新型コロナウイルス感染が拡大する中で、富裕層を中心にした預金が急増し、コロナの感染収束時における消費の急拡大を予想する声が市場の一部にある。他方、非正規雇用の人たちを中心に所得環境は厳しさを増しており、日本国内でも第2次世界大戦後に経験したことのない富裕・貧困の二極化に直面している。

富める階層をさらに富裕化させて、その波及効果を所得の低い人たちに波及させるのか、それとも直接的な給付を増やして政府主導で格差是正に臨むべきなのか。米国のように激しい議論になっていない日本でも、コロナ禍をきっかけにした社会・経済の変化によって、選択を迫られる時が到来したのではないか。

コロナ後に爆発しそうな富裕層のサービス消費

日銀が9日に発表した1月のマネーストックによると、M2は前年比9.4%増、M3は同7.8%増だった。また、8日発表の貸出・預金動向によると、銀行・信金の貸出平残は前年比6.1%増、都銀、地銀、第二地銀3業態計の預金平残は同9.8%増だった。

金融機関の預金には、企業や個人に対する各種給付金の交付のほかに、1人当たり10万円を配布した特別定額給付金を使わずにいる分や、旅行や飲食などができないために消費しない資金が預金に回っているが含まれている。

政府・日銀内では、富裕層の使い残したマネーが預金として積み上がり、M2やM3を押し上げる要因の1つになっているとの見方が広がっているようだ。

ここから導き出せることは、仮に新型コロナ用のワクチン接種が順調に進んだ場合、待機資金として積み上がっているマネーが、今年後半か来年初めにかけて旅行や飲食、その他の接触型サービスに流れ込み、「過熱感」すら伴って消費拡大へと突き進むシナリオだ。

政府が国会に提出した2021年度予算案で、「Go To」イベント再開に備えた予算措置が講じられているのも、指摘したような「待機マネー」の受け皿を作ることで、円滑に景気全般への波及が実現するように意図した政策と言えるだろう。

一部の金融機関が、今後のサービス関連の需要のV字回復と関連企業の業績回復を予想しているのも、あながち「ポジショントーク」とばかりは言えない側面を持っていると言える。

増加する女性の自殺

他方、コロナ禍の影の部分の暗さは、時の経過とともに深刻さを増している。厚生労働省によると、コロナ感染の影響で失業者は今月5日までに累計で8万6551人に達した。

また、総務省の労働力調査によると、非正規雇用者の人数は、2020年3月から直近データの11月まで連続して前年比マイナスを記録。11月の減少幅を見ると、男性の25万人に対し、女性は37万人となり、雇用の現場で女性の解雇が多くなっていることを示している。労働問題に詳しいアナリストの中には、接触型ビジネスの典型である宿泊・飲食などにおける非正規雇用者に占める女性の割合が多いことが影響しているとの見方もある。

警察庁によると、女性の自殺者が昨年6月から今年1月まで8カ月連続で前年を上回った。その背景にコロナ禍による失業の増加と関連があるとの専門家の指摘もある。政府は12日、坂本哲志地方創生担当相が増加する自殺など「孤独問題」担当を兼務すると決めた。政府が担当大臣を設置するほどに、雇用と所得の悪化した人たちの生活が脅かされている。

このような一部の階層の富裕化と失業による貧困化が、大規模にかつ同時並行的に発生するという社会現象は、戦後の日本で初めて経験することではないか。言い換えると、富裕化と貧困化の二極構造が、かつてないほどに進行中ということだ。

迫られる日本の選択

そこで、先に提起したコロナ終息後にサービス消費が爆発的に伸びて、日本経済を大きく押し上げることは可能か、という問題の現実性を考えたい。確かに旅行や外食などのサービス消費が急拡大し、一時的かつ局所的にブームのような活況が起きるかもしれない。

しかし、非正規雇用者が雇用者全体の40%を超える状況で、所得の上位30%のサービス消費が活発化しても、日本経済全体を推し上げる力は、それほど強くならないと予想する。どうなるのか今後の展開を注視し、そこで得られたデータを活用し、この先のマクロ政策に生かすべきだと思う。

そこで提案だが、コロナのような特異な原因で大きな経済的変動が生じた際に、「Go To」政策のような需要喚起策の優先順位を引き上げるのか、それとも生活困窮者などへの「衣食住」サポートや直接給付を大胆に実行するのか、という政策の大きな枠組みを選択する議論を始めるべきではないか。

2021年中は必ず衆院選も行われる。国民も覚悟して、大きな政策の枠組みについて思案し、選択する時だと指摘したい。また、国民が選択できるような政策メニューを政党は提示するべきだが、現状では与野党どちらからも提案らしきものは出てきていない。

米国とは違った形で進む富裕化と貧困化の問題を解決する道筋を何とか21年中に見いだして、この国の成長力を取り戻していくべきだ。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。