多様な人材、育つチャンス
Landscape of Tokyo city Image: Getty Images/iStockphoto
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教育・ジェンダー・仕事
世界経済フォーラムでは毎年、世界のジェンダーギャップの状況をまとめています。昨年末に出した報告書では、AIを開発したり使ったりする技術を持った専門職のうち女性が占める割合は22%に過ぎず、格差拡大や、多様性の欠如による技術革新の停滞につながりかねないという内容を盛り込みました。その22%の中でも、管理職は男性が多く補佐的な業務は女性が多いという偏りが見られました。
長年、IT業界で働いてきた実感からすると、20%台という数字に驚きはありません。「STEM」と呼ばれる科学・技術・工学・数学分野の卒業生は男性の方が多く、これまでもソフトウェアエンジニアなどの仕事には男性が多く就く傾向がありました。
それでも数十年と歴史がある分野と比べれば、AIは比較的新しい分野です。つまり「過去の経験が物を言う」度合いが低いのです。今は第4次産業革命と呼ばれる技術の変革期で、一番の推進力であるAIにかかわる人材の需要はますます高まるでしょう。女性を含めて今まで少数派だった人たちにとっては、変革期はチャンスとも言えます。
もちろん少数派が活躍するためには、今ある格差を埋める必要があります。AIの技術革新のスピードは非常に速いので、大学でSTEMの分野を学んだ人でも、スキルを磨き続けなければ技術の進化についていけません。
新しいスキルを身につけるための再教育の機会を少数派により多く与えるなど、意識的に動くことで、格差を縮めることができるのではないでしょうか。こうした仕組みを、企業や国家が作っていけばいいと思います。
フォーラムではAIと倫理についての議論もしており、メンバーの構成員は意識的に女性を多くしています。経歴も判事や起業家など多彩です。社会はどのようにAIを取り込むのが望ましいのか、どんな法整備やガイドラインが必要なのか。こうしたAIのあり方をめぐる議論にも、多様な背景を持った人が参加した方がいいと思います。
残念ながら、ジェンダーギャップは私たちの社会に根強く残っています。それでも少しずつ、変化の兆しが見えています。IT企業も多様な立場の人の声を反映した技術開発を目指し、その情報を公開する方向になってきました。企業の長期的な成長のためには多様性が必要だと、株主や社会が考えるようになったことが背景にあります。
フォーラムがこのタイミングでAIにかかわる人材の男女格差について警鐘を鳴らしたのは、今ならまだ挽回(ばんかい)できると考えているからです。格差の現状や、それが将来的に社会に及ぼす影響を踏まえたうえで、是正できるかどうか。今が「岐路」なのです。
世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子
*本記事は、朝日新聞の記事を転載したものです。同社に無断で転載することを禁じます。 承諾番号「19-0651」
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