建築環境のレジリエンスを高める6つの方法

Clouds are reflected in the Midi Tower, the headquarters of the National Pensions Office, in downtown Brussels in Belgium June 21, 2015. Picture taken June 21. REUTERS/Charles Platiau TPX IMAGES OF THE DAY - GF10000135833
There is no greater impact we can have on a building’s overall performance than its design.Image: REUTERS/Charles Platiau
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この1年で見られた現象の一つは、気候変動対策の動きが、都市、州、企業が主導するものへと移行したことです。この重要な取り組みには国や多国籍組織のリーダーシップが必要ですが、都市、州、企業が積極的な行動に乗り出しているのは、実際には好ましい兆しです。過去を振り返ると、「ボトムアップ」の取り組みが国の政策に取って代わることは珍しくありません。実務的な観点では、こうしたボトムアップの取り組みはより迅速に実施でき、さまざまなアプローチによってベストプラクティスの確立への道が開かれます。

実際、幅広い存亡に関わる課題に対するボトムアップのリーダーシップは、米国の発展において目新しいものではありません。夏の旅行や定期的な休暇に出かけるとき、私たちは一般に、速度制限法を連邦州間高速道路と結び付けて考えます。しかし、安全のための速度規制を最初に導入したのは、実際には都市や州でした。

20世紀初頭、自動車の保有台数の伸びは、街灯や道路標識の設置を含むインフラ投資の伸びを上回りました。増加する交通事故を抑えるため、ニューヨーク市とコネチカット州は1900年代初頭、全米で初めて交通規則を制定しました。その後30年間で、ほとんどの州が同様の速度規制法を制定し、連邦高速道路に速度制限が設けられる道筋をつくりました。こうした例をはじめ、多くの前向きな変化は、都市や州の革新的なリーダーたちによってもたらされてきました。

過去のこうしたボトムアップの動きが、自動車の安全性に対する国民の意識を変える一助となったように、今日、私たちは気候変動問題に取り組むため、革新的な取り組みを進める市長、州知事、企業リーダーの姿を目にしています。変化を生み出すには、まさにこのようなリーダーシップが必要だと確信しています。国や多国籍組織の政策が、こうしたリーダーたちから学んだことを踏まえたものになるのは間違いありません。

ほんの数週間前、カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウン氏はサンフランシスコで「世界気候行動サミット」を主催しました。各州、都市、大学、都市が、米国の低炭素社会の実現に向けた誓約を改めて表明しました。同じイベントで、中国とカリフォルニア州の政府代表は気候変動に関する協力協定に署名し、温室効果ガス排出削減目標の共同達成に向けて中国がカリフォルニア州と連携できる方法を探ることになりました。

中国とカリフォルニア州の協力協定は、州政府の影響力が高まり、従来は動きの遅かった中国のような国々が気候変動対策に真剣に取り組むよう後押ししていることを示しています。

実際、このようなボトムアップの取り組みは増えています。先月、米国の州知事17人からなるグループが、排出削減を目指す環境政策を通じて気候変動に対処する同盟を発表し、電気自動車を支えるために必要なインフラの整備に140万ドルを拠出すると表明しました。この夏には、都市住民1億3,000万人を代表する世界の19都市が、2030年までに建設されるすべての新築建物をカーボンニュートラルにするとの宣言に署名しました。

これは好ましい前進です。

こうした取り組みは、レジリエンスの事業上の価値を認識し、カーボンニュートラルな未来を目指す企業コミュニティが長年進めてきた行動にならうものです。民間部門は、2015年のパリ協定に示された目標の達成を後押しする、科学的根拠に基づく排出目標の設定に取り組んできました。また、環境配慮型のポートフォリオを持つ企業への社会的責任投資を行い、事業運営やデザインをより「グリーン」にする改修も進めています。

Genslerでは、クライアントや同業者の手本となり、デザインを学ぶ学生がよりレジリエントな建築環境を思い描けるよう促すことが、私たちの世界的な責任だと考えています。第3回年次報告書「デザインが生むインパクト」を本日発表し、温室効果ガス約1,100万トンが毎年大気中に排出されるのを防ぐよう設計された、総面積12億5,000万平方フィートのプロジェクト実績を紹介しています。デザイン戦略と、気候変動への取り組み方を変える変革的な実践の採用を含む、より一層のレジリエンス計画の必要性を訴えています。

報告書では、気候変動の影響に対するレジリエンスを高めるうえで大きな可能性があるとリーダーたちが考える、6つの重要な方法を取り上げています。

1:都市と建物の新しい形を試す

デザイナーとして、建物全体の性能に対し、デザイン以上に大きな影響を与えられるものはありません。レジリエントなデザインを実現するには、技術、立地、向き、その他の要素について、実験的な試みに心を開く必要があります。北京にあるハルビン銀行本店の設計では、高性能のファサードシステムと自動ブラインドを組み合わせ、冷房と日射をより適切に制御しています。その結果、夏季のエネルギーを50%削減し、熱損失を32%低減しました。

2:建物に環境負荷の小さい素材を選ぶ

建物のライフサイクルでは、素材の製造、輸送、組み立てに、ほかのどの段階よりも多くのエネルギーが使われます。テキサス州のファースト・ユナイテッド銀行の事例に見られるように、私たちのポートフォリオではこの点を重視しています。設計では、再生可能な木材構造を活用して二酸化炭素190トンの排出を相殺し、長期的な影響に焦点を当てています。その結果、建物の効率は規定基準を42%上回ります。

3:既存の建物を改修して性能を高める

米国だけでも、現在、人口の80%超が都市部に暮らしています。建物を取り壊さずにエネルギー性能を最適化できる機会があれば、それが理想的な解決策です。利用者の体験と性能の両立というGenslerの理念を象徴するプロジェクトの一つが、ボストンのワン・ポスト・オフィス・スクエアです。単一用途の商業オフィスビルを新たな複合用途の施設へと転換するにあたり、元の建物の素材の50%超を再利用し、ボストンの建築基準と比べてエネルギー消費を32%削減することが見込まれています。

4:エネルギーを削減し、調達する

運用時のカーボンフットプリントを全体として最小限に抑えるには、エネルギーの削減と創出の両方が必要です。エネルギーは敷地内でも、電力網を通じても供給されます。スマート電力網を利用できない市場もまだありますが、デザイナーは敷地内の再生可能エネルギー技術を活用してエネルギーを生み出せます。カリフォルニア州立大学ノースリッジ校のサステナビリティ・センターの屋上では、太陽光発電システムと「昼光自律型」の照明設計を採用し、必要なエネルギーを補うとともに、日中の人工照明を不要にしています。

5:水を考慮して都市と建物を設計する

沿岸都市に建つ個々の建物の設計者は、水による損傷に耐えられる耐久性の高い素材の使用を検討することが不可欠です。また、都市計画担当者は都市の設計を見直し、運河や専用の湿地が海水の流入を抑えるうえでどのように役立つかを考えるべきです。Genslerがマイアミを対象に提案した海面上昇に関する調査案の一つでは、掘割と盛土で整備する一連の運河を通じて、水を浸水対策済みの区域へ導くことを提案しています。これは、水を締め出す考え方から、洪水を管理する考え方への転換に役立ちます。

Image: Gensler-デザインが生むインパクト報告書 2018

6:リアルタイムデータを活用して性能と体験を高める

革新的な技術システムがリアルタイムの状況に応じて作動し、建物の利用者がより直接的に制御できるようになれば、性能と人々の体験を向上させながら、必要なエネルギーを大幅に削減できる可能性があります。ジョンソン・コントロールズのアジア太平洋地域本社では、昼光に応じて調光するインテリジェント照明システム、在室センサー、自動ブラインドを活用し、性能を最適化するとともに、水使用量を42%、エネルギー使用量を44%削減しています。

人を中心に据えたこうした戦略を全面的に統合することで、私たちはプロジェクトが世界に良い影響をもたらすよう設計されていることを確かなものにできます。Genslerの私たちは、地域のリーダーたちと協力し続けながら、企業や都市をつくる人々の手本であり続けなければなりません。トップダウンでもボトムアップでも、デザインは、今後何年にもわたってレジリエントで健全なコミュニティの形成を支える中心的な役割を担うと、私たちは確信しています。

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