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軽量建築が都市を変える―サステナブルな建物が生み出す可能性

軽量建築プロジェクト、ラヴェンナ市行政庁舎(イタリア)。

軽量建築は、コンクリートやレンガなどの重い材料に依存する従来の建築に比べて、より軽量かつ丈夫な構造を目指します。 Image: Lorenzo Bartoli/Saint-Gobain

Fabienne Robert
Director, Sustainable Construction Observatory, Saint-Gobain
  • 建設業界は気候変動に伴う課題に対応しようとしています。その中で、「軽量建築」は持続可能な解決策の一つであり、資源採掘の抑制や二酸化炭素排出量の削減につながります。
  • 軽量建築により、熱損失の低減、資材の入手容易性向上、コスト削減が可能となり、住宅がより快適かつ手頃な価格で建設できるようになります。また、大規模建設プロジェクトの予算削減と安全性の向上も実現します。
  • 軽量建築の普及促進には、バリューチェーンにおけるステークホルダーのスキル向上、規制枠組みの改善、データへのアクセス向上が必要です。

気候変動への対応と人口動態の変化を受け、建設業界は大きな変革期を迎えています。

軽量建築のような、アジャイルかつ持続可能なアプローチは、今日の進化するニーズに対して責任ある解決策を迅速に提供することができます。

「軽量建築」とは

軽量建築は、コンクリートやレンガなどの重い材料に依存する従来の建築に比べて、より軽量かつ丈夫な構造を目指します。

例えば、木材、金属、コンクリート製の「骨組み」に、非耐力性のファサードや間仕切りシステム(建物の構造重量を支えず、断熱、天候保護、耐火性、遮音、空間構成などの機能を果たす内外壁)を取り付けることが可能です。

こうした構造は、コスト、スピード、快適性の要求を満たすと同時に、建物のカーボンフットプリント削減に適した持続可能な解決策となり得るでしょう。

軽量建築は、重く炭素集約的な材料の使用を削減することで、天然資源の採取とエネルギー消費を抑制し、二酸化炭素排出を回避するとともにサーキュラリティ(循環性)を促進します。

さらに、建物全体または一部のオフサイト施工により、建設現場での廃棄物発生と混乱が軽減されます。

軽量建築の利点
軽量建築の利点 Image: Saint-Gobain

軽量建築の経済的、社会的メリット

軽量化を行っても、エネルギー効率の面で建物の快適性や性能は特に低下しません。したがって、より多くの人々が、快適かつ適切な住居を手に入れることができます。

北米では、軽量建築は手頃な価格の住宅に対する膨大な需要に対する重要な解決策です。例えば、木材の使用は、北米や北欧では一般的です。木材は手頃な価格で入手しやすい資源だからです。こうした国々における適切な森林管理は、森林破壊を抑制し、解決策の持続可能性を確保します。

エネルギーの観点から見ると、軽量建築物の構造に木材を使用することで、例えば二つの壁の接点(サーマルブリッジ)を通じた熱損失の低減が可能となります。

木材は比較的軽量であるため、より迅速に組み立て可能であり、建設期間の短縮につながります。
木材は比較的軽量であるため、より迅速に組み立て可能であり、建設期間の短縮につながります。 Image: Stadthaus-Murray-Grove

この手法は、地球温暖化の影響で自然災害に極めて脆弱な都市の復興においても重要な役割を果たしています。

トルコでは、2023年の地震の後の迅速な再建や、再崩壊時の被害軽減が期待できる軽量構造の建築において、この工法が不可欠であることが実証されました。

このアプローチは、都市の柔軟性や変化するニーズとライフスタイルへの対応が求められる中、適応性と可逆性を備えた建築物への移行を促進。また、建物の寿命終了時には、容易に解体して他所での再利用やリサイクルを行うことができる利点があります。

一例として、オランダのトリオドス銀行は、RAUアーキテクトとExインテリアーズの両社が設計した、完全に解体可能な初の木造オフィスビルです。この建物は「材料バンク」として設計されており、物理的な構成要素のすべてが「Madaster」プラットフォーム上で索引付け、記録されて、解体された場合の再利用を容易にしています。

165,312本のネジで組み立てられた建物は完全に分解可能であり、材料、部品、製品の価値を損なうことなく100%のリサイクルが可能です。

トリオドス銀行は、建築物の環境性能を評価する基準BREEAMの最高評価「Outstanding」を取得。2020年「The Archtecture MasterPrize™」のグリーン建築部門など、複数の賞を受賞しています。
トリオドス銀行は、建築物の環境性能を評価する基準BREEAMの最高評価「Outstanding」を取得。2020年「The Archtecture MasterPrize™」のグリーン建築部門など、複数の賞を受賞しています。 Image: Ossip van Duivenbode

イタリアのラヴェンナ市行政庁舎は、エネルギー効率の最適化と建築外装の特性を最大限に活用するよう設計されています。

そのため、採光と自然換気には特に注意が払われました。この考え方は、緑化屋根、大型断熱窓、日除けとして機能するファサードの壮観な建築様式に反映されています。

設計の初期段階から、環境に優しい材料の使用を優先。さらに、各構成部品は完全な分解を必要とせず、個別に交換またはメンテナンスが可能です。これにより、プロジェクトのライフサイクル全体を通じて、維持管理コストを最適化しています。

環境面での利点に加え、軽量構造は予算や工期の制約に対する効果的な解決策となり得ます。まず、材料が軽量であるために、基礎工事が簡素化され、建設期間の短縮とコスト削減が実現します。

オフサイト施工では、従来の工法と比較して最大30%の工期短縮が可能です。例えばスペインのカタルーニャでは、モジュール工法により108床の病院がわずか4カ月で建設。工期短縮が実現しただけでなく、工場生産部品の増加によって現場での作業が減り、作業環境と安全性が向上しました。

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軽量建築の普及に向けた課題

軽量建築の広範な普及を加速するには、以下の3つの重要な要素を推進する必要があります。

1. バリューチェーンにおけるスキル向上

重要なステップは、建築家、エンジニア、請負業者、職人、開発業者、行政機関など、バリューチェーン全体のステークホルダーのスキルと知識を強化することです。

それぞれが、軽量ソリューションに関連する特定の材料、組立技術、エネルギー性能の期待値、そして多くの場合工業化されたプロセスについて研修を受ける必要があります。

この集合的な専門知識を構築することは、高品質な結果を保証するだけでなく、依然として代替的あるいは実験的と見なされることもある手法への信頼構築にも寄与します。これは文化的な変革であり、業界をより機敏で持続可能かつ強靭な実践へと導く上で重要な役割を果たす可能性があります。

2. 規制の改善

軽量建築は、より支援的、長期的な規制枠組みからも大きな恩恵を受けるでしょう。投資助成金、イノベーション補助金、優遇税制などの的を絞ったインセンティブは、より多くのプロジェクトオーナーがこれらのソリューションを採用する動機付けとなります。

同様に重要なのは、専門家が事前に計画を立て、自信を持って投資できる、安定的で明確かつ調和のとれた規制枠組みの必要性です。軽量建築を、生態学的転換と持続可能な開発に向けた公共政策の重要な柱として確立するには、制度的支援が不可欠です。

3. データの改善

最後に、ライフサイクルアセスメントデータへのより容易かつオープンなアクセスが不可欠です。ライフサイクルアセスメントとは、材料生産から廃棄に至る建築物の全ライフサイクルにおける環境影響を評価することです。

得られる知見は、情報に基づいた設計判断、技術的選択肢の比較、高まる持続可能性要件への対応において極めて重要です。現状、こうしたデータは散在し、入手困難であるか、使いにくく利用が難しい場合が多く見受けられます。

標準化され、容易にアクセス可能な共有型ライフサイクルアセスメントデータベースとデジタルツールを構築することにより、意思決定の質向上、透明性の向上、そして軽量建築の主流建築手法への統合加速が実現されるでしょう。

軽量建築は、私たちの都市に新たな可能性をもたらす可能性があります。建設セクターの脱炭素化改修に向けた競争を加速させ、需要の高まる健康的かつ持続可能な住宅が容易に入手できるようになるでしょう。

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