深層地理学

社会のレジリエンスを高める、コミュニティによる家族支援

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共働き世帯の増加に伴い、子どもたちが家庭の外で過ごす時間が長くなり、その生活は変化しつつあります。 Image: REUTERS/Manami Yamada

Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
  • 日本では共働き世帯が増加し、多くの家庭で両親が家の外で働くようになっています。
  • こうした変化により、子どもたちが家庭の外で過ごす時間も長くなっています。
  • 日本では、この状況に対応するため、家庭への支援を強化するとともに、地域社会の中で子どもたちが安全で充実した生活を送れる環境づくりが進められています。

核家族や共働きの増加などにより家庭環境が変化する中、日本では子育て家庭の支援のあり方も大きく変わりつつあります。近年は、政府や自治体だけでなく、企業や地域コミュニティが連携し、コミュニティで子どもを支える取り組みが広がり、働く家庭を支えるだけでなく、社会全体のレジリエンスを高める重要な基盤として注目されています。

2025年、日本の総務省統計局が公表した労働力調査の年次結果によると、日本では共働き世帯の増加が続いており、労働市場や家族のあり方に構造的な変化が起きていることが明らかになっています。同調査によると、共働き世帯数は1,300万世帯となり、前年の1,278万世帯から22万世帯増加しました。一方、専業主婦世帯数は508万世帯にとどまり、共働き世帯はその約2.6倍に達しています。また、共働き世帯の約60%が子どもを持つ世帯であることが報告されています。

共働き世帯が増えている一方、日本では共働き世帯の女性がパートタイムで働いている割合が比較的高いという特徴があります。夫婦ともに週35時間以上のフルタイムで働く世帯が496万世帯であるのに対し、妻がパートタイムで働いている世帯は536万世帯と、それを上回っています。一方、勤務形態にかかわらず、子どものいる家庭で共働きが一般化しつつあることは、日本社会における子育て環境の変化を象徴しています。

こうした変化と同時に、子どもを取り巻く環境も大きく変わりつつあります。携帯電話やソーシャルメディアの普及など社会環境の変化に加え、親の就労時間の増加により、子どもが家庭外で過ごす時間も長くなっています。そのため、子どもの安全を確保しながら健やかな成長を支える新しい支援の仕組みが求められています。こうしたことを背景に、日本では子どもたちを安全に育む取り組みとして、政府や自治体、企業が地域社会と連携し、コミュニティで子育て支援に取り組む方法に注目が集まっています。

進化する学童サービス

その代表的な取り組みが、放課後に小学生を預かる公営および民営の放課後児童クラブ(学童保育)の拡充です。共働き世帯の増加に伴い、小学生を対象とした放課後児童クラブへの登録者数は年々増加しています。2024年度の登録児童数は、対前年50,693人増の1,570,645人となり、過去最高を記録しました。一方、待機児童は16,330人に達し、定員不足や受け入れ体制の確保は、多くの自治体にとって依然として大きな課題となっています。

こうした状況を受け、子供家庭庁は2025年12月、待機児童の解消を目指す「放課後児童対策パッケージ 2026」を発表。女性の就業率の上昇などを踏まえ、放課後児童クラブの登録児童数は2030年頃に約165万人でピークを迎えると見込まれており、政府はその受け皿の確保を進めています。企業や地域の資源を活用し、小学校外でも子どもを預かる新たな仕組みを創出することを、柱の一つとしています。

企業による学童サービスの提供はすでに全体の約12%を占めており、今後さらに拡大するとみられます。その一例が、2024年4月に熊本市東区の健軍商店街に開設された学童保育『アフタースクール学Do健軍校』。この施設は、地域の体操教室が運営し、活気が失われつつある商店街の活性化も視野に入れて設立されました。地域企業が提供する体験プログラムなどを通じ、子どもと地域の交流を促進しており、放課後だけでなく長期休暇の預かりにも対応しています。こうした取り組みは、子どもの成長を支えると同時に、地域コミュニティのつながりを再生する役割も果たしています。

また、大手企業による新しい形の学童サービスも登場しています。教育サービスなどを提供するベネッセが運営する学童施設では、高齢者介護施設に併設することで入居する高齢者と子どもたちが交流する機会を設けています。また、オンライン社会科見学など、公営の学童では提供することが難しいプログラムを提供するなど、新たな学びや体験を子どもたちにもたらしています。

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テクノロジーを活用したコミュニティによる見守り

テクノロジーを活用した地域単位での見守りの取り組みも広がっています。東京都品川区では、国公立小学校に通う児童を対象に、GPSと通話機能付き防犯ブザー「まもるっち」を無償で貸与しています。このデバイスは、児童が困ったときにブザーを引くことで品川区役所に設置されている「まもるっちセンター」と通話ができるシステムになっており、内容に応じて保護者や学校の先生、地域協力者、生活安全サポート隊、警察に通知される仕組みとなっています。この取り組みは2005年に始まり、通信企業KDDIが開発に関わりながら、利用者のフィードバックをもとに機能の改善が続けられてきました。

同様に、自治体、企業、地域住民が連携して子どもを見守るサービス「otta」も、全国に広がっています。このサービスでは、専用の受信機を通じ、「見守りスポット」や「見守りタクシー」などを通じて子どもの位置情報を把握し、地域全体で子どもの安全を支えるネットワークを構築しています。同サービスを導入した長崎県島原市では、小学校低学年児童の9割が利用しており、大阪府箕面市では、導入後に不審者による声かけやひったくりが半減するなど、具体的な効果も確認されています。

コミュニティによる家族支援により、強固な未来を

共働き世帯が増える中、子育て家庭を支える地域の関与を強化することは、親が不在の時間でも子どもたちを安全に育む環境を整えることにつながります。地域住民、企業、自治体が協力して子どもを見守り育てる仕組みは、働く家庭を支えるだけでなく、地域社会の結束を強め、社会全体の持続可能性とレジリエンスを高める重要な基盤となるでしょう。

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