COVID-19

欧米にコロナ第2波、日本に必要な「今春の轍」踏まない対応策

欧米では新型コロナウイルス感染の「第2波」が襲来したと受け止められている一方、感染者数が一進一退の日本では「Go To トラベル」の延長検討がささやかれ、欧米の動向は「対岸の火事」との受け止めだ。写真は23日、羽田空港で撮影

欧米では新型コロナウイルス感染の「第2波」が襲来したと受け止められている一方、感染者数が一進一退の日本では「Go To トラベル」の延長検討がささやかれ、欧米の動向は「対岸の火事」との受け止めだ。 Image: 2020年 ロイター/Issei Kato

Kazuhiko Tamaki
Columnist, Reuters
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欧州で新型コロナウイルスの感染者が急増し、各国では都市封鎖(ロックダウン)の検討が始まった。米国でも中西部を中心に感染拡大が続いており、欧米では「第2波」が襲来したと受け止められている。一方、感染者数が一進一退の日本では「Go To トラベル」の延長検討がささやかれ、欧米の動向は「対岸の火事」との受け止めだ。

だが、日本政府の入国管理におけるコロナ対策は不備が多いとの指摘も出ており、政府は早急に水際防御の強化などを打ち出すべきだ。空港でのPCR検査の体制強化など3つの項目を柱にした対応策を提案したい。「今春の轍」は、決して踏まないようにしてほしい。

週末に「紅葉めぐり」を楽しむ観光客が山間地帯に押し寄せる日本とは対照的に、欧州では暗い秋を迎えている。

26日だけで新たに23万1000人の感染が確認された欧州では、フランスが29日深夜から1カ月間のロックダウンを検討していると報道され、マクロン大統領が28日にテレビ演説する予定。ベルギーでもロックダウンが検討されているほか、ドイツではバーやレストランの営業停止、集会の制限が検討されている。

回復基調にあった欧州経済も、「第2波」の襲来をキャッチして以降、再び、下降する兆しを見せている。ドイツのIFO経済研究所が発表した10月の業況指数は新型コロナウイルスの感染再拡大への懸念で6カ月ぶりに悪化した。IFOのクレメンス・フュースト所長は「企業は向こう数カ月の見通しにかなり懐疑的になった。感染者数の増加を受け懸念が強まっている」と述べている。

米国でも過去7日間の新規感染者数が50万人に迫り、死者は5600人を超えた。27日のNY市場では、ダウ.DJIが前日比222ドル安となり、市場の不安心理を映す

ボラティリティー・インデックス(恐怖指数).VIXは9月初旬以来の水準に上昇した。

サービス消費起点に経済下降へ

経済的な影響としては、以下のことが予想される。ロックダウンを実施する欧州では、サービス消費を中心に個人消費が落ち込み、雇用にも影響が出て、さらに企業収益にも下押し圧力が発生する。

欧州経済の落ち込みは、主要な貿易相手国である中国経済にも、タイムラグを持って波及するだろう。回復中の中国の輸出が打撃を受けるのは必至だ。

米国でもようやく回復してきたサービス消費に水を差され、好調さを取り戻した自動車販売などが、もう一回、落ち込むリスクが高まってきた。日本の輸出回復を支えてきた対米自動車輸出が影響を受ければ、立ち直りかけてきた日本の生産・輸出にブレーキがかかるのは避けられない。

政府・日銀は、今後の経済動向に関して繰り返し「コロナの感染状況次第」と説明してきたが、欧米の情勢は不幸にして「マイナス」の方向に振れ出している。

そんな中で、日本国内の感染状況が「小康状態」であることを背景に「Go To トラベル」の効果が目に見えて出て、政府・与党はコロナ禍で失った経済的な打撃を回復する手がかりをようやくつかんだと思ったはずだ。政府によると、9月末までに「Go To トラベル」を利用した宿泊は2518万人・泊(1人・1泊が単位)。支出された税金は1099億円となった。

だが、欧米での感染者が日本に入国した場合、年末から年明けにかけて再び、感染者が急拡大するリスクが存在する。実際、今年2月から4月にかけての日本における感染者の急拡大は、欧州からの入国者を起点にした感染が大きな要因になっていたと感染症の専門家は分析している。

水際強化など3点セットが必要

もし、政府が現在の国内の感染状況を見て、欧米からのウイルス流入に対し、きちんとした手を打たなければ、今春の「二の舞」を演じかねない。特に政府が10月から日本に3カ月以上滞在する外国人の入国を原則として認めるという規制緩和を打ち出しているのに、水際での防御に「穴」があるのではないか、との指摘が出ている。

9月26日に行われた全国知事会の会合では、古田肇岐阜県知事が中部国際空港では、1日に実施できるPCR検査が200件に限られていると指摘した。

成田空港では、PCR検査から1〜3時間で結果が出る唾液採取による抗原検査に切り替えた。だが、入国者が急増した場合に空港内で入国者を待機させる場所の確保などに問題が残されているとの指摘も出ている。

そこで、全国の国際線が到着する全ての空港で、PCR検査や唾液を利用した抗原検査など「完璧なウイルス検査」の体制を早急に構築できるよう、これから編成が想定される2020年度第3次補正予算で十分な費用を確保することを求めたい。

また、現在は感染者数が減少して、確保しているベッド数が少なくなっている重症者用の対応では、未利用でも国が費用を出してベッド数を維持し、感染者数の急増に備える体制の整備が速やかに行われるべきである。また、コロナ対応で赤字に陥った病院を支援する仕組みも作り、今後、感染者が急増しても病院や地方自治体に負担がしわ寄せされない国費の支出が必要だ。その費用も3次補正で確保するべきだ。

3つ目は、日本でも不幸にして感染者が急増し、飲食店や各種の施設に営業停止を求める場合、休業終了後にビジネスが再開できるような十分な「休業補償」を支払う仕組みを作るべきだ。法令改正が必要なら、改正案を次期通常国会に提出できるよう準備を進めてほしい。

以上の3点を骨格にした「コロナ第2波対策」を政府は速やかにまとめてほしい。なぜなら、もし、政府の対応が甘く、第2波の日本襲来を許した場合、大幅な規制強化を求められ、今の欧州と同様にサービス消費を起点に経済が大打撃を受けてしまうからだ。

その場合、国内総生産(GDP)の落ち込みや失業者の急増、経営不振企業の増大による株価下落など広範囲にマイナス効果が広がり、その穴埋めには10兆円では到底足らない財政支出を強いられるからだ。

菅義偉首相にとって、欧米からの「第2波」襲来をいかに水際でとどめるかは、当面、最大の課題であると強調したい。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。

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