ヘルスとヘルスケア

日本の健康長寿を支えるテクノロジーと人とのつながり

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日本では現在、増え続ける100歳以上の高齢者が、100歳まで健康に暮らせる社会の実現を目指し、テクノロジーを活用しています。 Image: Image: REUTERS/Chaiwat Subprasom (THAILAND - Tags: ANNIVERSARY SOCIETY SCIENCE TECHNOLOGY)

Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
  • 日本では100歳以上の人口が10万人を超える一方、平均寿命と健康寿命の間には約10年の差があります。
  • AIを活用した認知機能チェックや「デジタル同居」などのツールは、セルフケアを支援し、介護が必要となる時期を遅らせることを目指しています。
  • 移動スーパーや定年年齢の引き上げは、高齢者が社会とのつながりを保ち、活動的に暮らすことを支えています。

2026年9月、日本では100歳以上の人口が初めて10万人を超えたことが発表されました。

日本の平均寿命は2022年時点で男性81.05歳、女性87.09歳でした。一方、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約12年の差が存在することが報告されています。65歳以上がすでに人口の約3割を占める中、寿命が伸びても健康上の問題によって日常生活が制限される期間が長くなれば、個人の生活の質だけでなく、医療や介護を支える社会にも影響を及ぼします。そのため、できる限り長く、人生の最後まで健康で自立した生活を送ることができる仕組みづくりが重要です。

また、介護における家族の負担や人手不足の深刻化も大きな課題です。介護が必要となってから対処するのではなく、介護が必要となる状態をできる限り防ぐ予防的な対策が求められています。

こうした背景から、日本ではテクノロジーと社会参加の両面から健康長寿を支える取り組みが進んでいます。

政府主導の基盤整備

内閣府は、大型研究プログラム「ムーンショット型研究開発制度」を通じ、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進しています。10ある目標のうち、目標7が掲げるのは「健康不安なく100歳まで」。100歳以上の人口が2040年までに30万人に達し、医療・介護施設での人手不足がさらに深刻化すると予想される中、100歳まで健康不安なく人生を楽しむための研究を支援しています。「病院を家庭に、家庭で炎症コントロール」など、主要な疾患の予防や克服に貢献し、持続可能な医療・介護システムの実現につながる10件の研究プロジェクトが進められています。

厚生労働省では「保険医療2035」を打ち出し、2035年に向けて保健医療が達成すべき3つのビジョンとして、「保健医療の価値を高める」「主体的選択を社会で支える」「日本が世界の保健医療を牽引する」を提示。効果的なイノベーション環境や情報基盤の構築、人材や財源の確保など、保険医療を支える基盤の整備を進めています。

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テクノロジーによるサポート

企業による健康寿命の延伸を支えるテクノロジーの開発も広がっています。

世帯構成が変化し、複数世代が同居する世帯が減る中、パナソニックは、離れて暮らしていても家族が適度なつながりを保ち、高齢者が安心して暮らせる「デジタル同居」を可能にするシステムの開発に取り組んでいます。遠隔で様々なつながりを可能にするツールを組み合わせ、高齢者のセルフケアを促すとともに、社会参加や生きがいの創出につなげることで、介護が必要となる状況を予防することを目指しています。

セルフケアを支援するツールの一例が、日本テクトシステムズが開発した、手軽に認知機能をセルフチェックできるアプリ「ONSEI Pro」です。タブレットを使い、質問に声で回答するだけでAIが回答者の認知機能を短時間で分析し、可視化します。2026年夏から一部の検診プログラムで導入が始まり、認知機能低下の早期発見への活用が期待されています。

日本では家族が仕事をしながら介護することも多く、こうした状況による経済損失は、2030年には9.2兆円に達すると推計されています。デジタル同居をはじめとした支援ツールは、介護を担う人々の負担軽減とそれに伴う経済損失の削減にもつながります。

社会参加を促進する仕組み

テクノロジーによる支援が広がる一方、高齢者の健康維持における社会参加の重要性にも注目が集まっています。

高齢者の自立した生活を支え、社会とのつながりに貢献するサービスの一例が、移動スーパー「とくし丸」です。近所にスーパーなどがなく、全国で約700万人が日常の買い物に不便を感じていると推計される中、とくし丸はトラックに生鮮食品を含む400品目以上を積み、利用者の自宅近くまで商品を届けています。

この取り組みは、単に商品を届けるだけでなく、買い物を日々の中の楽しみの一つと位置付け、定期的に家の外に出て人と会話する機会を生み出すほか、利用者の「見守り役」としての役割も担っています。とくし丸は現在、全国各地の地域スーパーと提携して北海道から沖縄までネットワークを広げており、こうしたサービスへの需要の高まりを示しています。

働き方も変わりつつあります。日本では60歳を定年とし、その後65歳まで再雇用する制度を設ける企業が多い中、塩野義製薬は2027年度から、65歳以上でも希望する人が正社員として働き続けられる制度を導入しています。

また、明治安田は、定年後の嘱託再雇用の上限を70歳まで引き上げ、さらに2027年度には、個々のライフプランに応じて働き方を選択できる「働き方選択型70歳定年制度」の導入を予定しています。こうした取り組みは、高齢者がこれまで培ってきた経験を生かして貢献し、働くことを通じて社会とのつながりを持ち続ける機会を広げるものです。

テクノロジーと人とのつながりで健康寿命を延ばす

高齢化が進む中、健康で自立して暮らせる期間をできる限り延ばすことが大きな課題となっています。そのためには、介護が必要になってから対応するだけでなく、その前の段階から健康を支える予防的なアプローチが重要です。

テクノロジーは、健康状態の把握やセルフケア、家族や介護者の負担軽減などに重要な役割を果たす可能性がある一方、高齢化がもたらす課題は、技術の進歩だけで解決できるものではありません。人とのつながりや尊厳、社会に参加する機会も、同時に支えていく必要があります。

日本では技術革新と、人を中心に据えたアプローチを組み合わせ、高齢化への対応が進められています。テクノロジーと人とのつながりを両輪とするこうした取り組みは、高齢化が進む世界の国々にとって、一つの示唆となるでしょう。

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