グローバルリスク

2026年のグローバルリスク、トップは地経学上の対立

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2026年のグローバルリスクのホットスポットを象徴する、都市の照明で輝く地球。

地経学上の対立、誤報と偽情報、社会の二極化が短期グローバルリスクの上位3位を占め、長期リスクでは環境的リスクが支配的となっています。 Image: Planet Volumes For Unsplash+

Mark Elsner
Head of Global Risks Initiative, World Economic Forum
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2026
  • 世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2026年版』は、世界は分断と対立が特徴の「競争の時代」に直面していると指摘しています。
  • リーダーたちやリスク専門家による短期的、長期的見通しはいずれも、「激動」あるいは「不穏」な時代を見込んでいます。
  • 地経学上の対立、誤報と偽情報、社会の二極化が短期リスクの上位3位を占め、長期リスクでは環境的リスクが支配的です。
  • 同報告書は、「対話の力」をテーマとして開催される2026年世界経済フォーラム年次総会(2026年1月19日~23日)の議論の枠組みを定めるものです。

地政学的な激動、技術変革、多国間主義およびその機関に対する挑戦を経て、リーダーたちは2026年に何を予想すべきでしょうか。

1,300人以上のグローバルリーダーたちを対象とした年次調査と、リスク専門家との協議に基づき作成された世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2026年版』は、「競争の時代」に明確に移行したことを示しています。

グローバルリスクのモメンタムは、その速度、規模、範囲において加速し続けています。同報告書は「未来は単一の固定された道筋ではなく、今日グローバルコミュニティとして下す様々な決断の集積である」と指摘。協力と信頼ではなく、対立を特徴とする多極化が進む状況を描いています。

不確実性は近い将来も主要なテーマであり続けるでしょう。回答者の半数は、今後2年間において2026年を「不穏」または「激動」と見込んでいます。ただし、今後10年間で見るとこの割合は57%に拡大し、約5人に1人が「地球規模の壊滅的な」リスクが差し迫っていると予測しています。

主な調査結果は、以下のとおりです。

短期(今後2年間)および長期(今後10年間)のグローバルリスク
短期(今後2年間)および長期(今後10年間)のグローバルリスク Image: World Economic Forum
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多国間主義を脅かす地経学上の対立

長年確立されてきた多国間体制が圧迫される中、「地経学上の対立」は2026年においてリーダーたちやリスクの専門家にとって最も重要なものとなっています。これには貿易、投資、サプライチェーン、天然資源へのアクセスに関する課題が含まれます。その結果、昨年の最高位リスクであった「国家間武力紛争」は2位に後退しました。

関税措置への対応は徐々に進んでいますが、港湾封鎖、重要物資の輸出制限、契約解除、資本規制など、地経学上の対立が全面的な経済戦争に発展するリスクが存在します。

対立が協力体制を複雑化
対立が協力体制を複雑化 Image: World Economic Forum

「異常気象」、「社会の二極化」、「誤報と偽情報」が今年のリスク上位5位に入りました。

今後2年間では、同様に「地経学上の対立」、「誤報と偽情報」、「社会の二極化」が上位を占める一方、「国家間武力紛争」は順位を下げています。

ただし、10年先を見据えると、リスク認識は大きく変化。気候変動の影響、つまり「異常気象」、「生物多様性の喪失」、「地球システムの危機的変化」などが最大の懸念事項となっています。今後2年間の最大の懸念事項である「誤報と偽情報」は、長期的な重大リスクとしても認識されており、4位に位置付けられています。第5位は、「AI技術がもたらす悪影響」です。

グローバルリスクの重要度ランキング(短期:今後2年間、長期:今後10年間)
グローバルリスクの重要度ランキング(短期:今後2年間、長期:今後10年間) Image: World Economic Forum

深刻化する経済的リスク

前年と比較し、今後2年間の経済的リスクは順位が最も大きく上昇しています。「地経学上の対立」に加え、「景気後退」と「インフレ」のリスクは8ランク上昇し、最大の上昇幅を示しました。

「資産のバブル崩壊」のリスクも急上昇し、7ランクアップ。これは、債務の累積、景気後退、フロンティア技術(AI、量子技術)への投資収益の不確実性が相互に作用することで生じうる不安定な組み合わせを浮き彫りにしています。これに地経学上の対立が加われば、その影響は企業だけでなく社会全体を不安定化させる可能性があると、同報告書は警告しています。

短期(今後2年間)および長期(今後10年間)リスク重要度スコア分布 - 景気後退、2026~2028年
短期(今後2年間)および長期(今後10年間)リスク重要度スコア分布 - 景気後退、2026~2028年 Image: World Economic Forum

制御不能な技術進歩によるリスク

AIや量子コンピューティングなどの技術の急速な進化は成長の土壌を育む一方で、リスク水準も高めています。その範囲は、職務プロファイルの根本的変化に伴うAIの雇用市場や社会安定への影響から、量子テクノロジーが情報の一貫性に及ぼす脅威、自動化が進む兵器システムがもたらす軍事リスクに関する懸念まで、多岐にわたります。

「誤報と偽情報」と「サイバーセキュリティの脆弱性」は、今後2年間でそれぞれ第2位と第6位。一方、「AI技術がもたらす悪影響」については、時間経過に伴う順位の上昇幅が最も大きく、短期では30位であったものが、今後10年間では第5位へと上昇しています。「フロンティア技術のもたらす悪影響」については、今後2年間から今後10年間で、順位が33位から25位へと上昇。

対策においては、認識の向上、教育、リスキリング、安全対策が不可欠となります。

短期(今後2年間)および長期(今後10年間)リスク重要度スコア分布 - AI技術がもたらす悪影響、2026~2028年
短期(今後2年間)および長期(今後10年間)リスク重要度スコア分布 - AI技術がもたらす悪影響、2026~2028年 Image: World Economic Forum

社会の二極化は依然として重要なリスク要因

「社会の二極化」のリスクは、同報告書の過去5版において、グローバルリスクの全体像を構成する中心的な要素として一貫して取り上げられてきました。

社会的リスクは今後2年間では第3位ですが、今後10年間では第9位に低下。これは過去5年間、短期、長期の両方で常にリスク上位10項目にランクインし続けている唯一のリスクです。

「不平等」、「健康とウェルビーイングの低下」、「景気後退」は、「社会の二極化」と密接に関連しています。「誤報と偽情報」、「地経学上の対立」といった要素も相互に関連しているため、今後2年間で社会的、政治的分断はさらに深刻化する可能性があることが示唆されています。

グローバルリスクの展望 - 社会の二極化
グローバルリスクの展望 - 社会の二極化 Image: World Economic Forum

環境的リスクは低下も、長期的には依然として高い水準

環境的リスクは近年、最も高い順位に位置付けられてきました。ただし2026年度版では、より差し迫ったその他の脅威に比較して、短期的には優先順位が下がっています。「異常気象」や「汚染」は依然として上位10位以内にランクインし、今後2年間ではわずかな低下が見込まれますが、「地球システムの危機的変化」や「生物多様性の喪失」は、昨年と比較して顕著な低下を示し、ランキングの下位に後退しました。

一方、この状況は今後10年間では異なり、環境的リスクは依然としてランキングのトップに位置しています。上位10位には5つの環境的リスクがランクイン。上位3位は、「異常気象」、「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」、「地球システムの危機的変化」です。「天然資源不足」は6位、「汚染」は10位となっています。一方、短期的リスクとして最も上位だった「地経学上の対立」は19位に後退しました。

グローバルリスクの重要度ランキング(短期:今後2年間、長期:今後10年間)
グローバルリスクの重要度ランキング(短期:今後2年間、長期:今後10年間) Image: World Economic Forum

旧来の世界秩序は転換点に

保護主義と戦略的産業政策が台頭し、各国政府が重要サプライチェーンの管理を強化する中、同報告書は「競争が激化する」世界の姿を描いています。

回答者の68%が、今後10年間で国際政治環境はより分断化、多極化すると予測。国家の利益が集団行動よりも優先される中、戦後の国際秩序とその多国間機関が復活すると予想する回答者はわずか6%でした。

不確実性が今後も唯一の不変要素であり続ける状況下で、新たなフォルトライン(断層線)を超えた協力体制の継続的な必要性が改めて浮き彫りになっています。ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会の核心をなすテーマ、「対話の力」は、今後の道筋を共同で形作る上で極めて重要となるでしょう。

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この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。

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