リモートワークからのオフィス回帰、立てるべき正しい問いとは

2025年12月16日、英国ロンドンの朝の通勤ラッシュ時に、ロンドン・ブリッジのバス停でバスを待つ通勤者たち。多くの組織ではすでに分散型で業務を行っているため、オフィス回帰のため出社を義務化するには遅すぎると考えられます。

多くの組織ではすでに分散型で業務を行っているため、オフィス回帰のため出社を義務化するには遅すぎると考えられます。 Image: REUTERS/Toby Melville/File Photo

Alexandre Bouaziz
Co-Founder and Chief Executive Officer, Deel
本稿は、以下会合の一部です。「グローバル連携と成長」会合
  • 依然として多くの企業が、出社の義務化やリモートワークの制限強化を検討しています。
  • 社員がすでにオフィス、タイムゾーン、あるいはフロアを越えた分散型の働き方をしていることは、あまり意識されていません。
  • 企業は、リモートワークを制限することに注力するのではなく、どのような勤務形態であっても生産性を最大化することに注力しなければなりません。

ここ数年、リモートワークによる在宅勤務からのオフィス回帰をめぐり、大きな議論になっています。経営陣は出勤の方針を打ち出し、従業員は反発。リモートワークの終焉と復活の宣言は繰り返し行われています。

オフィスかリモートかという議論の一方で、世界で最も競争力のある企業は、はるかに価値のあることを行っています。それは、場所を問わず最高の人材を採用し、戦略的優位性として真に分散型のチームを構築することです。

110カ国に7,000人以上の従業員を擁する、グローバルな人事・給与管理会社を経営している自分の経験から言うと、現在のリモートワークをめぐる議論は、間違っています。

真の問いは、分散型組織として運営する方法を知っているかどうかです。なぜなら、選択したかどうかに関わらず、あなたの会社はすでに「分散型」の組織だからです。

「分散型」の定義

米国ニューヨークに本社を置き、英国ロンドンに営業チーム、ドイツのベルリンにエンジニアチーム、ブラジルのサンパウロにサポートチームを擁する企業を想像してみてください。これは、全員が同じフロアに座り、結束力のある文化を持つ「オフィス中心の企業」でしょうか。そうではありません。それは、「オフィスへの回帰」という方針を持つ分散型組織なのです。時刻帯や場所の異なるオフィス、あるいは同じビルの2つのフロアにまたがるチームが存在した瞬間から、分散型ワークの核心的な課題である非同期コミュニケーション、異文化間コラボレーション、そして「出社」ではなく「成果」の管理に取り組んでいることになります。

新型コロナウイルスのパンデミックはこの現実を浮き彫りにしましたが、それを生み出したわけではありません。企業は数十年にわたり分散型で運営されてきました。ただし、かつては悪夢と言えるような混乱があったインフラにも、今やその空白を埋め、分散型ワークをシームレスにする技術が存在します。

「アウトソーシング神話」を打ち砕くデータ

「グローバル採用」と聞くと、多くの人はコスト削減が理由だと考えがちです。グローバル人材プラットフォームを手掛けるディールによる、100万件以上の労働者契約を分析した『2025年グローバル雇用の現状レポート』は、そうではないことを示しています。

2020年から2025年の間に設立され、1億ドル以上の資金調達を行った約100社のスタートアップにおいて、国境を越えた人材採用の主なターゲットは、英国(12.2%)、カナダ(11.9%)、ドイツ(8.8%)、オーストラリア(5.8%)、スペイン(5.2%)でした。これらは人件費が高く、高度なスキルが求められる市場であり、人件費の削減を目指すスタートアップが自然と向かう先ではありません。対照的に、中小企業全体では、フィリピン、メキシコ、コロンビア、インドへの依存度が高くなっています。

ソフトウェア開発者は、国境を越えた採用の28%を占めており、次いで技術営業担当者とAIエンジニアが続きます。また、資金調達額の上位にあるスタートアップは、平均的な中小企業に比べて、海外からソフトウェア開発者を採用する可能性が13.6%高くなっています。これは、高額な報酬が支払われる希少なスキルを求め、戦略的な人材獲得を選択するという意思決定によるものです。こうしたトップクラスのスタートアップをはじめ、その他の企業にとっても、地理的な要因がリーダーたちの人材にアクセスできない理由になってはなりません。

おそらく最も示唆に富む兆候は、世界の国境を越えた採用役職トップ10のうち7つが、営業、マーケティング、または顧客対応業務であるという点です。現地市場の知識、つまり特定の地域の顧客が実際にどのように考え、購入するかを遠く離れた本社から理解することは、依然としてほぼ不可能。そのため、企業は地域に関わらず、その知識を得るために現地で人材を採用しています。

リモートワーカーと都市の近接性

解明すべきもう一つの根強い誤解があります。それは、リモートワーカーが最寄りの都市から遠く離れた広大な土地に移り住み、留まっているという考え方です。私たちの調査によると、これも事実ではありません。

リモートワーカーと主要都市中心部との平均距離は、2022年以降、毎年減少しています。米国では、現在のリモートワーカーは、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、サンフランシスコといった都市から、2021年当時と同程度近い場所にいます。英国のロンドンやフランスのパリでも、同様の傾向が見られます。リモートワーカーは依然として、これらの都市が提供する活気、コミュニティ、そして機会に近接することを求めているのです。

これは、リーダーが分散型チームについて考える上で、警鐘となる事実です。「リモート」が「散在」を意味するという前提は誤りです。労働者は、馴染みのある都市圏に集まっています。ただ、あなたのオフィスから徒歩圏内ではないだけです。

すべての創業者が立てるべき問い

オフィス回帰のため出社の義務化を行うべきかどうか、いまだに悩んでいる起業家たちは、多くの点ですでに答えが出ている質問を投げかけています。市場からのサイン、彼ら自身の就業決定、そして優秀な人材が住む場所を選択した事実に照らせば、答えは明らかです。

より重要な問いは、コンプライアンスに則り、国境を越えて人材を採用、管理する体制は整っているか、チームが時差を越えて活動する場合、どのように企業文化を築けばよいか理解しているか、地理的な制約によって、自社を卓越した企業にする人材へのアクセスを狭めていないか、です。

2026年、人材獲得競争に勝つ企業は、必ずしも最高のオフィス特典や、最も厳しい出勤規定を持つ企業ではありません。勝者となるのは、世界中のどこからでも優秀な人材を見つけ出し、彼らがどこにいても「参加する価値のある何か」の一員だと感じられるようにする方法を確立した企業です。

オフィス回帰をめぐる議論は続くでしょう。しかし、今後10年を形作る企業は、その決着を待ちません。彼らは、パンデミック前の2019年の組織図とはかけ離れたチームを構築しています。そして、分散型ワークを妥協案ではなく、競争上の優位性として捉えているのです。

どの企業もリモートワークを行っています。考えなければならないことはただ一つ、それを正しく行っているかどうかです。

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