれば、海洋の動植物が生存不可能な酸欠状態の「デッドゾーン」を生むおそれがあります。
海は、私たちにとって最大のカーボンシンク。産業革命以降、人間の活動によって排出される二酸化炭素のおよそ3分の1を、海が吸収しています。
これだけの量の二酸化炭素が海水に溶け込むことで海が酸性化し、多くの海洋生物に影響を与えます。特に、二枚貝、イガイ、海貝は、酸性化した海水では育つことができません。
議論を呼ぶサンゴ研究
自然保護団体とコミュニティグループが、サンゴ礁再生のために行動を起こしています。ハリケーンや汚染が原因でサンゴの85%を失ったジャマイカでは、「サンゴガーデナー」と呼ばれる人々が若いサンゴを育てています。
望みはオーストラリアにもあります。グレートバリアリーフでは、科学者が開発した「サンゴの体外受精」と呼ばれるプロセスを開発。サンゴの精子と卵子を採取し、新しい若いサンゴを育て、これを白化した地帯に移植。科学者たちは、良い結果が期待できると見込んでいます。
一方、紅海のサンゴは白化しないことがわかっています。これは、紅海のサンゴに高温耐性があることを示しています。科学者がアカバ湾のサンゴのサンプルを用いて遺伝子解析を行ったところ、サンゴ、そしてサンゴと共生する藻およびバクテリアは、通常の気温よりも平均で5℃も高い環境にも耐えられることがわかりました。つまり、科学者が高温のストレスに耐えられる「スーパーサンゴ」を明らかにしたということです。
持続可能性に向けて
「地球温暖化の速度を遅らせようとするなら、海洋による炭素隔離が不可欠です」。国際自然保護連合(IUCN)はこのように述べ、2030年までに海洋の30%を海洋保護区(MPA)に指定するよう求めています。
IUCNは、漁業と観光業を持続可能にする必要があることと、海洋環境が損なわれないように沿岸開発を管理する必要があることを指摘。さらに、海洋へのダメージが明らかになるにつれ、新たな対策を講じるための研究を継続する必要があるとしています。
再生する力
世界経済フォーラムが招集した「フレンズ・オブ・オーシャン・アクション」は、ビジネス、市民社会、国際機関、科学技術のグローバルリーダー65名で構成されるグループで、気候変動が海にもたらすダメージの早期解決に取り組んでいます。
「私たちの知識、力、技術で海を回復させられるように、道を切り開いていきます」と、同アクションのミッションステートメントは述べています。「海は驚くべき再生能力を持っています。ただし、私たちがそのチャンスを生かすことができれば」。
5月25日(火)~26日(水)に開催される、世界経済フォーラムの「バーチャル・オーシャン会合」では、海に関わるグローバルな行動課題について、実践的な対話を促すことを目指しています。
また、世界経済フォーラムのイノベーション・クラウドソーシング・プラットフォーム「UpLink」では、環境分野の起業家を呼び集め、ゼロカーボン輸送からサンゴ礁の再生に至るまで、海を守り抜くためのイノベーションを共有しています。
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