• 現在の教育システムは、産業革命モデルに基づいて構築されし、IQ (知能指数) 的な側面、とりわけ暗記と標準化に焦点を当てたものとなっています。
  • 仕事で求められるスキルの準備、スマートマシンと競合できる能力、長期的な経済的価値の創造等を念頭において、教育のあり方を見直さなければなりません。
  • 初等教育の学齢期にある7,200万人の子どもたちが学校に通えていないという、世界的な教育危機を解決するため、教育の機会、その公平性や質を改善する必要があります。

現代の教育システムは危機に瀕しています。新型コロナウイルス大流行の影響を受ける前ですら、世界の多くの地域で、学齢期の子どもたちが学校に通えていない状況でした。また、学校に通えていても、適切な指導を行うためのリソースを学校が有していないこともよくあります。人生における可能性を切り開く上で、質の高い教育が、これまで以上に不可欠になっているこの時代に、必要な教育の機会を失っている子どもたちがいるのです。それは、大人になって充実した人生を送り、世界経済に参加・貢献するために必要な教育です。

歴史上、教育は持てる者と持たざる者とを結びつける最短の橋であり、個人と国の両方に進歩と繁栄をもたらしてきました。しかし、産業界が比較的均一なスキルと知識を持つ労働者を必要としていた時代に構築された今の教育システムは、時代遅れになりつつあります。イノベーション、混乱、変化の激しいこの時代において、最も必要とされているのは、適応力とラーニングアジリティ(学習機敏性)であり、既存の教育システムは妥当性を失いつつあります。

現在の教育システムは、産業革命モデルに基づいて構築され、IQ(知能指数)的な側面、とりわけ暗記と標準化に焦点を当てたものとなっていますが、こういったスキルは拡張人口知能(AI)に簡単かつ効率的に取って代わられるでしょう。つまり、IQだけではもう不十分なのです。IQとEQ(感情知能)、そしてRQ(レジリエンス指数)を適切に組み合わせたアプローチが、生徒の可能性を解き放つために必須です。

仕事で求められるスキルの準備、仕事においてスマートマシンと競合できる能力、長期にわたる経済的価値の創造、これらの3つの基準で現在の教育システムを評価してみると、次のことが明らかになります。

  • 大学生の34%が、学校は学生を労働市場で成功させるための準備を十分にしていないと答えています。教育と雇用の可能性をつなぐ橋を整える必要があります。
  • 未来の仕事の60%はこれから生まれる職種が占め、今保育園や幼稚園に通っている子どもたちの40%は、何らかの形で収入を得るために起業する必要が出てくるでしょう(出典:世界経済フォーラムによる、未来の仕事に関するレポート)。今はまだ存在しない仕事に就き、また起業家になる未来も視野に入れつつ、生徒たちを準備させなければなりません。何をどう学ぶか、そして教師の役割は、根本的に変わりつつあります。

米国の学生ローンの債務総額は1.5兆ドルに上り、住宅ローンに次ぐ2番目に高額な債務となっています。授業料が年間10万ドルを突破すると予想される中、学生ローンの債務は未来を担う世代を押しつぶすことになるでしょう。バラク・オバマ氏でさえ、40代になってから学生ローンを完済したと報じられています。新規大卒者の平均年収48,400ドルでは、多くの人々は定年近くなってようやく学生ローンを完済することになり、その結果、貯蓄やマイホームの購入、家族の扶養、慈善活動への貢献といった活動は大きく妨げられてしまうことになるでしょう。

教育システムの改革に取り組む一方で、教育の機会をより多くの人へと広げる取り組みも欠かせません。国際連合児童基金(UNICEF)によると、初等教育の学齢期にある7,200万人超の子どもたちが学校に通えておらず、一方で7.5億人もの大人は読み書きができないため、自身や子どもたちの生活状況を改善できないでいます。教育システムの改革に取り組むにあたり、教育の機会、その公平性、質と影響、これら3つの重要なカテゴリーの一連のつながりが、可能性を解き放つ上で不可欠となります。

Rising education around the world
世界の教育の普及状況

教育の機会とは、すべての生徒が、おかれた環境により、学校に通って教育を受ける権利を妨げられることがないようにすることを意味します。多くの開発途上国では教育の機会が十分にあるとは言えない状況ですが、社会的に階層化が進んだ先進国でも、教育の不平等は存在します英国がその例です。どうすれば教育や学習の機会をより多くの人々へと広げられるでしょうか?テクノロジーの果たす役割は?各国、特に発展途上国が経済的な進歩を確実にするためには、どのようにして優秀な人材を確保することができるでしょうか?

教育における公平性とは、おかれた環境に関わらず、すべての子どもが学校に通い成長するために必要なリソースを確保できる状態です。平等とは、すべての生徒を同じように扱うことですが、公平性とは、すべての生徒が成功するために必要なサポートを受けられるようにすることを意味します。この不可欠な推進要因は、公正性(個人的・社会的環境が、生徒の学業の可能性を妨げないようにすること)と、インクルージョン(バックグラウンドやジェンダー、地理的要因に関わらず、すべての子どものために最低限の基本的な基準を設けること)です。このことは、次のような疑問につながります。地域の中での問題意識を高めるにはどうすればよいか?すべての子どもが成功するために必要な指導を受けられるよう、個別の多様な学習を可能にする上で、テクノロジーはどのような役割をはたすことができるだろうか?

教育の質と成功は、共通テストのスコアよりも、生活の改善や社会的影響に結びつく、より全体的な測定方法によって、定義されなければなりません。質の高い教育は、経済的生産活動に従事し、持続可能な生活を発展させ、個人の幸福度を高め、地域社会に貢献するために必要な能力を、生徒にもたらしてくれるでしょう。教育のインパクトに目を向ければ、行動や活動(学校への出席やテストを受けること)だけでなく、価値創造のための環境(個別の学習やキャリアカウンセリング、仕事で求められるスキルの準備、責任ある地球市民となること等)も重要だということがよく分かるでしょう。

世界的な教育の危機を解決することは、全ての人にとって大きな利益となります。

  • 米国では、今後10年間で1300万人の学生が学校を中退するとみられており、3兆ドルの損失となります。
  • 高校中退者に比べて、卒業者はより多額の納税をし、社会福祉制度の利用がより少なく、犯罪率も低くなっています。
  • 今後20年間で、米国の生徒の学習到達度調査(PISA)スコアを8%改善すれば、今後80年間のGDP約70兆ドル増加につながります。

「教育への投資は、経済発展を推進し、若い男女のスキル向上と機会の拡大を促し、17の持続可能な開発目標(SDGs)すべてにおける進歩の機会を切り開く、最も費用対効果の高い方法です」と、アントニオ・グテーレス国連事務総長は述べています

だからこそ、21世紀のニーズに合った教育と学習へ、さらに教育から雇用の可能性と経済的自立への道を形成するべく、リセットが必要です。

教育を妨げる足かせを断ち切るために、皆で協力することを誓いましょう。どんな挑戦が未来に待ち受けていようとも、考え、学び、進化できる能力を生徒に与えられるよう、過去の教訓と、現在と未来のテクノロジーを融合さて、教育システムを真に改革し、より良い世界を作るために生徒が可能性を解き放つことができるようにするべきです。