新型コロナウイルス感染拡大が浮き彫りにした、不平等に関する5つの事実
パンデミックは、社会に存在する不平等を浮き彫りにした Image: REUTERS/Yuriko Nakao
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COVID-19
- 新型コロナウイルスの感染拡大は、ヘルスケアからテクノロジーに至る分野において、不平等が存在するということ広く周知させる結果となりました。
- 不平等は人種から所得に至るまで、さまざまな面において感じられています。
- 少数派集団や障がい者は、必要不可欠なサービスの利用に関して複数の障壁に直面しています
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、社会経済における不平等がはっきりと浮き彫りになりました。
ヘルスケアや緑地へのアクセスから、仕事や教育に至るまで、コロナウイルスが、真の格差を生み出している社会の5つの分野についてご紹介します。
1. 緑地へのアクセス
緑地が私たちの精神と身体の健康に有益であるということは、複数の研究で明らかになっています。何百万人もの人々が様々な形でロックダウン措置による影響を受ける中、緑地へのアクセスが平等でないという問題が注目を集めています。
南アフリカで最近実施された調査によると、白人の居住区は、黒人の居住者が多い地域と比べて、公共の公園に約700m近く、木の被覆率も12%高いことが分かっています。
一方、ドイツで2017年に行われた研究では、所得、年齢、教育、世帯内の子どもの数に関連して、都市の緑地へのアクセスに不平等が存在することが明らかになりました。
さらに、2010年の調査によると、英国で最も貧しい国勢調査区の緑地面積は、平均すると、最も裕福な区の5分の1にすぎないことが判明したのです。
緑地と、緑地がもたらす健康への良い影響や根強い不平等についての詳細は、こちらをご覧ください。
2. ヘルスケアへのアクセスと健康成果
今回のパンデミックは、ヘルスケアへのアクセスと健康成果が集団によって異なっているという点を浮き彫りにしました。
医療サービスへのアクセスの不平等は、比較的医療制度が発達している国々おいても根強く残っていることが欧州の研究で明らかになっています。欧州委員会の2018年報告書(PDF)は「最低所得の五分位階級は、ヘルスケアへの効果的なアクセスという点で最も不利な立場にある集団の1つである」としています。
報告書は、性別、人種、在留資格に沿った問題を強調しており、特に困難な状況に置かれているのが女性と移民であると指摘しています。
重要なことは、社会経済的条件がいかに健康に影響を与えるかということが、パンデミックによって明らかになったということです。世界保健機関(WHO)の説明によると、「教育、雇用状況、所得水準、性別、人種などの社会的要因が、人の健康状態に著しい影響を与えるという十分な証拠がある」ということです。
例を挙げると、少数民族集団は新型コロナウイルス感染拡大の影響を過度に受けていることが英国における初期の調査で確認されています。米国でも同じようなパターンが見られました。
国家間に存在する不平等に加えて、このような一国内における格差があるのです。例えば、結核による死亡者数の95%は開発途上国で発生しており、世界の平均寿命は、長い国と短い国とで34年も差があります。
非伝染性疾患(NCD)による早死にの87%は、低・中所得国で発生しています。そして、これらの国の多くでは、このような病気にかかる費用が人々を貧困に追い込み、開発を阻害し、健康問題を悪化させているのです。
新型コロナウイルスのパンデミックと健康格差に関する詳細については、「疫学・公衆衛生ジャーナル」に掲載されたこちらのエッセイをお読みください。
3. デジタル・ディバイド
ロックダウンやソーシャルディスタンスの規制によって、何百万人もの労働者や学童が自宅待機となり、仕事や勉強を遠隔で行わざるを得なくなりました。
これによって、テクノロジーやインターネットへのアクセスに格差があることが浮き彫りになりました。
例えば、インドでは、インターネットにアクセスできない人々が人口の約50%(人数にすると6億人以上)に上ります。
アフリカ諸国の多くでは、この割合はもっと高くなります。これらの何百万人もの人々にとって、テレワークや遠隔教育はおとぎ話のようなものでしょう。インドの農村部の一部では、拡声器を使った授業が行われています。
また、同じ国の中でも大きな格差があります。例えば、米国では所得、年齢、人種による格差、さらに、都市部または農村部の違いにおける格差は根強く存在します。例えば、ピュー研究所によると、インターネットを使用していないと答える成人の割合は、都市部では9%であるのに対し、地方では15%となっています。一方、インターネットを使用していないと答える白人は8%ですが、黒人では15%です。
このような状況は、新型コロナウイルスの感染拡大によって悪化しています。パンデミックの最中に子供が「デジタル障壁」に直面するだろうと回答する親の割合が、高所得の親に比べて低所得の親の方が高かったのです。
マイクロソフトのデジタル・ディバイドに取り組むイニシアティブについては、こちらをご覧ください。
4. バーチャルな世界における雇用とは
大人の世界においても、国家間、また一国内においてデジタル・ディバイドが存在しています。データによると、在宅で仕事をする人の割合は、インターネット普及率と密接に関連していることが分かっています。
(注:以下の図表では農業従事者は含まれていない)
また、インターネットへのアクセスがよい国においても、自宅でのインターネット接続が不十分な場合、バーチャルなビデオ会議の新しい世界に対応するのが困難になります。
しかし、不平等な点はこれだけではありません。
オランダの調査によると、高学歴で高いスキルを有する労働者は、テレワークが可能な職業に就く可能性が高いとされています。
結果として、スキルの低い労働者ほど失業したり、労働時間が短縮されたりする可能性が高まります。
同様のパターンがドイツで行われた調査でも確認されており、高収入の人ほどテレワークをする機会が高いという結果が出ています。
スタンフォードの経済学者、ニコラス・ブルーム氏は、この傾向が「不平等の時限爆弾を生み出している」と考えています。
同氏は、大学との質疑応答で、在宅勤務の社会的影響に関する研究結果について説明しました。
私たちの調査結果では、高学歴で高収入の従業員ほど在宅勤務をする可能性が高いことが分かりました。このような人々は、給与をこれまで通りに受け取り、スキルを磨き、キャリアを積んでいます。一方で、仕事の性質上、あるいは適切なスペースやインターネット接続環境がないために在宅勤務ができない従業員は取り残されていきます。長期的な操業停止やそれ以降の期間に、彼らの技能や仕事の経験の価値が低下していくと、将来が真っ暗になってしまいます。
”質疑応答の全文は、こちらをご覧ください。
5. アクセシビリティと障がい
パンデミックの期間中、障がいのある人々の多くが不相応に大きな影響を受けました。
英国の調査によると、ロックダウンが開始されてから自立度が低下したと考える視覚障がい者が、全体の3分の2に上るということが明らかになりました。
さらに、英国において、新型コロナウイルスによる死者数の3分の2以上が障がい者です。
WHOは、障がいを持つ人々がパンデミック中に直面するリスクについても警告しています。障がい者は、通常よりも手厚いケアとサポートが必要とされるため、ソーシャルディスタンスを確保することが難しい場合があります。
必要不可欠なサービスが中断することもまた、障がい者を一層危険にさらすことになるのです。
しかし、これは何も今に始まったことではありません。「障がいのない人と比較すると、障がいのある人は健康状態が悪く、教育や仕事の機会へのアクセスが少なく、貧困率が高い」とWHOは説明しています。
例えば、ユーロスタットによると、基本的な活動が困難な人の雇用は、EU全体でも2人に1人以下となっています。
またパンデミックの影響で、障がいを持つ人々は、ヘルスケアなどの必要不可欠なサービスへのアクセスにおいて障壁に直面する可能性があります。重度精神障がいを持つ人々を対象とした調査についてWHOが報告していますが、先進国では35~50%、開発途上国では76~85%が前年に治療を受けていなかったことが明らかになりました。
新型コロナウイルスのパンデミックとコロナ対策で浮き彫りになったのが、このような既存の体系的な不平等とそれらに取り組む必要性です。
これを受けて、世界経済フォーラムのアップリンク・プラットホームは、新型コロナウイルス感染拡大への対応と復興の中で、社会的不平等や不正に取り組むアイデアや解決策を見つけるためのコンペ「新型コロナウイルス社会正義チャレンジ」を開始しました。
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