• 新しい報告書によると、長期ケアに従事する介護職員100人当たり5人は65歳以上であり、介護分野ではより多くの職員の定着と新規採用が急務です。
  • 一方、2050年には、経済協力開発機構(OECD)加盟国の80歳以上の高齢者は12億人になる見通しです。
  • 先進国の多くの国で高齢化が進む中、持続可能で効果的な長期ケアの提供は、ますます急務となるでしょう。

2050年には、OECD加盟37カ国で80歳以上の高齢者の数が、12億人に達する見通しです。これは、2016年の5,700万人から大幅な増加となります。

増加する高齢者層の長期ケア(LTC)のニーズに応える計画を策定することは、各国政府が直面する最大の課題のひとつとなっています。

現在、LTC従事者100人当たり5人が65歳以上。この分野でさらに多くの職員の定着と新規採用を図る真剣な取り組みがなされないかぎり、支援を必要とするすべての人を支える介護職員の数は不足することになります。

OECDの報告書「誰が介護を担うのか?高齢者を支える介護職員の採用と定着を促す」は、厳しい結論を提示しています。報告書の中でOECDは、この分野で働く人々と、彼らが介護する高齢者の双方を守るため、LTCについて再考する必要があると警告しています。

Recruitment of new staff into the sector has stalled in many OECD countries.
介護部門における職員の新規採用は、多くのOECD加盟国で失速
イメージ: OECD

パンデミック(世界的大流行)の最中における介護

世界中の介護施設が新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われる中、介護分野が直面する多くの課題が明らかになりました。

LTCを必要とする高齢者は、多くの場合免疫の機能不全や慢性疾患を抱えており、新型コロナウイルスに感染すると重篤な合併症を発症するリスクが一層高くなります。この報告書の試算では、新型コロナウイルス関連死の最大50%がLTC施設で起きています。

さらに、こうした状況を招いた安全対策の不備は、職員のトレーニングや労働条件、介護の質や安全性を優先させることに、より多くの投資が行われていれば防止できたものもあったことを報告書は付け加えています。

「新型コロナウイルス感染拡大から介護職員を守ることに芳しい実績がない現状は、介護分野で働くことが自身のためになるのかどうか、より多くの人に疑問を抱かせることになるだろう」と報告書で述べられています。

定着と新規採用

LTC労働の賃金が低水準で、キャリア開発の機会に乏しいことも明らかになっています。LTC従事者の平均賃金は、時給10ドル強であるのに対し、医療部門の同等の仕事に対する賃金は、時給16ドル近く。時間外労働の必要があること、期間契約による雇用の普及、地位の低い職といった認識も相まって、LTC分野におけるこのような条件が、職員を惹き付け、定着させるという点で課題に直面しています。

世界で最も多くの高齢者人口を抱える日本は、他の国よりも、LTCを重視することによるインセンティブが間違いなく大きいでしょう。日本におけるLTC労働人口は、2011年から2015年の間に20%増加しています。しかし、OECD加盟国のうち、2011年以降に介護分野の新規採用を拡大する戦略を策定した国は半数に過ぎないと報告されています。

Japan leads the way for ageing populations.
日本は高齢者の人口構成比が最も高い
イメージ: OECD

OECDによる報告書では、他の国では研修プログラムがより重視されているのに対し、ノルウェーと英国では、LTC分野の仕事の魅力を男性にも広げようとする試みが行われていることを取り上げています。米国、フランスの2カ国では、給与率の引き上げが行われました。

意外なことではありませんが、この報告書は、賃金の引き上げが新規採用と人材定着の改善につながると指摘しています。とはいえ、状況の改善を期待して単純に賃金を引き上げることには、注意が必要です。介護施設に職員が適切に配置され、かつ賃上げ可能な財源がないかぎり、賃金の引き上げが人員削減によって相殺されかねません。ひいては、これが職員に一段と圧力をかけることにもなります。

Who cares? Mostly middle-aged women.
介護の担い手の大部分は中年女性
イメージ: OECD

さらに、LTC分野におけるもうひとつの重要な目標として、より健全な労働環境の構築、職場における事故防止、職員を病気から守るための対策を取ることが挙げられます。

テクノロジーとバリュー・フォー・マネー

患者のモニタリングからデータの記録まで、介護分野ではテクノロジーが重要な役割を果たしています。OECDの報告書は、エストニア、ノルウェー、オランダにおける、アラームやセンサーなどの補助的技術の使用に注目をあてています。

OECD加盟国の中でも、高齢者介護により意欲的にテクノロジーを取り入れている実例があるのが、日本です。ロイターの2018年の記事によると、東京の介護施設「新とみ」には、約20種類のロボットがあります。人の形をしたロボットもあれば、小動物に似たデザインでパートナーのように行動するロボットもあります。

しかし、ロボットが必ずしも最適な行動をとるとはかぎりません。LTC全体の成果を改善するために、相補的なスキルを持つ人間のチームを寄せ集めることを好む国もあります。OECDの報告書では、「さまざまな分野のチームが、高齢者を支える介護計画の共同設計と共同決定を支援している」米国とポルトガルの事例を紹介しています。また、オーストラリアでは、非公式のLTCサービスを自ら提供している家族に対して、外部機関と連絡を保つためのツールやプラットフォームへのアクセスを可能にしています。

先進国の多くの国で人口の高齢化が進む中、持続可能で効果的なLTCの提供は、ますます急務となっています。この報告書は、介護を受ける人たちの自立を長期的に保つことを優先課題としている国はほとんどないと指摘します。しかし、より多くの人が長生きするようになれば、これが一般的なアプローチとならざるを得なくなるでしょう。