• 企業による解雇は、職を失う労働者と、残された同僚に壊滅的な影響を与えます。
  • AIを活用した「アウトスキリング」により、解雇された労働者は、次のキャリアのステップに向けて準備をすることができます。
  • ビジネスリーダーは、企業や従業員が不確実な未来に備えることができるよう、率先して支援を行う必要があります。

「混乱した」「どうしていいか分からない」「恥ずかしい」「絶望した」

解雇された労働者の口から出るのはこのような言葉で、多くの人が、人生で最も悲惨な経験のひとつだったと涙ながらに語ります。心理的な負担に加えて、解雇された労働者の83%は健康状態が悪化する可能性が高く、悲しいことに自殺する可能性も高くなります。

解雇の影響は、従業員が失業したことを知らされた後もずっと続きます。ハーバード・ビジネス・レビューの研究によると、解雇された労働者の収入は、解雇後20年経っても当時の同僚より20%も低く、さらには、失業の痛みから回復するのには、愛する人を失った時よりも時間がかかると、行動科学者は示唆しています

さらに、あまり語られることのない現実問題として、度重なる解雇が、会社に残っている労働者に与える影響があります。残った従業員の仕事の満足度は41%。職務遂行能力は20%低下し、自発的な離職率は31%上昇します。解雇は、士気、生産性、雇用定着率にマイナスの波及効果をもたらし、収益を大幅に下落させることもあります。

現在実施されている解雇は、非人道的に行われることが多くあります。また、ビジネスにおけるディスラプション(創造的破壊)と自動化が進むこの時代に、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が重なり、解雇はなくなるどころか、その頻度と範囲が拡大する可能性があると見られています。

サンライフ・ファイナンシャルのシニア・バイス・プレジデントで人材担当のエミリー・シュアー氏は、次のように述べています。「経営陣にとっての課題は、自動化、イノベーション、経費面での圧力のサイクルに関する考え方を変えることです。人の気持ちを考慮しない解雇を最初の防衛策として行うのではなく、積極的かつ意図的なリスキリング(再訓練)とアウトスキリング(離職をする者に対するスキル訓練)を行って、労働者が社内外を問わず、次の雇用機会にソフトランディングできるよう支援するというのはどうでしょうか?大打撃となる解職ではなく、支援を受けた移行であれば、企業、家族、そして地域社会にプラスの結果をもたらすでしょう」。

つまり、従業員のライフサイクルのあらゆる部分が、ビジネスリーダーによって再定義されつつある現代の世界で、解雇だけが30年前と同じように破壊的で非人道的なままであるという点が問題なのです。

解雇とは:人材イノベーションにおける最後の辺境

過去10年の間、企業は採用プロセスや従業員の福利厚生から、学習と能力開発に至るまで、未来の仕事へ適応力をつけるため、数多くの革新的な人材イニシアティブを導入してきました。しかし、あらゆる企業にとって現実に起こりうる解雇については、最も未来を重視する企業でさえ言及することはほとんどありません。

長い間、解雇について議論することはタブー視されてきました。カナダロイヤル銀行の元人事最高責任者(CHRO)であり、デロイト社の「新しい仕事のあり方」に関するエグゼクティブ・アドバイザーでもあるザビーン・ヒルジ氏は「ほとんどの経営者は、人材やスキルの課題とは異なり、解雇については個人的に経験したことがないため、おそらく共感性というものがパズルのピースとして欠落しているのではないだろうか」と話します。

このような共感性の欠落があったとしても、すべてのビジネスリーダーは、今後数年で解雇が増加する可能性があるという事実に対処し、適応していく必要があります。遅きに失したとはいえ、解雇とその影響について話し合い、従業員のライフサイクルの他のあらゆる要素と同様に、解雇を再考する作業を開始していく必要があります。

AIを活用したアウトスキリングで解雇を再考する

解雇について再考し、影響を受けた労働者がキャリアの次のステップに向けた準備をするための解決策は、皮肉なことに失業の原因と同じ要素、つまりAI(人工知能)によってもたらされる可能性があります。

例えば、仕事におけるディスラプション(創造的破壊)の影響を受けたすべての労働者が、パーソナライズされたAIを駆使することによって、次の雇用の機会へとソフトランディングできるように支援を受けられる環境がどのようなものになるか、想像してみてください。

1. あなたの「立ち位置」を確認:あなたの履歴書を解析し、スキルや興味の対象を理解します。

2. 「行き先」を推奨:需要予測や自動化予測などのリアルタイムの労働市場情報から、キャリアパスを推奨します。

3. 目的地に到達するための個人用の「ロードマップ」を作成:キャリアの成功に向けた支援として、具体的な学習プログラムとキャリア情報を特定します。

これは、FutureFit AIがキャリア移行のためのAI搭載GPSを通じて提供しているサービスです。FutureFit AIは、数百万もの履歴書や求人情報のデータポイントを取得し、学習機会やその他のサポートサービスのマーケットを構築し、解雇された労働者が成功するために必要なすべてのリソースを確保できるよう、人的・仮想的なサポートシステムを作成しました。

2011年、ノキアは、これまでのアプローチを刷新し、労働者が社内外で次の雇用機会を見つけられるように、複数の経路を提供する「ブリッジ」プログラムを導入しました。この革新的なプログラムによって、従業員一人当たりのコストが90%以上削減され、従業員の満足度は解雇された従業員の間でも85%に跳ね上がりました。

FutureFit AIは、ビジネスリーダーが従業員のライフサイクルのこの破壊的な側面に取り組む中、さらに多くのソリューションが導入されることを期待し、奨励しています。AIを活用したアウトスキリングは、移行する従業員をブランドアンバサダーに変え、人を大切にすると約束することで、将来の人材を引き寄せる機会を経営陣に提供します。

厳しい選択:積極的なリーダーシップか、それとも反動的な危機管理か

「メンタルヘルス」「#MeToo運動」「新型コロナウイルスの感染拡大」「BLM(ブラック・ライブス・マター)」

近年私たちが学んだことが一つあるとすれば、人間の苦しみや不正があるところでは、その危機はおそらくすでに収益に影響を与えており、遅かれ早かれすべての企業が積極的に行動してそれに対処するか、あるいは、反射的に遅れを取り戻そうとするかのいずれかになるということです。

ビジネスリーダーは、この現実を変えることができる有利な立場にあります。解雇に対する自社のアプローチを自問するだけで、会社を良い方向に変えていくアクションのドミノ効果を引き起こす可能性があります。

ウォールストリート・ジャーナルの一面に、大量解雇についての詳細が、その影響を受けた労働者の逸話と共に漏れなく掲載されるとしたら、現在のように次の解雇を行う会社はなくなるでしょう。そうであるなら、次の一面の見出しを待つ必要はありますか?