起業家精神は、世界各国における海外投資と成長の重要な原動力である。
起業家経済の競争が激化し、グローバル化が進むなか、海外投資をめぐる競争はかつてないほど激しくなっている。
これに対応するため、各国は自国のスタートアップ業界の内情に精通した専門の投資促進機関(IPA)を設立すべきだ。
歴史を通じて、起業家精神は一貫して経済成長の原動力となってきた。国や文化を問わず、これは変わらない。
テクノロジーの進歩とグローバル化に伴い、起業家精神は新たな局面を迎えた。起業家は今や、アイデアを実行に移し、これまで以上に速く、より広い地域へと事業を拡大している。
こうした革新的なプロジェクトの多くは、世界、国、地域の経済に大きな影響を与えている。国境を越えて広がり、何十億もの人々の日常生活に影響を及ぼす、グローバルなスタートアップ・エコシステムを形成している。
グローバル化するスタートアップの急成長
電子商取引のスタートアップは、世界中の中小企業に市場への参入機会を広げ、グローバルな消費者層へのアクセスを支援している。クリーンテックのスタートアップは、ほぼすべての産業で環境基準を定めるうえで重要な役割を果たし、ネットゼロ排出などの世界目標に向けた変革を加速させている。電動モビリティ技術、シェアリングエコノミーのモデル、スマートシティの導入も、都市インフラの持続可能な発展に欠かせない。
世界規模の影響力を持つスタートアップは、海外投資家から多額の資金を集めるようになっている。グローバル展開を目指すスタートアップの台頭は、世界の海外直接投資(FDI)の流れに大きな影響を及ぼしている。
テクノロジー、モビリティ、バイオテクノロジーなど、分野を問わず、スタートアップは今や国が海外投資家に提示する価値の中核を担っている。FDIを誘致するには、各国が自国のスタートアップ・エコシステムと提供価値に本腰を入れて取り組み、それを世界に売り込む必要がある。だからこそ、投資促進機関(IPA)はこれまで以上に重要だ。
IPAは自国のスタートアップ・エコシステムを熟知し、次の進出先を探している急成長中のグローバル・スタートアップに常に目を配る必要がある。
IPAはスタートアップと投資家を結ぶ仲介役を担うことができ、またそうすべきである。特に、世界中で価値を生み出すスタートアップを探すグローバルな投資コミュニティとの橋渡しが重要だ。したがって、スタートアップがIPAと連携し、そのグローバルネットワークを通じて海外からの資金や投資にアクセスすることも同じく重要である。これにより、IPAはスタートアップの戦略的パートナーとなる。
IPAは国際競争力のあるスタートアップ・エコシステムを構築し、維持するため、官民双方の関係者と緊密に連携すべきだ。人材層の形成だけでなく、大学から生まれたアイデアを実行に移す場としても、産学連携をさらに支援する必要がある。
IPAの取り組み
トルコを例に挙げよう。トルコのスタートアップは2011年から2021年に23億ドルの資金を調達し、同期間のイグジットとセカンダリー取引は64億ドルに達した。初期段階の投資額は年間平均1億~1億5,000万ドルだったが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにもかかわらず、2021年には16億ドルへと急増した。この成長の勢いは2022年も続き、第1四半期には12億ドルを確保した。
海外投資家は、こうした資金調達やイグジットに多額の資金を投じてきた。エコシステムに資本が再投資される雪だるま効果により、トルコには今やロンドンからニューヨークまで消費者に知られるユニコーン企業やデカコーン企業が複数ある。従来型のセクター別投資スキームとは異なり、10年前には同国のスタートアップ・エコシステムがほぼ存在しなかったことを考えれば、これは非常に目覚ましい成果である。
さらに、成長段階にあるスタートアップは、事業を拡大し、本来の可能性を発揮するために、大規模なグリーンフィールド投資を行う。多くは創業当初から世界市場を視野に入れており、他国に投資する可能性を持つ。投資先では資本を投入し、知識や技術を移転し、雇用を生み出す。いずれも従来型のFDIプロジェクトが経済にもたらす典型的な便益である。ベンチャーキャピタル(VC)の支援を受けるスタートアップは、世界各地でグリーンフィールド・プロジェクトへの投資を増やしている。
海外のVCは地元のスタートアップに資金を投じると同時に、国内の投資家、企業、銀行、富裕層にも、同じスタートアップやエコシステム内の他の企業への投資を促す。これにより投資家ネットワーク間の連携が強まり、スタートアップは高い収益が期待できる主要な資産クラスとなる。また、企業には主に2つの利点がある。スタートアップへの投資によって各業界の最先端技術を活用できるほか、事業を多角化し、既存のビジネスモデルを補完し得る新たな異業種へと転換することも可能になる。
IPAがもたらす変化
例えば、トルコ共和国大統領府投資局は、さまざまな形でこの対話を促進している。第一に、ファンドマネジャーやゼネラル・パートナーがVCを容易に設立できるよう、トルコのIPAは法令の改善・更新や、政府が有限責任組合員(LP)としてファンドに資金を拠出できるようにするための政策提言活動を行ってきた。投資家に配慮した法制度とIPAの積極的な関与が相まって、国内のエンジェル投資家ネットワークの発展に大きく寄与した。
第二に、トルコの投資局は、限定的なロードショーを開催し、個別面談を設定することで、国内のVCと海外のLPを結び付けてきた。
第三に、海外のVCをトルコに招き、現地のスタートアップ・エコシステムへの理解を深めてもらってきた。スタートアップは成長するにつれ、継続的に追加資金を必要とする。そのため、各社の事業分野を手がけるプライベート・エクイティ・ファームとの連携により、成長段階で飛躍的な進展が可能になった。こうした取り組みを通じ、トルコのIPAは国内スタートアップの成長に実質的な変化をもたらしてきた。このモデルに他国も注目すべきだ。
景気後退に直面するグローバル化した世界では、切望されるベンチャーキャピタル資金をめぐるスタートアップ間の競争は、今後さらに激化する一方だ。
すべての国、とりわけ大きな可能性を秘めながら国際的な注目が比較的少ない途上国にとって、専門のIPAは有用なだけでなく、国内のスタートアップ・エコシステムを拡大するうえで欠かせない存在である。

