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デジタル起業家たちが支える、新型コロナウイルスのパンデミック後の世界の再構築

Helping entrepreneurs leverage the digital economy will have a positive knock-on effect on society.

起業家たちによるデジタルエコノミー活用を支援することは、社会に前向きな波及効果をもたらします Image: REUTERS/John Sibley

Brian A. Wong
Chairman, RADII Media
  • デジタルツールを活用する力は、今や、起業家たちがこの危機を生き抜くために欠かせないものとなっています。
  • このパンデミックは、ほぼすべての分野におけるデジタルトランスフォーメーションのプロセスを加速させています。
  • 起業家たちは、デジタルツールを用いることで、復興への道のりにおいて社会的モビリティ向上や共有価値の創造など、多くの要素に効果的にてこ入れすることができます。

SARSの流行が中国全土に急速に広がった17年前、アリババの従業員も防疫体制を取ることを強いられました。当時、アリババはまだ創業4年、この難局を乗り切れるかも不透明な若いスタートアップ企業でした。業務を一時停止すれば、同社に壊滅的な打撃を与えたことでしょう。しかし、アリババの従業員たちはデスクトップコンピュータと電話、山のような書類の束を自宅に持ち帰り、仕事を再開しました。

後から振り返れば、この危機は同社にとって「変革の時」でした。SARSの流行が広がる間、アリババは、同社にとって初の消費者向けプラットフォームであり、今や世界最大のリテールオンラインマーケットプレイスとなった「タオバオ」を立ち上げました。危機の中においても、前向きさ、決意、そして共通の目的があれば、課題をチャンスに変えられるということが証明された出来事でした。

現在、世界を襲う新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは未曾有の公衆衛生の危機に直面しています。世界中の事業や起業家たちが大きな課題に取り組む中、アリババは、新型コロナウイルスのパンデミックにより引き起こされるビジネスの障害へ対処しようとする中小企業(SMEs)を支援するため、そして不可欠なサービスが継続的に提供されるようにするために、再び立ち上がりました。

共有価値の創造に重点を置くデジタルエコノミーは、従来のゼロサムゲームのビジネスモデルからの脱却を象徴するものです。

ブライアン A ウォン

中国で、新型コロナウイルスが発生した直後、同社はパンデミックの影響を受けた企業を支援する20の対策を発表しました。中国内の店舗が閉鎖を余儀なくされる中、幅広い産業の業者がタオバオライブを活用して消費者にオンラインでリーチし、売り上げを維持しました。また、中国の農村地域の農家も、作物の販売にタオバオライブを活用するようになりました。

都会の消費者に、新鮮な商品を届けるアリババの「新しい小売り」の食料品チェーン、フレシッポ(Freshippo)では、買い物客はアプリを介して直接注文を行い、非接触型配送オプションを選択することができます。オンラインのコラボレーションおよびコミュニケーションツールであるDingTalkは、1,000万社以上の2億人を超える従業員のつながりを保つことのできる機能を立ち上げました。また、オンライン授業提供するDingTalkは、2020年3月の各授業日に、一日平均100万回以上のアクティブな授業を実施しました。

このパンデミックは、世界経済に深刻な影響を及ぼしましたが、デジタルエコノミーが新型コロナウイルスの大流行との戦いに有益であることも実証しました。アリババ創業者のジャック・マ―氏が指摘したように、過去にすでにインターネット技術を取り入れていた人たちは、事業を急速に成長させることができています。デジタルツールを活用する能力は、今や、事業がこの危機を生き抜くために欠かせないものとなっているのです。

私たちは、起業家たちがこの危機を生き抜き、長期的な成功を収めることができるよう、彼らがデジタルエコノミーをより有効に活用し、コミュニティの課題の解決策を開発できるよう支援していかなければなりません。

アリババビジネススクールのアリババ・グローバル・イニシアチブ(AGI)チームは、起業家や中小企業を力づけ、エンパワーメントすることが急務であることを認識しています。そのために、アリババは、新型コロナウイルス感染拡大に対する取り組みから得た教訓を、世界中の起業家たちが、新しいデジタル技術を活用してこの危機を乗り越えるためのリソースとして、共有するハンドブックを作成しました

このパンデミックは、ほぼすべての分野におけるデジタルトランスフォーメーションのプロセスを加速させました。世界がゆっくりと、しかし着実に回復段階へと移行しつつある中、パンデミックのもたらした消費者行動の変化は、永久に定着する様相を見せています。そこで問題となるのは、パンデミックという荒波の中、起業家たちのデジタルツールおよびイノベーションを活用する力をいかに向上させていくかということです。

デジタルツールを用いて新しい消費者行動に適応していくために、起業家たちは回復への道のりにおいてどのような機会に着目すべきなのでしょうか?

第一に、デジタルエコノミーが、新型コロナウイルス感染拡大の収束後の世界経済の回復において、益々重要な役割を果たすようになることは明らかです。中国での対応で見られるように、デジタルエコノミーの上に構築されたエコシステムはレジリエントで機敏、変化にも迅速に対応できます。

共有価値の創造に重点を置くデジタルエコノミーは、従来のゼロサムゲームのビジネスモデルからの脱却を象徴するものです。オンラインマーケットプレイス、キャッシュレス決済、非接触型配送、ライブストリーミングなど、新型コロナウイルス大流行中に活用されたデジタルサービスは、今では、いたるところにあるものになっています。エコシステムの構築にあたっては、起業家たちは複数のプレーヤーによる問題解決を可能にするプラットフォームアプローチを採用する必要があります。

第二に、ゼロから新しいシステムを構築する能力が必要になることで、新興市場の中小企業や起業家たちが台頭するようになり、新型コロナウイルス感染拡大の収束後の経済回復において、彼らの立場がより有利になります。このことは、これらの市場全体の起業家たちに大きな機会をもたらします。

アジアとアフリカのAGI起業家ネットワークには、新型コロナウイルス感染拡大がもたらした課題の中で、デジタルソリューションに取り組み成功をおさめた例がすでに多くあります。 eFounderのフェローでもあり、ウガンダを拠点とした遠隔医療企業を運営するデイビス・ムシングジ氏は、24時間年中無休対応の自社のコールセンターを拡張し、PPEの電子商取引プラットフォームを構築するために事業を方向転換、自社の医薬品配送サービスを統合させました。

他にも、ルワンダのeFounderたち、ナディア・ウワマホロ氏とオリジヌ・イギラネザ氏は、ルワンダの学生たちがパンデミックの中でもオンラインで教育を受けられるよう支援する2つのデジタル教育プラットフォーム、「eShuriプラットフォーム」および「O'Genius Panda」を立ち上げました。フィリピンのジョシャ・アラゴン氏とスティーブ・サイ氏は、eFoundersフェローシッププログラムで目にしたタオバオビレッジのモデルにインスピレーションを得て立ち上げた、電子商取引プラットフォーム「ザガナ(Zagana)」を通じ、農場から家庭への新鮮な農産物の配達を支援しています。eFoundersフェローシッププログラムは、国連貿易開発会議(UNCTAD)とアリババグループの共同プロジェクトで、開発途上国の起業家たちが母国でのデジタルトランスフォーメーションを促進する触媒となれるよう支援するものです。

デジタル技術を活用している企業は、自社の事業を新しい課題に対応できるよう適応させていくだけではなく、他社を支援し、復興への道のりをリードしていくべき立場にもあります。ネットプレナー・トレーニングプログラムのダニエル・リム氏により創設された、全国的なコラボレーションプラットフォームである「RumaKita」は、マレーシアの多くのロジスティクスおよび製造分野のeFounderやネットプレーナーからの支援を受け運営されています。このプラットフォームは、最前線の医療機関への必要なリソースの効果的かつ効率的な調達・割り当て・配達を行うため作られたものです。

中小企業は、社会における雇用創出と経済貢献のバックボーンです。そして、経済復興への道のりにおける開拓者となる存在でもあります。

ブライアン A. ウォン

デジタルエコノミーには、大衆の起業家精神が社会的モビリティに拍車をかけ、社会の主流から取り残された人たちの経済参加が拡大するというメリットもあります。

アリババの経験は、新しい機会の開拓と包括的な成長の推進においてデジタルエコノミーがなくてはならないものであることを示しています。アリババは、プラットフォームを通じて中国内で4000万以上の直接的および間接的な雇用を生み出し、数千万の中小企業およびスタートアップ企業に可能性をもたらしました。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大の結果としてテレワークの採用が増加し、物理的な境界を越えた人材へのアクセスも可能となったことは、起業家たちに自社の組織的構造を再考する新しい機会ももたらしています。

中小企業は、あらゆる社会における雇用創出と経済貢献のバックボーンです。そして、経済回復への道のりにおける開拓者となる存在でもあります。その中でも、デジタル技術を取り入れ、顧客、パートナー、地域コミュニティに可能性を提供するため自らのベンチャーやチームを方向転換させることのできる企業は、長期的に生き残り繁栄する最良の機会を手にすることができるでしょう。

第二波、第三波やこのパンデミックの持続的な影響を予測することは困難ですが、新型コロナウイルス感染拡大の収束後の未来では、人材および事業の準備や強化もテクノロジーを介して行うことになると考えられています。事業を継続するにあたって不可欠なニーズへのアクセスを維持するためにも、デジタルエコノミーは私たちの生活のあらゆる側面で重要な役割を果たすことになるでしょう。これこそが、私たちが共に作り上げていかなければならない「すばらしい新世界」であり、今こそ、その構築に向け起業家たちの能力向上を支援し、彼らと力を合わせていくべき時なのです。

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