マレーシア科学アカデミーの研究によると、東南アジアで自然を保護すれば、地域全体で雇用を創出し、富を生み出せる可能性がある。
科学者らによると、今、自然に投資すれば、最大で年間2兆1,900億ドルという大きな経済的・環境的リターンが見込まれる。
この研究は、生物多様性を守る方法を探る画期的な国連会議、COP15を前に発表された。
東南アジアの森林と海の生物多様性を守るための対策に投資すれば、2兆1,900億ドルを超える価値の便益を生み出し、気候変動を緩和できる可能性がある。マレーシア科学アカデミー(ASM)が発表した新たな研究による。
その成果は、今、100億ドルを投資すれば実現でき、2030年までに投資額を460億ドルに増やすとよいと、Eco-Businessは伝えている。研究の著者らは、雇用創出、所得向上、より持続可能な環境によって得られる可能性のある見返りに比べ、投資額はごくわずかだと指摘する。
「東南アジアは地球上でも生物多様性が極めて豊かな地域の一つであり、世界で最も広大かつ多様なサンゴ礁とマングローブ林を擁しています」と、ASM会長のアスマ・イスマイル名誉教授(ダトゥク・ドクター)は報告書で述べた。「これらが国家主権に関わる大きな価値を持つ国の宝であるという事実に、私たちは目と心を開かなければなりません。」
しかし、こうした宝は世界各地で脅威にさらされている。国連は、自然が劣化し、種の絶滅がかつてない速度で進んでいると警告している。
ASMの研究は、生物多様性の喪失が重大な経済リスクにつながり得ることを示す一方、次のように述べている。「別の視点から見ると、世界各地の国や地域には、生物多様性の保全を進め、自然のインフラに投資する大きな機会がある。……それは開発、雇用創出、社会経済的成長につながる。」
海の保全
研究者らは、この点を裏付ける地域の自然保護プロジェクトを取り上げている。一例は、カンボジア東部のケオ・セイマ野生生物保護区だ。ここはブノン族の先祖伝来の地であり、アジアゾウやオオトキなど、絶滅の危機にある40種を超える生物の生息地となっている。
この地域のプロジェクトは、森林伐採の抑制と排出量の削減に成功したほか、法執行、地域のパトロール、自然保護、エコツーリズムの分野で449人を雇用し、地域住民の所得を増やした。
東南アジアの豊かな海洋環境を守ることは、経済的な利益にもつながる。ASMが例に挙げるのは、マレーシアのトゥン・ムスタファ海洋公園だ。ここには250種を超えるサンゴ礁と、ウミガメやザトウクジラなど、絶滅の危機にある動物を含む400種類の魚や動物が生息している。
各国ごとの調査が必要
乱獲を防ぎ、海域の生物多様性を守るため、公園は区域に分けられている。大規模な商業漁業が許可されているのは一つの区域のみで、ほかの区域では漁業が禁止されるか、伝統的な方法だけが認められている。
国連によると、こうした対策は地域経済を活性化し、沿岸地域の住民の所得を増やし、雇用を生み出し、食料安全保障を改善した。公園のウミガメに安全な生息地を提供する取り組みは観光客も呼び込み、沿岸住民にさらなる収入をもたらしている。
ASMは、WWFが自然に付与した世界全体の価値のうち、東南アジアが占める割合を算出し、地域全体の経済的便益を推計した。WWFによる自然の世界全体の価値は125兆ポンドとされる。
研究には参加していない、ノッティンガム大学マレーシア校の非常勤講師、テックウィン・リム博士は、さらに詳細な研究が必要だと述べる。「より実行に移しやすくするには、国ごとに取り組む必要があります。国々は互いに大きく異なり、ラオスからシンガポールまで幅があります。」
国連の生物多様性協議
この研究は、2022年12月にモントリオールで閉幕するCOP15(国連生物多様性条約締約国会議)を前に発表された。この会議では、生物多様性保全に関する国際目標で合意することを目指しているが、進展は遅れていると、International Business Timesは報じている。
複数のNGOやキャンペーン団体は、政府の支援不足により会議は危機に陥っているとする公開書簡を発表した。「交渉は停滞しています……今、私たちには選択肢があります。このプロセスを成り行きに任せ、従来どおりのやり方を支持して地球を破滅の瀬戸際へ追い込むのか、それとも今この時に求められるリーダーシップを発揮するのか。」
ASM研究の著者らは、自然保護はもはや単なる「あれば望ましいもの」とは見なせないと指摘する。また、東南アジアには、繁栄と生物多様性の向上を両立させる世界的な模範となる可能性がある。




