デンマーク、スウェーデン、ドイツが食肉税を検討するワケ
畜産部門は年7.1ギガトン(CO2換算)と温室効果ガス排出の大きな要因となっている Image: REUTERS/Luisa Gonzalez
ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどの国では食肉税が検討され、肉を食べる人は非難の矢面に立たされています。
計画を支持している人たちは、課税の根拠として、環境や人間の健康に与える影響、そして動物福祉上の懸念を挙げています。しかし、食肉税はどの程度現実的なのでしょうか。そして、本当に機能するものなのでしょうか。
食肉税導入には畜産業者やロビー団体の反対が見込まれますが、ドイツでは、緑の党と社会民主党の議員が食肉にかかる売上税を増税する案を支持。財務インテリジェンス企業であるフィッチ・ソリューションズの報告書によると、デンマークとスウェーデンでも同様の提案が検討されたことがあります。
大量に排出される温室効果ガス
食肉用に動物を育てるためには、膨大な量の土地、飼料、そして水が必要です。それに加え、畜産業は温室効果ガス排出の大きな要因となっており、国連食糧農業機関(FAO)によると、年7.1ギガトン(CO2換算)を排出しています。これは人為的に排出されている温室効果ガスの約15%に相当します。
サイエンス誌に掲載された研究によると、一部の先進国では肉の消費量が減少しているものの、中国などその他の国では増加。世界全体の家畜需要が2050年までに70%増加するとFAOが予測していることも合わせて考えると、一部の政治家が畜産制限政策を支持している理由が見えてきます。
多くの先進国では肉離れの動きが広がっています。国連が委託した最近の報告書では、食肉消費量を減らすよう勧める政策のほか、気候変動緩和対策の一環として菜食中心の食事が推奨されています。
食肉税は、公衆衛生と健康を促進するため世界各地で課せられている他の税金と同じ考え方に基づいています。アルコールとタバコは昔から課税対象となっていますが、今ではイギリス、アイルランド、ポルトガル、アラブ首長国連邦など多くの国で砂糖税が導入されています。
本当に効果があるのか?
それでも、このような対策は論議を呼んでおり、低所得の消費者に不公平な負担がかかると主張する人もいます。ボリス・ジョンソン英首相は「『罪の税』と呼ばれるこうした政策がイギリスでどの程度機能しているかを見直す予定です。
一方、政策設計を改善すれば、このような税をより効果的に機能させ、低所得者層に対する影響も少なくできると主張する人たちもいます。全米経済研究所の論文では、ソーダ税の理論的仕組みからこれが実際にどのように機能するかを研究しています。
サイエンス誌の研究では、人々の食品購入と、消費のあり方を変えようとする試みの有効性については、より多くの知見が必要であると主張しています。
「食肉の価格や入手可能性、そして加工と販売の方法は、無数の要因によって左右されている。人々の規範と行動に大きな影響を与え、またそれらに逆に影響も受けている社会経済状況は、そうした無数の要因が形成している」
「強力な既得権者と権力中枢の存在が、食生活の変化に関わる政治経済を極めて困難にしている」と研究の著者は訴えます。
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