アフリカの政府がポストコロナの経済回復のため、デジタルスキルのギャップを埋める4つの方法
オンラインロジスティクスサービスを提供する、スタートアップ企業センディで働く女性は、ケニア・ナイロビにあるオフィスでパソコンを使って仕事をしています。 Image: REUTERS/Baz Ratner
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グレート・リセット
- ポストコロナの世界では、アフリカで最も差し迫った問題に対して、インテリジェントでデータ駆動型の解決策を見つけることがこれまで以上に急務となるでしょう。
- モノのインターネット(IoT)、AI(人工知能)、ブロックチェーン技術、ビッグデータなどの第四次産業革命(4IR)技術が、アフリカ大陸の多くの分野におけるデジタルトランスフォーメーションを急速に発展させています。
世界銀行によると、2015年から2100年の間の世界の人口増加の83%はアフリカにおいて生じると考えられています。言い換えれば、2100年までに、地球上の3人に1人がアフリカに住んでいるという状況になるのです。資源や土地、そして適切な医療に至るまで、あらゆる面における需要が指数関数的に増加すると予測されています。
ポストコロナの世界では、最も差し迫った問題に対して、インテリジェントでデータ駆動型の解決策を見つけることがこれまで以上に急務となるでしょう。アフリカの各政府が新型コロナウイルス感染拡大がもたらした危機への即時対応に追われる中、未来、そして経済回復がどのような形になるかという点にも同時に注目が集まっています。
デジタル化が様々な産業にもたらす潜在的なメリットは、ますます明らかになってきています。モノのインターネット(IoT)、AI(人工知能)、ブロックチェーン技術、ビッグデータなどの第四次産業革命(4IR)技術が、アフリカ大陸で多くの分野におけるデジタルトランスフォーメーションを急速に発展させています。しかし、政府や教育者たちがまず人びとに教えなければならないのは、人は生涯にわたって学習を続けていくべきだということ。さらに、人びとがその過程で身につけたスキルを奨励し、認識し、評価する新しい方法を見つける必要があるでしょう。
新興技術は、アフリカが抱える問題の一部に対する解決策となる可能性を秘めていますが、同時に仕事の性質を必然的に変えることになるでしょう。デジタルとSTEM(科学、技術、工学、数学)のスキルを身に着けることは、チャンスを広げる上で非常に重要なのです。
”世界で最も若い人口を抱える(サブサハラアフリカの人口の60%以上が25歳未満)この地域では、これから社会に出ていく新世代のアフリカの人たちが適切なスキルを身に着けられるよう、教育への十分な投資が不可欠です。
世界経済フォーラムが2017年に発表した、人的資源に関する新しい指標「ヒューマン・キャピタル・インデックス」によると、アフリカ地域全体の雇用者は、労働者のスキル不足が事業の足かせになっていることをすでに認識しています。その割合は、タンザニアの全企業の41%、ケニアでは30%、南アフリカでは9%、ナイジェリアでは6%でした。
教育省は、スキルを修得する方法を再考する必要があります。そして、政府やコミュニティも新興技術のスキルや知識を開発する方法を、新たな視点で見直す必要があるでしょう。ここでは、アフリカの各政府にとって参考となるいくつかのアイデアを紹介します。
1. 従来にない認証プログラムの承認
高等教育は誰しもが受けられるものではありません。しかし、質の高いオンライン学習のリソースがあれば、人は特定のデジタルスキルを身に着けることができるようになります。政府は、型にはまらない手法の学習経路を正式に取り入れるチャンスを探るべきです。
データサイエンス・ナイジェリア、ジンディ、ブロックギークスなどのプラットフォームを活用すれば、アフリカのどこにいても実践的な学習が可能です。また、生徒や実務者が求人募集をしている雇用主に対し、スキルや仕事への備えができていることを自己アピールすることもできます。
アフリカ大陸の抱える問題を解決するために活用できるデータは、山ほどあるにも関わらず、データサイエンスや機械学習の学位を提供しているアフリカの高等教育機関はほとんどないという現状を考えると、これらの従来にない認証プログラムの正式導入は、アフリカの各政府にとってさらに喫緊の課題となるでしょう。
アラブ首長国連邦(UAE)には、アフリカ諸国が学ぶべき事例があります。ドバイ未来財団との提携のもと開発されたスマート・シティ・ユニバーシティは、デジタルスキルの開発を支援するブロックチェーンを活用した分散型ラーニングプラットフォームであり、従来の制度を回避することで、UAEにおいてデジタルスキルを持った人材を増やしていくことを目的としています。ここでは、各自が実践的な作業プロジェクト、関連する読み物、会議、デジタル認証を受けた対面またはオンラインでのワークショップなど、個人に合った教育経路を作成することができます。
2. ゲームチェンジャーとなりうる微積分スキルへの投資
大学は、未来の仕事のニーズを満たすのに十分な数のSTEM人材を輩出することができていません。世界におけるSTEM人材の数はかつてないほど増えていますが、まだ欠員となっているSTEM職も多く、大きなギャップが残っています。
ピアソンのAI製品&ソリューショングループを率いるミレナ・マリノバ氏は、STEMパイプラインにおける主なギャップのひとつは、微積分であると指摘しています。
「何千人もの学生たちにとって、微積分はSTEMキャリアの前に立ちはだかる、挫折の障壁です。約3分の1の学生が不合格になるか、挫折しコースをやめてしまいます。国立科学研究所によれば、女性は、能力の問題ではなく、単に自信の欠如が原因で微積分コースをやめてしまう可能性が、男性に比べ1.5倍高い傾向にあるそうです。しかし、STEM分野の職に就くには、少なくとも1学期以上微積分を専攻する必要があるのです」。
— ミレナ・マリノバ、ピアソン
解決策は単純ではありませんが、高度なAIを活用すれば、微積分のような難しい科目を学ぶ方法を変えることができるかもしれません。
マリノバ氏は、手に負えない学習課題の解決にAIを活用する方法を探るため、エンジニア、データサイエンティスト、ラーニングスペシャリストから成るチームを結成しました。その結果生まれたのが、世界初のAIを搭載したモバイル微積分チューター「アイーダ・カルキュルス」です。パーソナライズされたヒント、インタラクティブで関連性のある説明ビデオ、分析により考案された類似例を通じ、学生に段階ごとのフィードバックを迅速に提供し、解決策へと導くために構築されたものです。
時間の経過とともに、アイーダは、それぞれの学生にとっての最適なアプローチを学習します。アイーダは、アフリカの大学でパーソナライズされた学習とフィードバックを、補完し、充実させるために活用できるツールであるだけでなく、STEM労働力のスキルを強化する効果的な方法にもなりうるものです。
3.若者に最新の技術を教えるために、ストーリーテリングの文化を活用
新興技術を習得してもらうよう、次世代のアフリカの人たちを刺激するもうひとつの方法は、ストーリーテリングの文化を活用することです。
その一例として、ケニアのグラフィック・ノベル作家でありストーリーテラーのチーフ・ニャムウェヤ氏と、カナダのブロックチェーンの教育者であり投資家でもあるアン・コネリー氏とのコラボレーションがあります。
「トラスト」 は、ケニアの若い女性がブロックチェーンについて学び、それを使って自分の周りの世界を変えていく物語を描いたグラフィック・ノベルです。「この本の目的は、若者にテクノロジーを紹介し、教育やトレーニングを受けられるさらなるリソースへとつなげること。目標は、100万人以上のアフリカの若者に読んでもらうことです」と、アン・コネリー氏は述べています。この本で触れられているのは基本的なことですが、リーチを広げるためアフリカ大陸全体の技術や教育のネットワークとも提携しているため、オンラインブログやその他のラーニングリソースにもつながっていく仕組みになっています。
4. 未来に備えたカリキュラム
世界経済フォーラムのレポート、「アフリカにおける仕事とスキルの未来」では、アフリカの教育者たちが、人びとの今後の働き方に合わせてデジタルおよびSTEMスキルの習得を加速させる、未来に備えたカリキュラムを設計することの重要性が強調されています。サブサハラアフリカで、4IRに関する未来のスキル開発の研究に携わるリアーン・ボスマ氏もそのことに同意しています。
「イノベーションの分野で人材に不足はありませんが、デジタルデバイドは、テクノロジー、起業家、そして、技術事業の運営に必要不可欠な熟練労働者との間にある断絶を泥沼化させてしまいます。現代の企業で働くにあたって、学位の取得はもはや必須ではありません。サブサハラアフリカの高等教育機関は、インダストリー4.0の破壊的な潜在力に対して備えることができ、創造的破壊に関わり続けられる若者たちを育てることができるよう、自らを再設計する必要があるでしょう」。
— リアーン・ボスマ
民間部門にも、技術部門の即戦力となるスキルに不可欠な包括的なカリキュラムの設計に参入する、またはそれを設計する教育者を支援するチャンスがあります。今年3月、ジンディは、アフリカ全土の70以上の大学の1000名を超える学生をそのプラットフォームに結集させ、さまざまな機械学習の課題において競わせる、初の汎アフリカ大学間ハッカソン(UmojaHackAfrica)を開催しました。
大学での従来の学習を強化することを目指した、民間の学術機関との共同モデルの導入も非常に有益です。これは、市場における実際のクライアント向けの実社会のデータサイエンスによる問題解決を取り入れています。学習の分散化とオンライン化が進むであろうポストコロナの世界では、このようなパートナーシップがますます重要となっていくでしょう。
従来の教育機関にも、利用可能なオープンソースコンテンツを活用するというチャンスがあります。例えば、世界経済フォーラムの第四次産業革命センターは、当フォーラムの相互作用、洞察、影響のためのグローバルプラットホームを活用し、新興技術に関するオープンソースのフレームワークやコンテンツの開発と共有をしています。2020年4月、当フォーラムは「ブロックチェーン・デプロイメント・ツールキット」発表しました。このツールキットは、ブロックチェーン技術の展開におけるグローバルなベストプラクティスを提供します。ツールキットを構成する14のモジュールは、ブロックチェーン展開のための最も重要なトピックのいくつかをカバーしており、教育者が利用できるリソースの例も含まれています。
*本記事は、メール&ガーディアンに掲載された記事の和訳を転載したものです。
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