新型コロナウイルスのワクチン接種の進展具合が、日本経済の回復シナリオに大きく影響しそうだ。政府が公表しているワクチン接種に関する「ロードマップ」には不明な点が多いが、今年中に接種終了が困難な場合、対面サービスの比重が多い非製造業の業績が下振れし、米欧に比べて日本の成長率が大幅に下方屈折するリスクが高まるだろう。

国際通貨基金(IMF)は26日に公表した2021年の世界経済見通しで、日本経済の成長率を昨年10月時点の予測から0.8%ポイント上方修正して3.1%とした。これは大規模な財政支出の効果とワクチン接種によるコロナ感染の沈静化を織り込んだためだ。

IMFは同時にワクチン接種が進まない場合のリスクシナリオも提示しており、先進国では国内総生産(GDP)が平均で0.8%程度下押しされると想定している。日本単独の想定は示されていないが、仮にワクチン接種が順調に進まない場合、相応の下振れ圧力がかかるのは避けられないとみられる。

今のところ、政府は2月中下旬から国立病院の勤務者(最大2万人)を筆頭に、医療従事者(370万人)の接種を開始。4月以降に高齢者(65歳以上)の接種を始め、ワクチン接種券の送付を3月中旬から始めると説明している。

また、海外のワクチン製造メーカーと合計で3億1400万回分のワクチン供給で契約を締結したと公表している。

ただ、不明な点も依然としてある。主な事項として、1)ワクチン供給の具体的な日時と量が明確にされていない、2)ドライアイスの確保などワクチン運搬に不可欠な要素が完璧に用意されているのか情報開示されていない、3)接種者の個人情報を管理する情報システムを新たに構築すると説明したが、その完成時期や具体的な内容が公表されていない、4)希望者全員の接種が終了する時期は不明のまま──と完全実施に向けたハードルは高く、その上に数が多い。

仮定の話だが、今年12月になっても接種者の数が百万人単位の規模にとどまっていた場合、接種計画は「挫折した」とみなされるだろう。その時の日本経済をみると、中国と米国向け輸出の比重が高い企業の業績が好調が目立つ一方、非製造業は業績悪化が進み、日本経済全体の成長率は小幅プラスが精いっぱいで、マイナス成長に転落している可能性もあるだろ。

最も深刻なのは、サービス業で抱えていた雇用者から失業者が相次ぎ、失業率が急増し、その影響で個人消費全体がガクンと失速しているリスクが高いことだ。

ワクチン接種の「挫折」は日本経済回復の腰を折りかねないインパクトを持つが、マーケットだけでなく政策担当者の中にも、その波及力を軽視している向きが少なくない。ワクチン接種の成否が日本経済の将来を大きく左右するだろう。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。