政府が7日に緊急事態宣言を発令した。国内経済への影響は相応に発生し、今年1〜3月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長になる可能性も出てきた。政府が編成した2021年度予算案では、ポストコロナ前提で予備費は5兆円しかなく、新たな打撃に「窮屈」な対応を余儀なくされる。10万円の特別定額給付金の再交付は、予算の組み替えなしにはできない。

二番底危機

今回の緊急事態宣言は、飲食店への休業や営業時間短縮の要請が中心となり、百貨店や劇場、映画館などは対象から除外されるとみられている。また、大規模なイベントの開催も前回より規制のバーが上がり、中小規模のイベントは開催が可能になるとの見通しも出ている。

ただ、東京都などはすでに午後8時以降の外出自粛要請を決めており、飲食店だけでなく幅広いサービス業に大きな影響が出るのは必至だ。変動要素が多いため、今回の緊急事態宣言でどの程度の打撃が発生するのかはっきりしないが、複数の国内エコノミストは2兆円台から4兆円台のマイナスになると試算している。

個人消費全般への波及がかなり広がると仮定すると、緊急事態宣言発令のマイナス効果が、人の往来の先細りなどを経路として全国レベルに広がる可能性が大きいと予想するのが合理的ではないか。

昨年7〜9月期のGDPは前期比・年率プラス22.9%だったが、10〜12月期は同3〜4%に減速する可能性が高い。ここに今回の緊急事態宣言によるマイナス効果が加わると、2021年1〜3月期は同2〜3%のマイナス成長に陥る可能性がある。いわゆる「二番底危機」だ。

産業構造の転換が優先された予算案

ところが、2020年度第3次補正予算案と21年度予算案は、コロナの感染者が急増しない前提で、「ポストコロナ」の下でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めたり、脱炭素社会への転換を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)とも言える構造転換に力点を置いた政策が並んだ。

他方、失業者が急増したり、感染爆発のような事態が発生した場合の対応は、なおざりにされていたと言ってもいいだろう。実際、個人消費の勢いが1月以降、急速に衰えてきたことが確認されたとして、全国民1人に10万円の特別定額給付金を再交付しようとすると、諸経費込みで13兆円超の費用がかかる。だが、予備費は5兆円しか計上されておらず、今の予算案の構成のままでは再交付はできないことになる。

米国では9,000億ドルの追加コロナ対策法案が成立し、財政面からコロナの感染拡大に対応しようとしているのに、日本ではポストコロナ全体の予算費目が目立つだけで、コロナ拡大時に国民生活を直接サポートするような費目への予算計上が小さい。

組み替えの決断すべし

18日から始まる通常国会ではまず3次補正から審議が始まるが、政府はメンツをかなぐり捨てて大規模な追加の消費喚起策が実現できるような予算案に組み替えをするべきではないか。

21年度予算案を組み替える手法もあるが、それでは予算案が成立する3月末以降にしか支出ができず、機動的な財政出動が難しくなる。昨年も10万円の特別定額給付金の交付のため、20年度補正予算案の組み替えを決めた経緯がある。

かつては予算案の組み替えが「内閣総辞職に直結する」として拒否する「慣行」があったが、昨年の前例がすでに存在する。

菅義偉首相は、そこまで見据えて対応するべきではないか。緊急事態宣言を発令しても、コロナ患者数が急速に減少することが見えない以上、国民生活の底割れを防ぐ「セーフティネット」を張る必要があると考える。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。