ゼロ金利下限における金融政策の経済への影響を測るのは難しい。2008年以降、中央銀行は政策金利をゼロ近くまで引き下げ、米国、英国、日本での大規模な資産購入や、ユーロ圏での銀行向け長期融資など、さまざまな非伝統的措置を実施した。さらに最近では、欧州中央銀行が預金金利をマイナスに引き下げ、資産担保証券やカバードボンドの購入を開始した。こうした非伝統的措置は、ゼロ近辺に張り付いた主要政策金利には反映されない。
ゼロ金利下限では、他の金融指標が必要となる。私が 最近のワーキングペーパーで論じたように、適切に測定された貨幣指標(いわゆるディビジアマネー)は、その一つである。もう一つの指標は、いわゆる推計シャドー金利だ。米国、英国、ユーロ圏については、 Jing Cynthia Wu and Fan Dora Xiaが、観測されない構成要素を用いたモデルで金利の期間構造の情報を活用し、こうした金利を推計している。政策金利がゼロを大きく上回っていた時期には、推計されたシャドー金利は政策金利とほぼ同じだが、政策金利がゼロに非常に近かった特定の期間には、シャドー金利の推計値はマイナスに転じた。マネーとシャドー金利は相互に結び付いている。私のワーキングペーパーでは、シャドー金利の低下がディビジアマネーの伸びを高め、さらにディビジアマネーの伸びがGDP成長率を押し上げることを見いだした。
7カ月前の投稿で、 Ashoka Mody は米国とユーロ圏のシャドー金利の推計値を示し、ECBは行動しなければならず、また行動できると論じた。それ以降、ECBはいくつもの金融政策措置を発表している。より最近のシャドー金利の動向を見てみよう。
政策金利と推計シャドー金利(%)

出典:シャドー金利はJing Cynthia Wuのウェブサイト、政策金利はECB、イングランド銀行、米連邦準備制度理事会。
この図は、ECBがFRBやイングランド銀行に比べ、はるかに緩和度の低い金融政策を実現したことを示唆している。最近の措置(マイナスの預金金利、新たな長期資金供給オペ、一部の資産購入)によって推計シャドー金利はマイナスになったものの、量的緩和が終了した後でさえ、2013~14年の米国と英国について推計された約マイナス3%のシャドー金利より、なおかなり高い。
ユーロ圏の足元のインフレ率(2014年11月に0.3%)も、予想インフレ率(この点については Silvia Merlerの投稿 を参照)も、米国と英国のインフレ率を大きく下回り、2%も大幅に下回っている。したがって、ECBが行動すべき強い根拠がある。 Ashoka Mody の言うとおり、ECBは再び対応が大きく後手に回っている。
私がグレゴリー・クレイズ、シルビア・マーレル、グンター・B・ヴォルフと今年5月にまとめた 政策提言 で論じたように、大規模な量的緩和策はユーロ圏でも効果を発揮し得る。まずは欧州債務の購入が有効だろう。現在、EFSF、ESM、EU、EIBの債券で約4,900億ユーロの適格な購入対象がある。
共同掲載: Bruegel
著者:ハンガリー国籍のZsolt Darvasは、2008年9月にBruegelの客員フェローに就任し、2013年9月からシニアフェローに任命された。
画像:2014年8月7日、欧州中央銀行(ECB)本部の隣にある巨大なユーロのロゴ。REUTERS/Ralph Orlowski。



