冬季五輪に迫る気候変動の影響-大会が変化する可能性はあるか

冬季オリンピックでは人工雪が一般的になっていますが、これは温暖化する気候への解決策である一方、それ自体が新たな環境課題をもたらしています。 Image: REUTERS/Yara Nardi
- イタリア北部で開催の冬季オリンピックは、グローバルな気候変動と異常気象という背景のもとで行われています。
- 山岳地帯の降雪量が減少する中、世界経済フォーラムの新たな報告書は、大会開催が可能な会場が減少する可能性を指摘しています。
- 人工雪の導入から競技日程の変更まで、すでに進行中の変化と冬季五輪の未来を支えるために検討されている対策をまとめています。
一方、同年1月に発表された世界経済フォーラムの報告書は、気候危機により冬季五輪を開催可能な国が減少すると警告。同報告書によると、降雪量の減少により、2040年までに冬季オリンピック・パラリンピックの開催が可能な国はわずか10カ国に減少すると見込まれます。
オリバー・ワイマンの協力を得て作成された『Sports for People and Planet(人と地球のためのスポーツ)』報告書は、「環境リスクが(略)今後10年間のグローバルリスク環境を支配し、スポーツ経済に対する運営面、財政面の脅威が拡大している」と警鐘を鳴らしています。
開催候補地の減少傾向
同報告書は、2024年に『Current Issues in Tourism』誌で発表された調査結果の警告を裏付けるものです。同調査では開催可能な地域が減少傾向にあると指摘されました。
開催地の地理的分散は維持されていますが、この減少傾向はすでに進行中です。同報告書は「今後の開催地選定プロセスにおいて気候変動を考慮する必要性」を強調し、安全性と公平性を重要な検討事項として挙げました。さらに、冬季パラリンピック大会へのリスクはさらに高いと指摘。従来から、オリンピック終了後の冬季シーズン後半に開催されてきたためです。
2023年には、オリンピック組織委員会が2030年大会の開催地決定を延期し、開催地における気候変動の影響を調査する時間を確保しました。次回の冬季オリンピックはフランス・アルプス、次々回は米国ソルトレイクシティで開催されます。
では、冬季オリンピックおよびパラリンピックの主催者は、現在どのような対策を講じており、将来的にどのような対策が必要となるのでしょうか。
人工雪
人工雪は、決して新しいテクノロジーではありません。1980年、米国ニューヨーク州で開催されたレークプラシッド大会で初めて使用されました。一方、2022年に中国、北京で開催された前回の冬季オリンピックでは、その使用が拡大し、国際オリンピック委員会(IOC)によると、延慶地区では人工雪の使用率が少なくとも90%に達しました。
再生可能エネルギーを使用して製造されたとはいえ、人工雪の使用には、水の使用からエネルギー消費に至るまで、独自の環境的配慮が必要です。BBCの報道によれば、北京大会では人工雪の製造に約2億2,200万リットルの水が使用されました。
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでも人工雪が使用されています。その理由の一つは、長期にわたる競技期間を通じて安定した品質を提供できる点にあります。
同報告書が降雪量の減少による影響を警告していることから、人工雪は今後もオリンピックの一部として残る可能性が高いでしょう。
開催時期の変更
2024年の論文の著者たちは、開催時期を年初の早い時期に移すことで、潜在的な開催候補地の数を大幅に増やすことができると同時に、特にパラリンピックへのリスクを軽減することができると提案しています。
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの開催を前にした2026年2月、「ザ・カンバセーション」誌は「冬季オリンピックとパラリンピックを3週間前倒しで開催することは、気候条件が安定している開催地の数を大幅に増やす可能性を秘めている」と記しています。
リスク軽減のため、両大会を同時開催するか、異なる都市や年に分散開催する案も提案されています。ただし、IOCの契約書にある「オリンピック開催都市はパラリンピックも開催することを義務付ける」とする「一都市一招致」方針について、再検討が必要となるでしょう。
その他の提案としては、現在の16日間から20日間近くへ大会期間を延長することが挙げられます。これにより、天候による競技遅延が生じた場合にも柔軟に対応可能となるためです。
開催地域の拡大
気候変動に強い地域を活用するため、競技開催地域を拡大することにもメリットがあると考えられます。
「イェール・クライメート・コネクションズ」の記事では、米国とカナダにまたがるロッキー山脈やアルプスのチロル地方全体など、広域地域の検討が提案されています。
2026年大会は過去の大会と比較して開催地域が大幅に拡大。冬季五輪として初めて開会式を2か所で行いました。IOCによると、開催地域は約22,000平方キロメートルに及び、「オリンピック史上最も広範囲にわたる大会」となる見込みです。
もちろん、地理的に分散した地域での開催には課題もあり、例えば会場間の移動に伴う二酸化炭素排出量の増加が懸念されます。一方、新規施設を建設するのではなく既存の会場をより効果的に活用することで、この課題をある程度緩和し、持続可能性を向上させられる可能性が示唆されています。
より大きな何かを象徴するもの
逆境への勝利、スポーツの結束力、あるいは弱者への変わらぬ魅力など、オリンピックは長きにわたり、単なる競技以上の何かを象徴してきました。気候変動への社会の適応状況を示すこの概観においても、その深い意義は変わらずに存在しています。
世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書』最新版では、短期的な環境リスクに対する懸念は減少傾向にありますが(下図参照)、長期的なリスク展望においては依然として環境リスクが主要な懸念事項となっています。
ダボスにおける世界経済フォーラム年次総会では、氷河に関するセッションが行われ、氷河の後退に伴い山岳地域で生じている脅威と新たな技術革新の両面が議論されました。「The Snow Factor(雪の要因)」と題されたセッションでは、科学者、政策立案者、地域コミュニティが、新たなテクノロジーを活用しながら、氷河や水資源、そしてそれらに依存する数十億の人々を守るために協力している姿が浮き彫りとなりました。
気候変動が世界の山岳生態系をどのように再構築しているのか、そしてそれらを守ろうと努力する人々や組織はどうあるべきか。人工雪やスキージャンプのスケジュールを巡る議論は些細に思えるかもしれませんが、それらはこうした、はるかに大きな問いを投げかけているのです。
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