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高まる冷房需要が加速する、持続可能な建造環境

青い空とビルを背景にしたヤシの木。冷房需要の増加は、持続可能な建造環境の加速が必要であることを意味します。

冷房需要の増加は、持続可能な建造環境の加速が必要であることを意味します。 Image: Unsplash/Getty Images

Michael Kent
Lecturer and GAEA Hoffmann Fellow, Singapore University of Social Sciences
Christina Eng
Project Engagement & Communications Specialist - Sustainability & Innovation, World Economic Forum
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 自然と気候
  • 建造環境におけるエネルギーの大部分は運用段階で消費されており、その中でも冷房が主要な要因となっています。既存の建物に低エネルギーソリューションを導入することは、新しい「グリーン」な建物を建設するよりも大きな効果をもたらす可能性があります。
  • 熱帯地域における人口増加と住宅の拡大により、冷房へのエネルギー需要が大幅に増加し、環境的、経済的圧力が強まると予想されます。
  • フィランソロピーセクターは、資金提供だけでなく、知識、パートナーシップ、リソースを結集し、低エネルギーおよびネットゼロの冷房ソリューションをより迅速かつ効果的に拡大する支援となるでしょう。

建物のエネルギー需要は、主に人々の利用方法によって左右されます。

現在の測定によると、建物は年間エネルギー関連の二酸化炭素排出総量の約39%を占めています。建設中にエネルギーが消費される一方で、建物のライフサイクル全体における総エネルギー使用量80~90%は、暖房、冷房、照明に電力を供給する運用時のエネルギーです。

2061年までに人口が100億人に達すると予測される中、住宅や生活ニーズを満たすために、建築物の総数は2倍になると見込まれています。

また、人口増加率の最も高い地域は熱帯だと予想されており、同地域にはすでに世界人口の40%が居住。建築物のエネルギー需要の最大の増加は、おそらくこの地域に集中するでしょう。 建物からの多大な二酸化炭素排出量に対処しなければ、世界の生物多様性の80%を擁するこの地域に壊滅的な影響を及ぼす可能性があります。

一方、世界中の既存建物の約75%は、持続可能な基準を満たしていません。

幸いなことに、敷地内または敷地外で発電されたエネルギーと消費エネルギーのバランスを取り、健康的で持続可能な建造環境の開発を支援する「ネットゼロ」の取り組みが実施されています。これらの「プラスエネルギー」建築物は、消費するエネルギーよりも多くの再生可能かつクリーンなエネルギーを生み出し、ネットゼロの取り組みを推進しています。

冷房需要の増加による建築物のエネルギー使用量増大

現在、ネットゼロを達成しているのは、世界の建物の1%未満です。一方で、高温多湿な気候下における空調による室内冷房需要の高まりが、新たな課題を生み出しています。

1990年以降、空間冷却のためのエネルギー使用量は3倍以上に増加。現在、世界中で約20億台のエアコンが設置されています。熱帯地域では、建物の総運用エネルギーの最大50%を占めています。

これらの地域の差し迫ったニーズは冷房ですが、建造環境には依然として様々な社会的、財政的、環境的な課題が存在。グローバルな建築のネットゼロを加速し、都市建物の脱炭素化を進める前に、それらに対処する必要があります。

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一方で、空調使用の増加と気温の上昇には直接的な相関関係があり、住宅の経済的豊かさとの間にはさらに強い傾向が見られます。

一般的に、世帯収入が高いほど空調を設置する可能性は高くなりますが、技術や光熱費が手頃になるにつれ、低所得国でも普及が進み、最終的には扇風機などの低炭素冷却技術に取って代わる可能性があります。

特に低所得層の住居では、人々が水への依存度を高める可能性があります。社会経済的な格差により、エアコンが購入できない、あるいは利用できない場合、シャワーを浴びる時間が長くなり、頻度も増すことになるでしょう。

ネットゼロ建築の加速にパートナーシップが不可欠な理由

パートナーシップは、ネットゼロ建築の開発を加速させる上で極めて重要な役割を果たします。

パブリックセクターや、グリーンビルディング協議会などの非営利団体は、健全かつ持続可能な建設に向けた明確な道筋を示す一方、企業は最先端技術を推進し、建築家や建築設計者が低エネルギー基準を満たすのに役立つ、より手頃で持続可能なソリューションを提供しています。

世界経済フォーラムの「Giving to Amplify Earth Action(GAEA)」イニシアチブが最近発表した報告書『Accelerating Impact Investments for Climate and Nature in Asia,(アジアにおける気候と自然のためのインパクト投資の加速)』も、フィランソロピーや触媒的セクターの重要な役割を強調しています。

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持続可能な環境の構築に向けた主な障害は資金不足であると考えられがちですが、各地域における複雑な社会経済的課題を踏まえ、価値を創出するために資金と解決策を戦略的に管理する必要があります。

環境課題に対処するために空調への依存を減らすことが、ヒートストレスなどの社会課題を引き起こしてはなりません。また、解決策は市場投入可能なものでなければなりません。

現在の建物の約80%は2050年にもなお存在すると予想されるため、既存の建物の脱炭素化は、単に新しいグリーンビルディングを建設することに注力するよりも、費用対効果の高い戦略となります。

世界の他の地域よりも多様な課題が存在するため、アジアでは、ドナーが触媒的資本をより広範な課題に向けて投入します。これにより、触媒的資金を利用して適切な場所で適切な解決策を動員し、拡大することが可能となります。慈善団体、インパクト投資家、ファミリーオフィスは、ネイチャーポジティブかつ持続可能な建造環境を創出することの重要性を認識しています。

例えば、ラウデス財団は、不動産を世界最大の資産クラス(300兆ドル)として強調しています。同財団は、建造環境セクターからの多大な二酸化炭素排出量と、私たちが約90%の時間を屋内で過ごしているという事実の両方を認識しています。したがって、健康的かつ持続可能な建造環境を創出することが不可欠です。

クライメートワークス財団が主導する「クリーン・クーリング・コラボレーティブ(CCC)」は、持続可能な冷房を拡大することにより、冷房セクターの変革を目指しています。その解決策には、自然の力を利用して室内を涼しく保つパッシブクーリングや、エネルギー効率が高く気候に優しい冷却機器が含まれます。

CCCはアジアで様々な取り組みを支援してきました。例えば、インドでの超高効率シーリングファンの導入や、太陽光を反射するクールルーフ市場の活性化などです。これにより、インドネシア全土では、140平方キロメートル以上にわたるクールルーフ設置が実現しました。

同プログラムが拡大する幅広い持続可能な冷却ソリューションは、冷却に関連する温室効果ガスの排出を抑制すると同時に、冷却へのアクセスを拡大し、猛暑に対するレジリエンスを高めることを目的としています。

過熱化する世界において、気温上昇と冷房需要の増加という悪循環を断ち切るソリューションは、何百万人もの人々の生活の質を向上させることにもつながるでしょう。

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