• 新型コロナウイルスの急速な感染拡大は、既にSARSやMERS以上の厳しい経済的影響をもたらしています。
  • 政治的影響はさらに予測が難しくなっていますが、甚大で長期的なものになるでしょう。

2019年の終わりに中国で発生したこの感染症は、今や世界的な問題へと発展してしまいました。2月末には、新型コロナウイルスの流行が始まってから初めて、中国以外での新規感染者数が中国国内の新規感染者数を上回りました。

多くの国から寄せられるデータは、検査能力、政治的な都合、そして、特に潜伏期間が最長12日間と長く、その間、感染していても無症状の可能性があるなどの臨床的特性により、その信頼性には問題があります。しかし、感染が急速に拡大していることは明らかです。

中国は、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制において大きく健闘しており、それにより、他の国々がこの新型コロナウイルスに備え、地理的に隔離された地域に封じ込めるための時間を稼ぐことができてきました。世界保健機関(WHO)もこれまでにない対応を行ってきましたが、特に以下の3つの分野で民間からのサポートを必要としています:

1サプライチェーンおよび物流の維持:急増する需要に対応し、薬やワクチン、マスクを入手できるようにすること

2スタッフに対する信頼できる情報フローの提供:企業は、可能な限り誠実で透明性が高く、十分に情報を把握していること

3特定分野(医療および医薬)の研究への取り組み:診断検査、公衆衛生および予防の研究、新薬やワクチンの開発、すでに感染した患者のための治療法および薬の開発など

今後、感染拡大速度を緩やかにしていくためには、封じ込めと備えが必要です。特に、医療制度が十分でない、または医療資源不足の国にとっては、このことが極めて重要になります。私たちは、新薬やワクチンの提供により、力を合わせてこれらの国々を支援するべきで、誰一人取り残してはならないのです。現在進行中の感染や拡散を防ぎ、コントロールすることが賢明で自己利益となる上、世界の保健衛生に対して公平に対応する必要があるからです。

経済的影響

約8,000名が感染し774名が死亡した2003年のSARSの大流行では、世界全体の経済的影響は推定500億米ドル。そして、200名が感染し38名が死亡した2015年の韓国でのMERSの大流行では、その経済的影響は85億米ドルと推定されていました

新型コロナウイルスの経済的影響は、すでにこの2つの感染症を上回っています。ウォール街も世界的な急落に同調し、米国企業のS&P 500指数は11.5%下落、2月24日の週は2008年の世界金融危機以降、最悪の一週間となりました。中国は、春節以降1か月、事実上、経済的に封鎖された状態であり、世界的な製造業への波及影響も出ています。数々の、賢明な感染拡大予防策は理にかなってはいるものの、企業や政治家もパニックに陥りやすい状況となっています。サプライチェーンへの実際の影響は、石油のような一次産品から、ジャストインタイム生産システムの自動車製造において問題となっているような供給停止に弱いサプライチェーンまで、あらゆる分野や資源に影響を及ぼしています。

2008年の世界金融危機は何かを解決したわけではなく、多額の負債と資産バブルを抱える世界経済の脆さという負の遺産をもたらしました。世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2020年版でも指摘されているように、経済システムにはいくつもの転換点があり、世界的危機に対する経済的影響は、是正されていく可能性があります。

Economic stimulus measures taken around the world in response to COVID-19
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界で取られた経済的な景気刺激策
イメージ: The Economist

地政学的影響

衛生上の課題や経済的影響が壊滅的になる可能性がある一方で、政治的な影響はさらに予見が難しくなっていますが、今までにないほど影響が長引く恐れがあります。日本では、クルーズ船での新型コロナウイルスの集団感染への対応により国内の感染者が増加し、東京オリンピックが中止となる可能性も出てきました。イランのような国では、国の医療制度の手ぬるい対応により、感染拡大の封じ込めの機会を逸し、ウイルスが中東の他の国々にも広まっています。北イタリアの各自治体の封鎖は遅きに失し、ヨーロッパ全体にイタリアからウイルスが拡散。市民を守るという基本的な責務を果たせなかった政治家を、今後も有権者は支持するのでしょうか。

私たちは、目前に広がる課題の規模を偽りなく評価する必要があります。すべてがうまくいけば数週間のうちに初めてのワクチンの臨床試験が行われる可能性もありますが、それはとても楽観的なタイムスケールです。安全で効果的なワクチンが、製造ラインに乗るのは数か月から数年先の2021年以降とみられています。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)のリチャード・ハチェット氏が、先見性のある2019年の記事でくり返し述べたアドバイスのように、統合的な対応、すなわちワクチンの開発だけではない、治療薬や治療法を含む公衆衛生上の対応が必要です。

2月末時点では、中国でのウイルスの遺伝子構造に変化は見られていません。このことは1年以内に効果的なワクチンが生まれ、流通する可能性を示す良い兆しです。それまで、私たちは警戒を続け、拡散をコントロールできるよう準備していかなければなりません。新型コロナウイルスは感染拡大が一層加速してしまう可能性もありますが、少なくとも、中国の現在の状況が示すように封じ込めることは可能です。アフリカでは、WHOが支援を行い、検査(発生前のゼロの状態から)を行う研究所を35か国で40か所立ち上げました。このことは各国での早期発見と早期のコントロールにつながるでしょう。