中国は、母親たちと同じぐらい労働者を幸せにすることが将来のためになるだろう。11日に発表された10年に一度の国勢調査結果では、総人口が14億人とほとんど増加しておらず、労働力人口減少が経済に打撃を与えてしまうとの不安が一層強まっている。中国政府は今まで出生率を政策目標としていたが、これからは労働生産性の向上と労働者向けの福祉を充実する必要がある。

予定よりずっと発表が遅れた今回の国勢調査は、懸念されたほど警戒を要する内容ではなかった。英紙フィナンシャル・タイムズが総人口は減少したと事前に報じたものの、実際には2020年までの10年で5.4%増加した。もっとも年平均の伸びにすればたった0.53%にすぎない。

さらに1人の女性が産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1.3と、同じく高齢化が進む日本などと同水準だった。ただ他の高齢化地域との違いは、中国がまだ中所得国で、1人当たり国内総生産(GDP)は約1万ドル(約108万円)と日本の4分の1にとどまっている点だ。

この差を埋める作業は、総人口のピークになると多くの当局者がみている2025年以降、今よりはるかに難しくなる。習近平国家主席が実現したいのは、消費主導の経済成長だ。しかし少なくなる一方の働く成人が、20年時点で人口の18.7%を占め、これからどんどん増えていく、仕事を引退した人を支え続けなければならない状況は、消費を冷え込ませるだろう。

政府はその対策として各家庭がより多くの子どもを持つよう促し、賛否が分かれる「一人っ子政策」を徐々に緩和しているとはいえ、人口減少に歯止めがかかるか、あるいは増加に転じる未来はほとんど見えてこない。むしろ特に都市部で暮らすより若い世代を対象に、生産性を引き上げて各種の福祉を拡充する方が、将来の経済成長にとって大事になる。最近の国際通貨基金(IMF)の報告によると、中国の労働者1人当たりの財の生産は米国やドイツなどの3分の1程度で、サービスに至っては17%しかない。

生産性向上には、官民双方の劇的な改革が求められる。その1つの方策は、労働者の保護強化だ。地方政府は最近になって、先行きに希望を失った若者が結婚や親になることに背を向け、かつては誰もがうらやんだハイテク業界で経験を積むことさえ嫌っている事態にようやく関心を向け始めている。

同業界は週休わずか1日で、朝9時から夜9時まで働き続ける過酷な職場として有名になってしまった。最近では宅配アプリ、美団で北京市の当局者が配達員になりすまして秘密裏に調査を行っていたことが明らかになり、単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の扱いについて監視の必要が大いにあることが示された。「生産性のわな」を避ける上で、もっとできることはあるはずだ。

<背景となるニュース>

中国国家統計局が11日発表した2020年実施の国勢調査結果によると、本土の総人口は過去10年で年平均0.53%増加し、14億1,000万人になった。伸び率は1970年代終盤以降で最低。2010年までの10年間の伸び率は0.57%だった。中国は16年、総人口を20年までに約14億2,000万人にすることを目標にしていた。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。