1960年代後半のグリーン革命以降、インドはより良いテクノロジーと農業手法を取り入れながら食料自給の実現に向けて大きな飛躍を遂げてきました。しかしながら、インド農家は依然として、適正価格やマーケット情報・知識の欠如や農産物の市場流通性の低さ、非効率的なサプライチェーンなど、まだまだ大きな課題に直面しています。こうした喫緊の課題解決に対応するため、インドのナレンドラ・モディ首相は2020年までに農家収入を倍増する目標を掲げました。

特に第四次産業革命がもたらす新興技術などの技術的なイノベーションには、モディ首相の目標を実現させるためのとてつもなく大きな可能性を秘めています。マッキンゼーの試算によると、インド農業への技術の応用や技術ベースのサービスの適用は、450憶ドル(5兆円超)から800億ドル(9兆円超)の経済的なインパクトをもたらし、9,000万人の農家の所得向上をもたらすとのこと。ただし、最新の世界経済フォーラムの「目的を伴ったイノベーション」報告書が示すとおり、食品セクターにおいては<破壊的技術>の可能性を活用する動きは活発ではありません。

こうした傾向に関わらず、インド農業では技術的な破壊/革新が起きています。革新的なスタートアップ企業が、小規模農家の所得を向上させるだけでなく、環境や栄養にも良い影響をもたらすに既存の農業モデルを破壊しているのです。

例えば、スカイメットサットシュアクロップインなどのスタートアップ企業は、衛星画像を使用してより良いマーケット情報を提供することで効果的な農業リスクマネジメントにつなげています。インド初の酪農技術企業であるステラプスステラプスは、モノのインターネット(IoT)やビッグデータ、アナリティクスを活用し、牛乳製品から農家への支払いまでバリューチェーン全体を網羅しています。ワイクックは、保存料や添加物を使用せず、また冷凍も不要で自然食品の新鮮さや栄養価を保持する画期的な加工方法を利用しています。一方で、マイクロソフトなどの技術のパイオニアは、国際半乾燥熱帯作物研究所 (ICRISAT)と提携して収穫量が30%向上する<インテリジェントクラウド>の提供を開始しました。

インド政府は農業分野におけるイノベーションと起業を促すために複数のイニシアチブを進めています。 イーナショナル・アグリカルチャー・マーケット(eNAM)などの取り組みは、数百万人の小規模農家が農産物を流通させるのに不可欠なオンラインのプラットフォームの役割を担うことを目的としており、これによって食糧バリューチェーンの仲介業者を排除します。近年、インド政府はイノベーションと起業を推進する<農業国家プロジェクト>を発表し、起業農家が資金不足に直面しないことを保証するために「ファンド・オブ・ファンズ」を構築しました。

世界経済フォーラムもまた、第四次産業革命の技術の開発と応用の実現により人類に恩恵をもたらす活動の最前線にいます。第四次産業革命を牽引し影響を与えるインドの可能性を現実のものにするために、世界経済フォーラムは現在、ムンバイでの第四次産業革命センターの設立に向けてインド政府と協力しています。

この新しいセンターの重要なプロジェクトとして、農業用ドローンの開発とマハラシュトラ州における情報サービスプラットフォームの展開に焦点を当てた活動も進めています。このプロジェクトは、世界経済フォーラムの「 ニュー・ビジョン・フォー・アグリカルチャー・イニシアチブ」におけるマハラシュトラ州との6年間の協力関係を築きました。このフラッグシップ・プラットフォームは他州のモデルケースとなっています。この新しいデータプロジェクトは、ドローンやデータの情報プラットフォームを発展させるために、ドローンやIoT、衛星画像などの技術を活用し、マハラシュトラ州のデジタル・分析農業エコシステムの問題を解決するというものです。マハラシュトラ州の1、2地区全体をドローンによりマッピングする計画は、インドで過去最大規模のドローン展開となります。また、小規模農家向けのより正確なマーケット情報や価格予測など、農家のニーズに応えることを目的とした州政府のドローン利用に関する重要政策や調整上の問題に対応する枠組み構築をサポートします。

テクノロジーは、それのみではインド農業が抱える問題すべてを解決することはできないかもしれません。しかし、民間セクターの投資、適切なインセンティブ、州政府の枠組み、そしてイノベーションを促進する環境が融合することで、インドの小規模農家に好影響をもたらす転換の影響を持つと私たちは考えます。