ここ20年間で、人類が目にした社会的、技術的な変化は過去に類を見ないほど、あまりにも大きいものです。ものごとの変化が非常に速くなっていて、ひとつの技術の波が引いても、自分を落ち着かせる間がほとんどないまま、甲板には別の技術の波が打ち寄せ、再び足元を巻き込まれてしまいます。

なぜこうした事態が起きているのか。技術発展を歴史的な観点から見てみると、その理由が簡単に理解できます。電話や自動車などの比較的古い技術は、長時間かけて少しずつ消費者に受け入れられ、場合によっては何十年もかかることがありました。一方、携帯電話やソーシャルメディアといったより新しい技術は、一夜にして拡散するかに見え、発明から一般への普及にほとんど時間がかかりません。

現在、新しい技術は、どれもが戸惑いを覚えるようなスピードで広がります。その採用率はもはや曲線の形ではなく、ロケットのように急上昇しています。AI(人工知能)や遺伝子工学、ロボット工学が考案されている中で、このスピードがすぐさま鈍化する可能性は低いでしょう。新しい技術の急速な普及は、政治、経済、社会のシステムをはじめ、文化規範や社会的役割にも混乱をもたらしています。

さらには、私たちひとり一人に心理的、情緒的な打撃も与えています。

混乱:ビジネス、教育、そして日常生活でも

このような混乱の事例は数多くあります。ソーシャルメディアがブレグジット(イギリスのEU離脱)の是非を問う国民投票、および世界に与えた影響は、未だ完全には理解されておらず、「自由で公正な選挙は今なお可能なのか」という疑問を投げかけています。これらデジタル技術の制作者ですら、この問題に対する理解は限定的で、AI(人工知能)アルゴリズムが支配権を握った際には、制御を失う事例もみられました。それは、最近のノートルダム寺院の火災がアルゴリズムにより不適切に分類され、9.11米国同時多発テロという、まったく別の大火災と誤認された際に生じた時と同様に困難な状況をもたらしました。

教育関係者である筆者は、学校が技術を蓄積し、これを有意義な方法で活用して学習改善を図ろうと苦闘するのを見てきました。そのために投じられた資金は、まだ大規模な価値創出に転換されていません。こうした状況は、著述家ピーター・ドラッカー氏の「動いていることを前進と混乱してはならない」という言葉を思い出させます。

最近、マンハッタンでライドシェア(リフト)を利用する機会があり、ドライバーのある友人が個人破産の申し立てをするという話を聞きました。その友人は、およそ10年前、80万ドルを投じてニューヨーク市のタクシー営業許可を2件取得したのですが、ライドシェアサービスの人気が高まった影響で、営業許可の価値が投資額のごくわずかに落ち込んでしまったことが原因だと言います。混乱は瞬く間に広がり、私たちを直撃する可能性があります。自動運転車の実用化が間近に迫る中、ウーバーやリフトのドライバーですら、ほどなく混乱に直面することになるでしょう。

上述した異なる状況の3つの事例は、混乱がもたらす影響の大きさ、そして私たちが政治、教育、経済の各システムを再構成する必要があることを浮き彫りにしています。ひとつの次元で変化を生むことは気が遠くなるような仕事です。複数の次元でこれを実行することを想像してみてください。

私たち自身が変わらなければ、私たちを制御し、可能性を与えるシステムや制度を変えることは不可能でしょう。迅速な学習と実行が、一歩先を行くための鍵となるのです。

3つの重要なスキル

急速に広がる混乱の世界が投げかける問題に立ち向かうため、培わなければならないと筆者が確信する3つの重要な資質。それは、学習のアジリティ、レジリエンス、根拠のある楽観主義です。

1. ラーニングアジリティ(学習機敏性)これは、学習する能力と意志、そして、不慣れな状況の中でも打ち勝つために、学習したことを効果的に適用する能力と意志です。生涯学習の種は好奇心から生まれます。好奇心は知りたいという先天的な衝動で、そのひらめきは人を探求、発見、発明、再発明に駆り立てます。現代では、年齢を重ねるにつれ、努めて好奇心を培おうとはしない人が大部分です。しかし、私たちは好奇心を育む必要があります。しかも、上手くそうできるようになるべきです。学習しなければ私たちはどうやって進化するのでしょう?固定観念にとらわれるようになってしまったら、適応も進化も、秀でることも難しくなるでしょう。

アルビン・トフラー氏は、次のように予言しました。「21世紀の文盲とは、読み書きできない人を意味しない。学べず、誤りを正す事ができず、学び直す事ができない人だろう」。

学習のアジリティはどのようにして育成できるでしょうか?

  • 好奇心を持つ。「なぜ?」と問うことから始めます。これを継続してください。
  • 探求する。新しいことに挑戦し、タイプの異なる人たちと関わりましょう。
  • 熟考する。自己意識を培い、自分でこれを実行し、フィードバックとサポートを積極的に求めます。失敗は学習だと考えましょう。

ハーバード・ビジネス・レビューの論文「学習能力を高める」では、学習能力の重要なイネーブラーとして、刷新する、実践する、熟考する、リスクをとる、を挙げています。

2. レジリエンス: これは、人生に打ちのめされたときに立ち直ることを可能にする資質です。この力は、私たちが持ちこたえ、成功する手助けをしてくれます。混乱の世界では、逆境と新たな挑戦が人生の中心になるため、ストレスと大失敗に対処できることが絶対に欠かせません。

レジリエンスは、私生活でもビジネスでも重要です。簡易テストを受けて、レジリエンスの3つの重要な資質である挑戦、支配、関与における自分の位置を確認してみてください。

レジリエンスはどのようにして築くことができるでしょうか?

  • 認知再構成法を練習する。困難な状況のマイナス面だけでなく、プラス面も見極めるために必要な気持ちの切り替え行うことを学びます。
  • 被害者的な思考様式(「なぜ私にこんなことが起こるのか?」)を避ける。こうした思考様式は役に立ちません。
  • 瞑想する

3. 根拠のある楽観主義:楽観主義は、起こりうる最善の結果を予測する性向です。根拠のある楽観主義とは、楽観主義に現実主義という健全な要素を十分に加え、これに悲観主義が混和された状態です。根拠のある楽観主義は、ポジティブな感情に結び付いており、これを具体的行動へと転換して現実的な解決策につなげます。

楽観主義は習得できます。ポジティブ心理学の父といわれるマーティン・セリグマン氏は、学習性無力感に関する自身の研究を基に、学習性楽観主義という概念を創出しました。スタンフォード大学には、人の思考様式-悲観主義者・楽観主義者スペクトルを分析したマーティン・セリグマン氏の研究に基づくアンケートがあります。

根拠のある楽観主義をどのようにして築くことができるでしょうか?

  • ポジティブなことに注目する。
  • 楽観主義者に関する読書をし、楽観主義と現実主義の両面を持つ人たちと付き合う。
  • 意識的に心を今この瞬間の現実に向け、マインドフルな状態でいる。「マインドフルネス」はスキルであり、そのスキルを習得するためにできることはたくさんあります。幸いなことに、マインドフルネスを培うのに役立つリソースは豊富にあります。

製品のライフサイクルの短縮化、ビジネスモデルの破壊、機械との競合が一層進んでいく21世紀を生きる私たちは、このような時代への適応をIQだけに頼るのは不十分でしょう。EQ(感情知能)とRQ(レジリエンス指数)の要素を十分に持ち合わせることが、自分の進む道を描く上で非常に重要です。

今、私たちは「VUCA」、つまり、変わりやすさ、不透明感、複雑さ、曖昧さに特徴づけられる世界に暮らしています。このような世界で生きる上で鍵となるのは、どのくらいひどく転ぶか、あるいは何度転ぶかではなく、どのくらい速く立ち上がるかです。あなたはVUCAへ立ち向かう準備ができていますか?