AI

AIの強みを現実世界のインパクトに-MINDS表彰企業の発表

産業用ロボットと自動ロボットアームを備えたインテリジェントな建設現場で、ビジネスマン風のエンジニアマネージャーがタブレットを使用している写真。「MINDSプログラム」は、AIを活用して現実世界に影響を与える組織を表彰します。

「MINDSプログラム」は、AIを活用して現実世界に影響を与える組織を表彰します。 Image: Getty Images/iStockphoto

Maria Basso
Head, AI Applications and Impact, World Economic Forum
Cathy Li
Head, Centre for AI Excellence; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2026
  • 世界経済フォーラムの「MINDS」プログラムは、AIを現実世界のシステムに組み込み、持続可能性、包摂性、事業のレジリエンスを確保すると同時に測定可能な成果を生み出す組織を選出します。
  • 同プログラムは、第1期と第2期からの知見をまとめた初の報告書を発表。AIの拡大に向けた枠組みを提示しています。
  • 第3期の応募はこちら。受賞組織は2026年のニュー・チャンピオン年次総会で発表されます。

世界経済フォーラムの「MINDS(Meaningful, Intelligent, Novel, Deployable Solutions:意味のある、インテリジェント、新規、展開可能なソリューション)」プログラムは、AIを活用して様々な分野でリアルな影響をもたらす企業を表彰します。

第1期は、23カ国、18のAIを産業に融合させた組織が、中国の杭州で開催された2025年ニュー・チャンピオン年次総会で発表。第2期ではさらに15のグローバルなユースケースが加わりました。

同プログラムの強みは、参加組織が豊富な事例研究と影響度指標を提供し、より広範な学びと実践の再現を可能にする点にあります。これらの知見は報告書『Proof Over Promise: Insights on Real-World Adoption from 2025 MINDS Companies(約束よりも実績を:2025年MINDS組織から見る実社会におけるAI導入の知見)』にまとめられ、AIアプリケーションの成功的な拡大に向けた実践的枠組みを提供します。

第2期受賞組織の一部は、以下の通りです。

MINDSプログラム第2期の組織

エネルギーと気候レジリエンスのためのAI

複数の組織が、バッテリー、電力網、エネルギー市場、建築物、クリーン発電にまたがる実践的な気候ソリューションを提供するため、AI活用の先駆的取り組みを進めています。

寧徳時代新能源科技(CATL)(中国)

物理ベースの電気化学モデリングと機械学習を組み合わせたAIプラットフォームにより、電気自動車用バッテリーの設計を再構築。これにより開発の自動化と加速を実現しました。

5,000万件以上の記録データを処理するこのプラットフォームは、構造化データと非構造化データを統合し、数週間ではなく数分で最適な設計を提供します。これによりデータ操作を99%削減し、試作サイクルを約50%短縮しています。

中国国家電網公司(中国)

上海の電力網をより効率的に管理するためにAIを活用しています。

このプラットフォームは予測、取引、調整、決済を統合し、分散型エネルギー資源をリアルタイムで調整することを可能にします。1秒未満の応答時間で15,000人以上のユーザーをサポートし、大都市がよりレジリエンスの高い、持続可能なエネルギーシステムを構築する方法を示しています。

北京低炭素クリーンエネルギー研究所(NICE)(中国)

AIエネルギー市場予測システムにおいて、リアルタイムの規制更新情報を市場データと連動させ、精度向上とリスク低減を実現しています。

エネルギー政策で訓練されたAIモデルと市場予測を組み合わせることで、政策変更が市場に与える影響を継続的に監視。エネルギー使用量を最大95%削減します。

シュナイダーエレクトリック(フランス)

学習、適応し、リアルタイムで持続可能な省エネルギーを実現するデバイス内蔵型AIにより、建物の快適性と効率性を向上しました。

同社のルームコントローラーは熱的挙動を予測し、快適性を維持するための設定を調整すると同時に、エネルギー使用量を最小限に抑えます。これにより、わずか2週間で5~15%の省エネルギーを達成し、同時に排出量を削減します。

中国華能クリーンエネルギー研究所、華能吉林発電所、中国華能集団有限公司江蘇省支社(中国)

中国華能クリーンエネルギー研究所は、提携先の華能吉林発電所および中国華能集団江蘇省支社と共同で、リアルタイムのAIおよび高度な分析技術を活用したプラットフォームを通じて、洋上エネルギーの効率化を推進しています。

設備の需要予測、運用最適化、クリーンエネルギー出力の向上を実現し、年間1万世帯以上の電力供給に相当する量を発電しています。

再生可能エネルギーインフラが分散、複雑化する中、信頼性を維持するためには、データ、診断、制御の緊密な連携が不可欠です。

Loading...

ヘルスとウェルビーイング向けAI

医療システム全体にAIが導入され、アクセスの拡大、治療成果の向上、レジリエンスの高い人間中心のケアモデルの実現が可能になっています。

ランディング・メッド(中国)

AIを活用した細胞診技術により、中国の女性の健康向上に貢献。世界中のコミュニティに、がん検診を届けています。同社のプラットフォームは細胞分析を自動化し、診療所と遠隔地の病理医を接続します。

また、大量の医療画像データを処理し、クラウド、エッジコンピューティングを活用したリアルタイム診断により、中国の遠隔病理診断ネットワークの91%をカバー。1,200万件以上の検診を実施しています。

サウジアラビア保健省とアンプリファイ・ヘルス(サウジアラビア)

コンピュータービジョンと大規模言語モデルを活用し、1分以内に熱パターンを解析して臨床リスクスコアを生成する「サーマル・フット・スキャン」の試験運用を開始しました。

看護師によるAI支援型スクリーニングの実施を可能とすることにより、足の専門医の不足を補い、専門家が高リスク症例に集中できる環境を整えます。同時に、専門医の人員を増やすことなくスクリーニング能力を最大12倍まで向上させました。

初期結果では治療コストが約80%削減され、対応型医療から拡張可能な予防モデルへの転換を実証。これはサウジアラビアが掲げる「技術を活用した公平な医療」のビジョンを支えるものであり、遠隔地や資源の限られた地域にも展開されます。

ファゴス(フランス)

抗生物質に代わるAI駆動型ソリューションを提供し、動物の健康と食料システムを守ります。同社のプラットフォームは、ゲノム配列からファージと細菌の相互作用を予測し、適応型マルチファージカクテルを設計することができます。

95%の精度を達成し、手動による手法と比較して創薬を最大10倍まで加速しました。

OAOとサノフィ(フランス)

従業員が発見と革新に貢献する、AIを最優先とする企業を構築しています。

マルチエージェントシステムにより、全階層で知見を収集し、1,300件以上のAIユースケースを創出。モデル開発の迅速化と測定可能な収益向上を実現しました。

社会医療法人玄州会と富士通(日本)

病院経営の効率化に向けたAIの応用で提携し、診療記録の標準化や病床配置の最適化などの課題に取り組んでいます。

この新たな運営モデルにより、病院管理業務においてすでに400時間以上の時間削減と、140万ドル(10%)の収益向上が実現しました。

関連記事を読む

産業、インフラ向けAI

AIは、都市の安全性の向上や集積回路の効率化など、重要な産業、インフラシステムの近代化を可能にし、あらゆる経済基盤に知能を直接組み込むことで、経済基盤そのものを強化します。

ケンブリッジ・インダストリーズ(米国)

地域管理型のAI技術により、都市による道路の安全性の維持、建設現場における安全基準の遵守を支援し、複雑なエンジニアリング知識を誰もが利用できるようにしています。

同社の主力アプリケーションであるOrbitとNdegeは、クライアント主導のプライベート大規模言語モデルを活用。スマートフォンやドローンを通じて道路状況の分析や建設現場の安全監視を行い、緊急道路補修費用と建設現場での事故を約50%削減することに成功しています。

ウーマートとディーモール(中国)

小売業務をエンドツーエンドで効率化し、店舗ネットワーク全体で価格設定の改善、在庫減少の抑制、エネルギー使用量の削減を実現しています。

統合小売運営プラットフォームで、販売時点情報管理(POS)データ、在庫、カメラ、モノのインターネット(IoT)センサーを連携。動的でイベント駆動型のワークフローを可能にしています。また、価格設定の自動化、業務の監視、エネルギー使用量の管理をリアルタイムで実施します。

ディープ・プリンシプル(中国)

AIを活用して化学、計算、データを単一の連続的な発見プロセスに統合。化学反応の挙動を迅速に予測し、材料シミュレーションの半数以上を自動化すると同時に、実験コストを削減します。

また、候補物質の特定を加速し、リアルタイムで透明性の高い意思決定を支援することにより、迅速かつ協働的な材料研究を実現しています。

AMDとシノプシス(米国)

電子設計自動化(EDA)ツールにエージェント技術を統合し、半導体設計の効率性を向上。システムが設計目標を理解し、ツールを実行し、結果を評価することにより、人間の設計者を支援し、チームの生産性向上に貢献します。

生産性は倍増し、設計コストと承認時間が削減されたことにより、チップ設計におけるイノベーションを加速しています。

テック・マヒンドラ(インド)

グローバルシステムでは見落とされがちなヒンディー語、バハサ語、その他の地域言語をサポートする、多言語AIモデルを構築しています。

大規模なローカルデータで訓練されたこれらのモデルは、現在、1万人以上のアクティブユーザーを対象に、市民サービス、銀行業務、医療分野において、月間380万件の問い合わせを処理。 92%の会話精度を実現し、汎用的なグローバルモデルを上回る性能を発揮しています。

最大20億ドルの生産性向上をもたらす可能性があるこの取り組みは、経済協力開発機構(OECD)のAI原則および広島AIプロセスに沿っており、グローバル・サウスにおけるインクルーシブなAIの導入を支援します。

MINDSプログラム選出組織の特徴

第1期、第2期の組織を比較すると、共通する特徴が見えてきます。それは、社会と環境の進歩への取り組みであり、具体的には、従業員のエンパワーメント、教育とスキルアップの機会の拡大、そしてAIを活用したエネルギー消費の削減です。

MINDS企業全体では、業務効率の向上により、生産性と収益において二桁の伸びを記録。この成功は、パイロット段階から全社導入へ移行する責任ある拡大能力を反映しています。中核プロセスへのAI組み込みと技術インフラの近代化がこれを可能にしました。

戦略、従業員、データ、技術、ガバナンスの相互作用が、増幅された測定可能な影響力を生み出しているのです。

最初の2期が「責任あるAI」に関するグローバルな議論を形成する中、第3期受付の準備が進められてきました。アグリフードからサイバー防衛まで、様々な業界のステークホルダーに、応募と拡大するコミュニティへの参加を呼びかけています。

MINDSプログラムの第2期メンバーは、影響力のあるAIが実際のシステムに組み込まれ、測定可能な成果を上げていることを明らかにしています。今こそ、効果的な手法を再現し、責任あるAIが例外ではなく標準となるよう取り組むべき時です。

本プロジェクトへの協力とリーダーシップに対し、Federico Capaccio、Fatima Gonzales Novo、Eric Enselme、Na Na、中山千春の各氏に感謝します。

Loading...
このトピックに関する最新情報をお見逃しなく

無料アカウントを作成し、パーソナライズされたコンテンツコレクション(最新の出版物や分析が掲載)にアクセスしてください。

会員登録(無料)

ライセンスと転載

世界経済フォーラムの記事は、Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International Public Licenseに基づき、利用規約に従って転載することができます。

この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。

最新の情報をお届けします:

Horizon Scan: Nara Lokesh

関連トピック:
AI
フロンティアテクノロジー、イノベーションセンター
シェアする:
大きな絵
調さしモニターする AIとロボティクス は、経済、産業、グローバルな問題に影響を与えています。
World Economic Forum logo

「フォーラム・ストーリー」ニュースレター ウィークリー

世界の課題を読み解くインサイトと分析を、毎週配信。

今すぐ登録する

もっと知る AI
すべて見る

Latin America in the Intelligent Age: A New Path for Growth

日本の道筋に学ぶ、「責任あるAI」のガバナンス

世界経済フォーラムについて

エンゲージメント

リンク

言語

プライバシーポリシーと利用規約

サイトマップ

© 2026 世界経済フォーラム