コンクリートに囲まれた交通の要衝として知られるバルセロナの一角、にぎわうサンツ駅からすぐの広場が、のどかな遊び場に生まれ変わった。
日差しを遮る天蓋の下、鮮やかな色彩の民族柄のクッションや敷物が広がる場所で、子どもたちは木片など大小さまざまな自然をモチーフにしたおもちゃで遊び、親たちはその様子を見守っている。
この期間限定の遊び場は、2014年に設立された地元の非営利団体タタ・インティが主催する「アーバン・フォレスト」事業の一環だ。同団体は6歳未満の子どもに教育を提供している。
政府の資金援助を受ける同団体は、「幼い子どものケアを民主化し、可視化するとともに、公共空間を人々が集う場所として取り戻す」ことを目指していると、タタ・インティの共同創設者メルセ・アランダ氏は語った。
アランダ氏はトムソン・ロイター財団に対し、今後数カ月にわたりバルセロナの8地区で催しを開くアーバン・フォレスト事業では、低所得世帯に無料の遊びの機会を提供すると語った。
この事業は、市当局が2015年に始めた、バルセロナを子どもにより優しい都市にするための2,070万ユーロ(2,390万ドル)の取り組みを推進している時期に実施される。
計画では、来年末までに新たな遊び場を89カ所整備し、既存の150カ所を改修する。年齢の異なる子どもや障害のある子どもが、より利用しやすく、受け入れられる場にすることが狙いだ。
この意欲的な計画の根底には、従来型の遊び場の枠を超えた場所をつくり、より自由で自然な遊びや身体活動の機会を提供したいという考えがある。
子どもに優しい都市
世界各地で急成長する都市は、犯罪、交通、公害、狭い居住環境、社会的孤立など、都市生活の圧力から子どもを守るよう求められている。
国連の子どもの権利機関であるユニセフによると、世界の都市部に暮らす40億人のうち、ほぼ3分の1は子どもだ。2050年までに世界の子どもの70%が都市部で暮らすようになると、同機関は推計している。
ユニセフによると、子どもの健全な発達はあらゆる社会の幸福に欠かせず、それが損なわれた場合の代償は大きい。幼少期の経験が将来の達成に影響するためだ。同機関は世界規模の子どもに優しい都市イニシアチブを運営している。
米デューク大学が2016年に発表した研究によると、人口密度の高い都市部では社会的結束が弱まり、犯罪率が高まることで、他人には聞こえない音が聞こえたり、見えないものが見えたりするなど、子どもの精神病性症状が増加する。
外へ出て、街を歩く
都市計画担当者は、子どもが自力で移動できるようにし、屋外で自然に触れて過ごす時間を増やすことで、日常の観点から子どもにとってより良い都市をつくる方法を模索し始めている。
世界的なエンジニアリング企業アラップは、今年初めに発表した都市での子ども時代のデザインに関する報告書で、独立移動、つまり大人の付き添いなしに子どもが街を移動できるかどうかは、道路の横断箇所、安全に対する認識、そして遊びや活動の場所が近くにあり、利用できるかどうかに左右されると述べた。
子どもが楽しく利用でき、子どものためになる移動経路や活動のネットワークを提供できる都市を考えるには、柵で囲まれた遊び場の枠を超える必要があると、英国を拠点とする研究者・著述家のティム・ギル氏は語った。同氏は以前、ロンドン市長に子どもに優しい都市計画について助言していた。
子どもたちはさまざまな種類の場所で遊ぶ、と同氏は指摘した。「ですから、遊びが機能の一つではあっても、それだけが目的とは限らない公共空間をどう設計できるか、もっと創造的に考えましょう」と語った。
アラップによると、子どもを念頭に設計された都市では、交通量が減り、歩道の拡幅、多機能な遊び場、特定の地区で車の通行を制限するバルセロナの「スーパーブロック」制度のような新しい仕組みなど、より適切なインフラが整備される。
シンガポールでは昨年、子どもに優しい新しいバス停が開設された。ブランコやアート作品、子ども向けの本、屋上庭園、十分な座席に加え、電子書籍やデジタル地図などのオンライン情報も利用できる。
政府が地元企業DPアーキテクツと考案したこの事業が成功すれば、当局はジュロン地区からシンガポールの他地域へと拡大する計画だ。
2018年5月16日、スペイン・バルセロナのサン・アントニ地区で、交通が制限された新設の「スーパーブロック」区域をキックボードで走る子どもたち。トムソン・ロイター財団/ソフィー・デイヴィス
リスクを受け入れる
自然の中で遊び、人工的な環境とは異なる場所でリスクを冒し、ときにはけがをすることもある「自然空間」や自由な遊び場を取り入れ始めた都市もある。
批判する人々は、1970年代以降の遊び場設計は健康と安全を重視しすぎたため、子どもが新しいことに挑戦したり、自分で発見したりするのを妨げ、創造性を抑え込む画一的な施設につながったと指摘する。
森の学校や自然空間といった新たな取り組みは、そうした状況を変えることを目指している。オランダ・ロッテルダムの「ネイチャー・プレイグラウンド」では、子どもたちは田園地帯にいるかのようにキャンプをし、火をおこし、隠れ家をつくることができる。
専門家によると、決められた構造のない屋外遊びは、子どもの問題解決能力、集中力、自制心を伸ばし、他者とうまく付き合う力を高めることで、より健康で幸せな暮らしにつながる。
しかし、豊かな国々では子どもが屋外で過ごす時間が減っていることを、複数の研究が示している。
英国ナショナル・トラストが2016年に実施した調査によると、英国の子どもが外で遊ぶ時間は、親世代の半分にとどまる。
ギル氏によると、発展途上国でも同じ傾向が見られ始めている。
「貧しい国々で中間層が拡大するにつれ、子どもたちの暮らしはより制約され、子どもの自由を心配する声も大きくなっています」と同氏は語った。
その一因として、裕福な家庭はゲート付きの住宅地に住む傾向があると、同氏は付け加えた。
子どもを「閉じ込めて」育てるのではなく、ささやかな自由を与えることは子どもにとって良いだけでなく、地域全体の健全さを示す点で、より広く社会にとっても良いことだとギル氏は語った。
「そうした地域は、高齢者や障害のある人を含む、より幅広い人々にとっても暮らしやすい場所になります」と同氏は説明した。
英国では、「プレイング・アウト」運動がここ数年で勢いを増している。決まった曜日に数時間、道路を車両通行止めにして子どもが自由に遊べるようにする取り組みで、ブリストル市から全国へと広がっている。
異なる社会階層や民族的背景を持つ子どもたちが定期的に一緒に過ごせるようにすることも、地域の緊張を和らげるとギル氏は語った。
「そうした子ども時代の経験は、都市をより良く、より人々が親しみ合える場所にし、住民が自分たちの街に心地よさを感じられるようにします」と同氏は付け加えた。




