世界経済の不確実性が高まるなか、リーダー、とりわけCEOは前例のない課題に直面しています。
組織が成長を遂げるためには、市場における自社の立ち位置を正しく理解しなければなりません。
新たなアプローチは、独自の組織能力を構築する方法を示すものです。
市場は混雑し、業界の力学は絶えず変化しています。価格圧力や景気後退の予測もあります。そして生成AIと、現代における最大規模の資本再配分が進んでいます。
現在、リーダーが直面する課題は数多くあります。では、CEOは経済の混乱を乗り切り、不確実性のなかで戦略を策定し、競合他社との差別化を図り、成長を実現するにはどうすればよいのでしょうか。その答えは、自社の「スーパーパワー」を見出すことにあります。
言い換えれば、CEOは、他社よりも一貫して優れた成果を上げられる組織能力を特定します。それは価値を生み出すだけでなく、同業他社との競争上の優位性をもたらすものです。そして、その能力を構築していくのです。
例えば、Progressive Insuranceは、自動車保険における分析ベースの価格設定で広く高く評価されています。また、Netflixは「自由と責任」という文化で知られています。さらに、Danaherは、Danaher Business Systemで知られています。
これらの企業、そして「スーパーパワー」で知られる他の企業に共通するのは、人材、プロセス、テクノロジーが交わる領域に位置している点です。これらの組織は、優れた成長を実現するために、組織能力を体系的に特定し、長期にわたって構築してきました。時には、競合他社を完全に飛び越えることもあります。
CEOは、自社の潜在的なスーパーパワーをどのように見出せばよいのでしょうか。
私たちは数千人のリーダーや組織と協働するなかで、CEOが独自の組織能力を設計・構築するための道筋、すなわちVECTORを描くのに役立つアプローチを見出しました。VECTORの要素は次のとおりです。
Vビジョンとリーダーシップ:最も成功しているCEOは、自社が何で知られるべきかについて野心的な構想を持ち、その取り組みに全面的に身を投じています。
E従業員:スーパーパワーを備えた組織は、人材とタレントに関する包括的な仕組みを構築し、持続的な成長を確かなものにしています。実際、強固な人材・タレント戦略の策定は、企業が取りうる最も価値の高い施策の一つです。したがって、組織能力を強化するうえで、CEOが最優先すべきはテクノロジー人材の確保です。
C文化とマインドセット:能力を構築または強化する際には、マインドセットの転換が必要です。例えば、新規事業の構築においてスーパーパワーを生み出している企業は、通常、マインドセットを転換し、時折生じる失敗を受け入れ、試行錯誤を通じて成長しています。
Tテクノロジー:人的資本とテクノロジー、データ、AIの組み合わせは、あらゆる組織能力の中核に据えなければなりません。
O組織:新たな能力を構築する際、企業はSWATチームやパイロット・プログラムといった一時的な枠組みに頼ることはできません。なぜなら、能力が成長し、繁栄できるよう、明確な役割、責任、説明責任を確保する形で組織構造と業務の進め方を設計・構築しなければならないからです。能力の成長と発展を可能にする。
Rルーティン:極めて重要なのは、組織のあらゆる要素(プロセス、ツール、製品、サービス)において、継続的な改善を習慣化することです。先進的な企業は、スーパーパワーを、絶え間なく実践される技能のように扱い、世界トップレベルのコーチングを通じて、品質と成果を継続的に高めています。
企業はVECTORのアプローチを理解すると、それを活用して自社の取り組みと資源を一致させることができます。
例えば、数年前に協働した小売業のクライアントがあります。業界リーダーとしての長く輝かしい歴史を持つ一方で、COVID-19パンデミックの最初の困難を乗り越えた後、明確な成長の道筋を欠いていました。市場の分断が進み、新たな競合が現れたことで、同社が競合との差別化を図ることはさらに難しくなっていました。
CFOは分析主導の価格設定を好機と捉え、最終的に組織は変革の道のりに着手しました。その結果、先進的な分析能力を構築し、価格設定業務を集中化し、商品政策(マーチャンダイジング)の進め方を大きく変えることができました。また、同社は、この新たな働き方が持続するよう、数百人の従業員の再教育を行い、資格を付与しました。
初年度において、小売業者の分析ベースの価格設定というスーパーパワーにより、数億ドル規模の利益率の拡大がもたらされました。そして、この組織能力により、同社は現在もなお価値を創出し続けています。
VECTORのアプローチを活用することに加え、CEOにとって優先順位を明確にすることも極めて重要です。冒頭で述べたとおり、リーダーが直面する課題や機会は数多く存在します。そのため、リーダーはまず、自社の業績を真に高めるスーパーパワーを一つ特定しなければなりません。私たちの経験では、それを確実に成し遂げた企業は、他社と一線を画し、その地位を維持しています。


