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中国が貢献する日本のK字回復、米欧勢も注目し株高に

2月19日、業種によって明暗が分かれる現在の日本経済の姿は「K字回復」と呼ぶことができる。都内で2日撮影

業種によって明暗が分かれる現在の日本経済の姿は「K字回復」と呼ぶことができる。 Image: 2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon

Kazuhiko Tamaki
Columnist, Reuters

業種によって明暗が分かれる現在の日本経済の姿は「K字回復」と呼ぶことができる。L字に転落しなかったのは、先行して景気拡大が続く中国経済からの恩恵を製造業が享受したからだ。その日本経済のメリットを認識した米欧系の投資家が足元で日本株を買い上げ、日経平均はいったん3万円台を回復した。日米欧の超金融緩和政策はしばらく継続するとみられ、K字回復の下での株高基調も当面は維持されそうだ。

リスクは、米中対立の再燃とその先にある地政学的リスクだろう。さらに日本国内での新型コロナウイルスの感染収束がおぼつかず、接触型ビジネスにおける経営破綻と失業者の急増というリスクシナリオもある。K字回復と株高の行く手には黒い雲の影も見え隠れする。

好調な輸出産業

世界経済を見渡すと、コロナ禍でいったん落ち込んだ景気は、製造業が先行して回復。接触規制の影響を強く受けるサービス関連の業績が底ばう展開が共通した現象となっている。その中でも、ワクチン接種率が主要7カ国(G7)の中で最も低い日本は、サービス関連産業に上向きの兆しがなかなか見えてこない。

対照的に自動車や半導体、機械など輸出系の製造業を中心に足元の業績は急回復。日本経済は「K字回復」と呼ばれる明暗がはっきりした状況となった。

前週までに大半が終了した3月期決算企業の2020年10〜12月決算でも、その傾向がはっきり出た。SMBC日興証券のまとめによると、営業利益予想を上方修正した企業と下方修正した企業は、製造業が302社対35社となった。一方、非製造業は119社対45社となり、下方修正企業の比率が高くなっている。

中国の成長と日本経済

好調な製造業を支えているのは、世界の中でいち早くコロナ感染の混乱から立ち直った中国向けに輸出する製造業と言える。1月貿易統計によると、対中輸出は前年比37.5%増の1兆2326億円と大きく伸び、金額ベースで対米輸出を約2000億円上回った。

中国は2020年10〜12月期の国内総生産(GDP)が実質で前年比6.5%増。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、21年も8.2%と大きく伸びる。1月の自動車販売も前年比30%増の250万台と好調を維持した。

日本の輸出企業は、この好調な中国経済の成長の「果実」を得て、好業績に結び付けている。

日本の利点に気づいた欧米勢

この現象に先に気づいたのは、国内の投資家ではなく、ヘッジファンドなどに代表される米欧の投資家のようだ。財務省の対内対外証券投資によると、1月31日から2月13日の2週間だけで海外勢が日本株を7933億円買い越している。

1月10日から30日までの3週間は1997億円の買い越しにとどまっており、日経平均が3万円台に到達する直近の上昇では、海外勢の買いが大きな駆動力になっていたことがうかがえる。

この海外勢の動向の背後には、日米欧の中銀による超金融緩和の長期化観測がある。流動性の大きなうねりの一部が日本株に流入し、別の流れがビットコインなどの暗号資産に向かったと思われる。

先行する中国経済とその恩恵を受ける日本の輸出産業、長期化する金融緩和という構図は、少なくとも3カ月から6カ月は続くのではないか。とすれば、K字回復の下での日本株上昇の基調もしばらく継続すると予想する。

米中対立がリスク

しかし、どんな好状況にもリスクは存在する。一般的には、米国でのインフレ懸念の強まりによる米長期金利の上昇加速が世界的株高に水を差すと言われている。ここでは、あえてそれ以外のリスク要因を指摘したい。それはバイデン米政権による厳しめの対中政策の表明と反発する中国政府の対応による摩擦激化の展開だ。

イエレン米財務長官は、対中関税を当面維持すると表明。対話の模索も選択肢だったはずの中国は、失望した可能性がある。この先、ウイグルでの人権問題を米国が追及することになれば、米中対立が一気に表面化することも予想される。

さらに台湾をめぐる軍事的な緊張にまで発展すれば、今、世界が享受している株高基調は、劇的に転換する危険性がある。

アキレス腱のサービス業

他方、国内でもコロナウイルスの感染が収束せず、飲食店への時短要請が長期化するような事態に陥れば、サービス関連の業績悪化が雇用面に波及。個人消費に大きな下押し圧力がかかり、好調だった製造業の足を引っ張るというリスクシナリオの可能性もゼロとは言いきれない。

政府は審議中の2021年度予算案が成立したら、アキレス腱とも言えるサービス関連産業のてこ入れや、雇用・所得で厳しい人たちを対象にした直接給付をメニューにした21年度第1次補正予算案の検討に入るべきだ。

30年ぶりの株高と実体経済のギャップを冷静に見つめ、迅速・果敢な政策対応が求められる。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。

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