2020年代にジェンダー・ギャップを解消する3つの戦略
ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を加速させるための方法とは。
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持続可能な開発目標5: ジェンダー平等の実現
現在のペースでは、ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を達成するために要する期間は100年近くと予想されています。
2006年以降、世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数では、「経済的な参画と機会」、「学歴」、「健康と生存率」、「政治参画」という主要4分野で男女差が測定されています。2020年指標では、いくらか改善が見られたものの、ジェンダー平等の世界の実現には、99.5年かかると予想されました。
これはどうしてなのでしょうか。さらに重要な問いは、どうすれば2020年代をジェンダーパリティ(ジェンダー公正)の10年にできるのか、ということです。これまでの流れを劇的に断ち切り、近年のサクセスストーリーを基にして、ジェンダーパリティに向け新たに弾みをつけるためには何が必要なのでしょうか。
2020年代を、最終目標であるジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を実現する10年とするために鍵となる3つのことを紹介します。
1. ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を意識するビジネスリーダーシップは労働者にとって望ましく、より良い最終収益につながる
成人就労率の平均は、男性が78%に対し、女性は55%にとどまっています。同じ労働をしても、女性の賃金収入は男性の60%で、賃金以外の所得では50%にすぎません。
つまり、ジェンダー・ギャップを解消させるビジネスリーダーシップが、雇用やバリューチェーンには不可欠であり、ステークホルダー資本主義の時代や次世代の価値観で期待されているのです。このようなリーダーシップは、現代の労働者やその家族に訴求する包括的な職場環境の整備に重要であるだけでなく、ビジネスそのものを成功へ導くためにも肝要です。当然ですが、多様性の高い企業とは、長期に渡り高い業績を残せる企業でもあります。そのような企業は、意志決定の際に、リスク、報酬、価値について幅広い情報を取り込み、均一性の高い企業より常に高い利益を上げるからです。このような傾向は、第四次産業革命や変化するビジネス環境下において、拡大していくことでしょう。
2. 「歴史を加速させる」ためには、政策インセンティブと政治的ロールモデルの両方が必要
現在、全世界の議員35,127人および閣僚3,343人のうち女性が占める割合は、それぞれ25%と21%です。さらに、過去50年間で女性が国家元首を務めた国は、最新調査の対象となった153か国のうち68か国でした。最近では、フィンランドで、世界で最も若い女性首相が誕生しました。
権力のある地位に就く女性が増えるにつれ、次世代にとって、リーダーシップと女性が関連することは当たり前と考える好循環が生まれます。ロールモデル効果はすでに明らかで、有能な女性が政権の高位に就いている国では、財界でも有能な女性がリーダーシップを取っている傾向にあります。
公正を根付かせるためには、政策立案やインセンティブの導入が、益々重要な役割を果たすと考えられます。議員や会社役員などの男女の割合を規定する「クォータ制」や、賃金平等法の制定から、育児休業政策、ケアエコノミー(子どもの保育や高齢者の介護、教育など人をケアするための労働)のインフラ構築まで、それは実にさまざまです。経済面のジェンダー・ギャップ解消のためには、特にこの政策インセンティブが、取り得る手段のうちで最も重要であることは明白です。調査や公表データに見るフランスや英国の成功例や、アイスランドの平等賃金義務化法の施行などから、政策が、比較的妥協なく変化を加速させる効果的な手段となり得ることが示されています。
3. 今がまさに、ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を未来の仕事に取り入れるべき絶好の機会
リンクドインのデータによると、今後急速に成長する8種の専門職のうち、6種の職で女性が不足していることが明らかになっています。需要が伸びている職種のうち、人材や組織、企業文化をテーマとする「ピープル&カルチャー」の分野では、女性が占める割合が大半であるのに対し、「データおよび人工知能(AI)」分野は26%、「工学」分野は15%、「クラウドコンピューティング」分野はわずか12%です。これらの職務を担う、優れた才能を持つ人材が急速に求められているこの時代だからこそ、ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を未来の仕事に取り込む絶好の機会です。急速に成長する職務に対応できるよう、教育、リスキリング(再訓練)、アップスキリング(技能向上)に重点を置き、熟練した女性の専門家を育てると同時に、専門技能と知識を備える女性が、性差による偏見ゆえ、採用、昇進、雇用継続に恵まれない問題に取り組むことが、まさに今求められています。特に、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の専門職では、ロールモデルと包括的な職場環境が課題となっています。そして、革新的な人事システムにより、過去の男女間の偏りを是正し、ジェンダー平等や多様性を大きく取り入れることが可能になります。
世界経済フォーラムが実行する約束
政治、経済におけるリーダーシップがなければこれらの課題は解決しません。世界経済フォーラムでは、ジェンダー・ギャップ評価のために総合的なデータと「判断基準」を提供するほか、2020年から実施する以下の3つの行動に取り組んでいます。
- 変化のスピードを加速させるためのリーダーとなることを希望する国々に、プラットホームを提供しています。現在、世界経済フォーラムは9か国と恊働し、「ジェンダー・ギャップ解消アクセラレーター(Closing the Gender gap Accelerators)」プログラムを通じ、女性の就労率を上げ、男女賃金格差を解消し、女性リーダー数を増やし、将来の職務に備えて女性にスキルを身につけさせるために、変革を推進しています。2020年までに、同プログラムを15か国にまで広げ、ベストプラクティスを体系化し学び合えるよう、アクセラレーター参加国間の学習ネットワーク設立を目指しています。
- 大手企業と協力して、今後最大の成長が見込まれる職務または最も戦略的な職務を5つ特定し、2022年までに、その職務の採用と報酬にジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を取り入れるよう働きかけています。とはいえ、これは包括的な解決策ではないため、企業はパリティに向けてさらにするべきことがありますが、それでも、新しくギャップが生じるたびに是正するのではなく、将来のジェンダー・ギャップ解消を目指すためには、先手を打った戦略を取り入れることが重要です。
- ダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会は、世界中のリーダーが集い、多くの注目を集める会合のひとつです。第50回目となる2020年度総会では、2030年までに女性参加者を少なくとも2倍以上にすることに取り組みます。ある程度は、多様なステークホルダーグループ内からの参加者を増やす、グループ内の方策で取り組みますが、大部分は、政治、経済の各分野からの参加者と協力して、ジェンダー・ギャップ改善のためのリーダーシップについて取り組む予定です。
このような行動は、特効薬ではないものの、ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を加速するためには不可欠です。世界の才能の半数を男女平等に包括させない限り、社会全体に対して第四次産業革命を約束通り実行できず、繁栄を分かち合える経済成長も、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成することもができません。
2020年代の幕開けには、より公平で包括的な国々を構築することこそ、産業界、国内、世界のリーダーの目標とならなければなりません。今、そして、次世代にとってこれ以上の望みはないからです。
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