• スタンフォード大学のデータプロジェクトによれば、米国の人種による教育格差は縮小しつつあります。
  • しかし、その改善のペースは遅々としていて、不安定で、米国の多くの地域で大きな教育格差依然として見られます。
  • 新型コロナウイルスの感染拡大は、教育における不平等をさらに拡大させる恐れがあります。

今日の米国における平均的な黒人およびヒスパニック系の学生たちの数学能力は、彼らの親世代の時代より約3年ほど進んでいます。

読解力に関しても約2~3年先を行っています。

これらの科目においては、白人学生のテストの成績も向上していいますが、黒人およびヒスパニック系学生ほどの上昇は見られませんでした。スタンフォード大学の研究によると、これは、すべての学生が良い教育を受けられているかどうかを確認する有用な方法である、人種間の教育格差が米国においては縮小しつつあることを意味しています。

この傾向は、人種間の教育格差の改善が進んでいることを示唆していますが、教育格差の全体像を捉えたものとはいえません。スタンフォード大学は、その改善のペースは遅く、不均一だとしています。

共通テスト

スタンフォード大学の教育機会モニタリングプロジェクトでは、9歳、13歳、17歳向けの共通テストの平均スコアを用いて、これらの教育格差を測定しています。

それが可能なのは、全米学力調査における数学と読解力の学力把握に、1970年代から同じテストが用いられているためです。

Researchers used standardized test scores going back to the 1970s to chart racial educational equality in the US.
研究者たちが、1970年代にまでさかのぼる歴史を持つ共通テストのスコアを活用して作成した、米国における人種別教育の平等に関するチャート
イメージ: Stanford University

上のグラフが示すように、1980年代以降、教育格差はすべての年齢グループで、数学と読解力の両方で大きく縮小しました。しかし、それはジェットコースターの起伏の一部のようなものでした。

1980年代終わりから1990年代にかけ、大幅な改善は停滞し、一部には格差が広がったところもありました。それ以来、格差は着実に縮小し、現在は1970年代よりも大幅に小さくなっています。

しかし、これらの格差は依然として「非常に大きい」ものです。実際に、白人と黒人の学生の共通テストの成績の差は、現在、約2年分の教育に相当します。そして、白人とヒスパニック系の学生の違いもほぼ同程度です。

学校の外にある要因

この格差は全米で見られます。人種間の教育格差は、ごく一部、拡大しているところもありますが、ほとんどの州で縮小しています。しかし、全米の学校区規模上位100のほぼすべてで、白人と黒人の学生の間には未だ大きな教育格差が存在します。

There’s a big racial achievement gap in almost all of the US’s 100 largest school districts.
米国の学校区規模上位100のほぼすべてで見られる、人種間の大きな教育格差
イメージ: Stanford University

では、なぜこのような格差が生まれるのでしょうか?スタンフォード大学は、このデータは、テストの平均点の低さの責任を学校に求めるという一般的な議論を裏付けるものではないとしています。これは、白人の学生は学校のレベルがより高いと推定される、より裕福な地域に住む傾向があるためです。

スタンフォード大学は、テストの平均点が実際に示しているのは教育機会の格差であり、それは子どもたちの幼少時の体験にまでさかのぼることができるとしています。これらの体験は、家庭、保育園や幼稚園、そして、地域社会で形成され、社会情緒的能力および学力を育みます。

スタンフォード大学は、高所得の家庭は子どもたちにこうした機会を与えられる可能性が高くなるため、家庭の社会経済的資源は教育成果と強く関連しているとしています。また、米国では一般的に、黒人およびヒスパニック系の子どもたちの両親は、白人の子どもたちの両親に比べて収入や学歴が低いことにも注目しています。

居住地、学校の隔離のパターン、州の教育的および社会的政策など、その他の要素も、教育格差の規模に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、別のスタンフォード大学の研究は、懲罰も教育格差へ影響をもたらす可能性があるとしています。この研究は、黒人と白人の学生の間の教育格差を、同様の悪事に対し白人よりも黒人のほうが厳しく罰せられるという事実と関連付けています。例えば、黒人のほうが白人より停学処分を受けることが多いなどです。

長期的影響

スタンフォード大学は、データを活用して人種と貧困をマッピングすることにより、すべての子どもたちの教育機会を改善していくために必要な洞察が得られるとしています。

そして、このような洞察の必要性はこれまで以上に増しています。マッキンゼーの調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大により強いられた休校措置も、既存の教育格差を悪化させた可能性があることが分かりました。同社のコンサルタントによれば、その結果として生じる学習機会の損失は、低所得の黒人およびヒスパニック系の学生のほうがより大きいと予測され、影響を受けた子どもたちの経済的な幸福に長期的な影響を与える可能性があるということです。

黒人およびヒスパニック系の家庭の自宅には、高速インターネットの環境が整っていないことも多く、それが遠隔学習を難しくしています。また、経済政策研究所によれば、低所得地域に住む学生は、きちんとした家庭教育を受けた経験が少ないということです。同研究所はパンデミック(世界的大流行)の初期段階で、新型コロナウイルスの感染拡大が教育格差を「激化」させると予測し、格差が学校教育の半年間に相当程度、拡大する可能性があることを示唆しました。

世界経済フォーラムは、今年10月に開催された「ジョブ・リセット・サミット」で、拡大する所得格差に関する課題とその対策について議論を行いました。

このサミットは、私たちが現在の危機から脱するにあたり、より包括的、公正かつ持続可能な組織、経済、社会を形成する方法を模索することを目的に開催されました。