エネルギー転換

水素は、すでに手の届くところに。未来の燃料ではありません。

ガソリンスタンドの水素ポンプが、もうすぐ当たり前の光景に?そのためには政策立案者による助けが必要です。

ガソリンスタンドの水素ポンプが、もうすぐ当たり前の光景に?そのためには政策立案者による助けが必要です。 Image: REUTERS/Alex Gallardo

Brad Page
CEO, Global CCS Institute
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エネルギー転換

世界の経済大国の指導者達が集うG20が日本で開催されます。この会議で世界の注目を集める話題として期待されている、ふたつの重要な脱炭素化のオプションが、カーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)と水素です。二酸化炭素排出量の削減は急務。それは、原子力や再生可能エネルギーの効率を加速し、急激に拡大すると共に、これらふたつの技術が同時に、また独自に必要となることを意味するのです。

多用途で環境にやさしく、燃焼時に二酸化炭素が発生しない水素は希望の星。発生するのは水と熱だけで、電気、暖房、運輸および産業の脱炭素化に貢献します。クリーンなエネルギーの方向性を指し示す水素は、容易に輸送、貯蔵、および現在の燃料との混合も可能です。

多くの人にとって、水素は未来のエネルギー源と考えられているものの、未だ漠然としています。しかし大きな規模による低排出の水素製造は既に実証されています。天然資源からの水素の製造と共に、CCSと呼ばれる、二酸化炭素を回収し地下に貯蔵する一連の排出削減技術が既にあります。このように、他の主要な緩和策と共に水素生産を大規模に展開することで、エネルギー転換を加速することはできるのです。

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水素は様々な供給源から製造することができるため、安全性と供給の多様性の両方を可能にします。天然ガス改質(SMR)によって、全世界で生産される全水素の半分を供給することができます。電気分解は、再生可能エネルギーや原子力から生成された余剰クリーンエネルギーを使用して水素を生成するプロセスで、エネルギー貯蔵の一形態として重要なうえ、再生可能エネルギーのより大きな統合を可能にします。

政府は電気分解と二酸化炭素回収水素の両方を支援する必要があります。オーストラリア政府は、2050年までの世界の水素需要を年間5億3千万トン(530mtpa)と予想しています。この数字を他の数字と比べて考えてみましょう。500mtpaの水素を生産するには、原子力と再生可能エネルギーから25,000テラワット時(TWh)の電力が必要。これは2018年の原子力と再生可能エネルギーからの発電量の2.5倍以上となります。二酸化炭素回収と水素製造の組み合わせはまた、今のところより安価であり、電気分解の価格の半分から3分の2であることが実証されています。

しかしながら、CCSのスケールアップが必要なのは、水素製造のためだけではありません。発電所や、産業プロセスからも二酸化炭素を削減するために不可欠なのです。「世界エネルギー展望2018」の中で、国際エネルギー機関(IEA)は、既存および建設中のインフラでは、現在残されている炭素予算のほぼすべてを賄うに過ぎないとして、必要な二酸化炭素回収の拡大を強調しています。IEAの「持続可能な開発シナリオ」は、地球温暖化を制限するためには、現在の18施設から、2040年までに約2,000のCCS施設が必要であると推定。現在、これら18のCCS施設のうち4か所で水素を製造しています。うち2施設がカナダで建設中。水素の年間総生産能力は150万トン近くに達しています。

技術者たちはまた、アラムサイクルという実証中の有望で革新的な二酸化炭素回収技術、つまり基本的にゼロエミッションの天然ガス発電所を、水素製造と統合することを望んでいます。

日本がG20で水素二酸化炭素回収を強調することを選択したことは、驚くことではありません。輸入燃料に頼りながらも、気候変動との闘いを約束しているこの国は、水素技術のパイオニアであり、CCS推進の旗手でもあります。2050年を見据えて、水素は全産業部門からの排出量削減を目指すために選択された燃料です。日本の自動車製造業界は、他の業界のプレーヤーと共に、水素を燃料とする未来へのコミットメントを表明しています。世界の二酸化炭素回収施設は、日本の技術を利用しています。日本はまた現地政府と協力して、輸入用にオーストラリアで水素を製造しています。来年、日本は夏季オリンピックを主催しますが、これはまた水素オリンピックとも呼ばれ、大きな進歩を示すことが期待されています。

他の国々もこれに続いています。英国でも、二酸化炭素回収水素は気候変動対策支持者から多くの注目を集めており、何百万もの企業や家庭の暖房を脱炭素化することが期待されています。他のヨーロッパ諸国でも、複数の水素プロジェクトが進行中。ドイツでは最初の水素燃料列車が運行を開始しています。初期段階のクリーンエネルギー技術を熱心に支援している中国政府は、燃料電池自動車市場を後押しする方法を模索していると目されています。水素はライフサイクル汚染物質をほとんど排出しないため、世界中の都市の大気汚染に取り組む絶好の機会となるでしょう。航空および海運業界では、将来のゼロエミッション燃料になりつつある水素に投資が進められています。

エネルギー転換を支える新しい水素経済は、たった一晩では起こりません。そのためには政府の支援が必要。エネルギー転換への全投資の70%以上が直接政府によるものか、政策によって推進されたものであると、IEAは伝えています。したがって、政策決定者は、エネルギー転換を効果的かつ成功裏に導くために、主導権を取る必要があります。

二酸化炭素に価格を導入することがまだ行われていない国では、それがゼロ炭素経済へのコミットメントを示すために必要な最初の政策メカニズムです。次に政策決定者は、クリーンエネルギー技術のために政府が支援するインフラ展開のそれぞれの選択肢を評価する必要があります。第三に、需要を確立するためのインセンティブメカニズムが不可欠です。

カリフォルニア州の低炭素燃料基準(LCFS)は、州の運輸部門からの排出量を制限するための信用メカニズムであり、ひとつの良い例です。LCFSはつい最近になって修正され、2030年までに州全体で燃料の炭素原単位を20%削減することを目指しています。LCFSでは、二酸化炭素1トン当たり現在約190ドルで取引。SMRを介した炭素回収により水素を製造する企業がクレジットを生み出すと同時に、水素燃料供給能力の展開にインセンティブを提供することで、参入障壁のひとつを取り除いています。カリフォルニア州によるこれらの政策により、米国は水素燃料電池車展開の世界的リーダーとなったのです。

エネルギー転換はまだ始まったばかり。進行は時に落胆するほど遅い中、日本がリーダーシップを発揮するには、タイムリーと言えるでしょう。G20首脳は、水素燃料社会の構築における日本の経験に大いに注目するべきです。大規模な二酸化炭素回収水素施設の建設は、世界的な脱炭素化努力を加速する可能性を開く鍵となるのですから。

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