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すべての国に宇宙戦略が必要な5つの理由

国家宇宙戦略ツールキットは、各国による宇宙分野での協力を支援するために設計されています。

「国家宇宙戦略ツールキット(National Space Strategy Toolkit)」は、各国が持続可能かつ効率的で的を絞った宇宙戦略を策定することができるよう、設計されています。 Image: JAXA/NASA

Hazuki Mori
Lead, Planetary Solutions Impact, World Economic Forum
Luigi Scatteia
Partner, Space Practice, Global Lead, PwC
  • 宇宙は今や、成長、安全保障、レジリエンスにとって不可欠なインフラです。
  • 宇宙基盤サービスは、災害管理、農業、都市開発などを支援する上で極めて重要です。
  • 世界経済フォーラムは、PwCの協力を得て「国家宇宙戦略ツールキット(National Space Strategy Toolkit)」を発表します。同ツールキットは、各国が国家宇宙戦略を策定し、リソースを最適化し、強靭なエコシステムを構築することを支援するために設計されたものです。

経済成長、技術革新、社会変革の重要な推進力として、宇宙はもはや任意の選択肢ではなく、国家にとって必要不可欠な存在となっています。長年のうちに、宇宙はSFの世界から、成長、安全保障、レジリエンスにとって不可欠なインフラへと進化を遂げてきました。地球観測(EO)、測位、航法、計時(PNT)、衛星通信などの宇宙基盤サービスは、災害管理、農業、都市開発などの支援において極めて重要です。

過去50年間、宇宙は自然と気候のモニタリング、遠隔地コミュニティのコネクティビティの確保など、数多くの方法で各国を支援する善の力として機能してきました。宇宙が社会全体にもたらす数多くの利益こそが、欧州宇宙機関(ESA)が欧州の加盟国および世界中の新興宇宙開発国における宇宙計画を支援し続けている理由です。

ヨーゼフ・アシュバッハー欧州宇宙機関(ESA)事務局長

10年以上前、宇宙計画を推進していた国は数十カ国に過ぎませんでした。今日では90カ国以上が衛星を打ち上げ、80の宇宙機関が世界中で活動しています。この成長に伴い、各国政府が問うべきはもはや「宇宙活動に取り組むべきか」ではなく、「いかにして開発を推進し、可能な限り費用対効果の高い方法で国家目標を達成するか」です。宇宙へのアクセス手段がより容易かつ手頃になるにつれ、これまで以上に多くの国家主体が宇宙能力を活用できるようになるでしょう。

各国が宇宙を見過ごすことのできない5つの理由

1. 持続可能な開発への宇宙利用

国連宇宙部によると、169の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの約40%が、宇宙を基盤とするサービスによって直接支えられています。グローバルな課題が深刻化する中、タイムリーかつデータ駆動型の介入と持続可能な進展のためには、宇宙を国家のSDGs戦略に統合することがますます重要となっているのです。

2. 効率性の高い参入ポイント

宇宙システムは複雑な場合もありますが、宇宙基盤サービスの台頭により、従来のリソース集約的な宇宙活動に関与することなく、よりアクセスしやすい技術導入が可能となっています。したがって、宇宙技術スタック内の機能のターゲットを絞った開発に重点を置くことで、リソースを効率的に活用し、国家のニーズに沿った実用的なアプリケーションを開発することが可能です。

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3. 国境を超越した外交

今日の分断された地政学的状況において、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)をはじめとする国際的な場への参加は、ますます重要な意義を持つようになっています。これらの場は、グローバルガバナンスへの影響力行使、戦略的パートナーシップ構築、国威発揚につながる有効な手段となっているからです。宇宙外交は、国境を超越した領域における平和的協力と責任共有を強化します。

4. 経済推進力としての宇宙

企業による宇宙投資は2023年から2024年にかけて20%増加し、70億ユーロに達しました。さらに、宇宙活動は多大な波及効果を生み出します。宇宙インフラの整備により、1.8~3.2倍の追加的な波及効果収益が期待でき、その活用によって経済全体では4~8倍の追加的な波及効果収益が得られる可能性があります。

5. グローバルな宇宙活動の加速

現在、地球を周回する稼働中の衛星は約12,000基あり、その80%以上が低軌道(LEO)に存在しています。2024年には259回の打ち上げが行われ、合計2,873機の宇宙機が軌道に投入。その70%は民間事業者による打ち上げでした。商業宇宙サービスの進展と宇宙アクセスコストの低下により、宇宙技術の恩恵はもはや富裕国だけの特権ではなくなっています。

従来の宇宙開発国ではない多くの国々が、自国の具体的なニーズに応えるため、宇宙データを活用する革新的な方法を模索しています。

セネガルでは、高解像度衛星画像を用いて洪水発生リスクの高い地域をマッピング。都市計画の支援や脆弱な地域における災害対策の強化に役立てています。

フィリピンでは、「Free Wi-Fi for All(Wi-Fiをすべての人に)」イニシアチブを支援するため、初の専用インターネット衛星が打ち上げられました。サービスが行き届いていない遠隔地コミュニティへ、手頃な価格での接続環境を拡大しています。

ガラパゴス諸島では、高精度のPNTデータを用いて島を正確に測量。他の場所で繁殖させ、島に戻したエスパニョーラゾウガメを監視することで、島の生態系バランスの再生を支援しています。

これらの事例は、多様な応用分野における宇宙技術の統合が、エビデンスに基づく意思決定を強化し、レジリエンスを促進し、包摂的な開発を支援する方法を示しています。

宇宙開発の進化と課題

宇宙エコシステムの発展に伴い、各国政府や宇宙機関の役割も変化しています。従来、宇宙機関は大規模な科学ミッションや宇宙探査に焦点を当ててきました。一方、宇宙計画の策定に際しては、もはや衛星やロケットを一から開発する必要はありません。宇宙機関は、国際協力を強化し、官民連携による商業宇宙活動を促進するという革新的なアプローチを採用しています。

こうした新たな戦略は、より大きな影響力を持ち、より広範な国家的優先事項に貢献する宇宙能力の統合へと向かう方針転換を反映したものです。

進化する宇宙エコシステムは、科学、産業、各国政府、経済開発が相互に結びついたダイナミックなネットワークです。進展を真に持続可能なものとするには、科学的発見が宇宙戦略、ミッション計画、政策、規制に反映される必要があります。

パスカル・エーレンフロイント、国際宇宙空間研究委員会(COSPAR)会長

ただし、持続可能な宇宙計画の構築は容易ではありません。各国は、限られたリソースや政治的優先事項の変化といった課題に直面しています。さらに、宇宙は膨大な機会を提供しますが、選択肢の多さに圧倒される可能性もあります。サブシステムや衛星製造といったアップストリームへの投資から、地球観測データ分析や位置情報アプリケーションといったダウンストリームの開発に至るまで、今後の方向性を決定することが重大な課題になるでしょう。明確な国家宇宙戦略がなければ、各国は投資の断片化、優先順位の不整合、リソースの非効率的な利用といったリスクに直面し、宇宙の恩恵を十分に享受できなくなる恐れがあります。

国家宇宙戦略ツールキット

こうした状況を踏まえ、世界経済フォーラムはPwCの協力を得て、「国家宇宙戦略ツールキット(National Space Strategy Toolkit)」を発表。同ツールキットは、実行可能な提言を通じて、あらゆる国が国家宇宙戦略を策定、改善し、リソース配分を最適化すると同時に、連携を強化し、強靭なエコシステムを構築できるようにすることを目的としています。

国家の優先事項は開発のロードマップとなり、国民の福祉に最も影響を与える課題に対する政府の取り組みを導きます。同ツールキットは、各国の宇宙戦略を国家の優先事項と整合させ、持続的な社会経済的影響をもたらせるよう支援します。また、世界各国の宇宙戦略とベストプラクティスを包括的に分析しており、各推奨措置のおおよその費用、時間枠、考慮事項、前提条件を明示した上で、具体的事例に基づく提言を行います。

Image: World Economic Forum

各国が今、行動すべき理由

宇宙は、開発、持続可能性、レジリエンスの重要な推進力です。現在、ライドシェアリングから精密農業まで、地球上の様々な分野で数兆ドル規模の価値が生み出されています。この状況における行動の遅れは、経済的機会を逃すことにつながるでしょう。また、国内の宇宙活動への投資を怠れば、イノベーションにおいて後塵を拝し、重要なサービスやデータについて国外プロバイダーへの長期的な依存を強いられるリスクがあります。さらに今、現在および将来の宇宙開発国に影響する宇宙軌道上の交通、宇宙資源、周波数帯域の割り当てに関する規則が決定されつつあります。この議論の場に参加しなければ、自国の利益が軽視される恐れがあります。自国民の宇宙利用の利益を最大化するためには、各国が積極的な宇宙プレイヤーとなる必要があります。

地球観測は、2030年までにグローバルGDPに累計3.8兆ドルを追加する可能性を秘めており、複雑なシステム動態に対するホリスティック(全体論的)な視点を提供します。新興国にとって、これはデータ駆動型で体系的なソリューションになるでしょう。これにより、伝統的な開発モデルを飛び越えて、経済成長と環境保全の調和した独自の機会をつかむことができます。数十年にわたる計画を立て、変化を先取りする政策を実施することで、新興国は明日の経済のリーダーとなるための基盤を築くことができます。

ヤナ・ゲヴォルギアン、地球観測グループ(GEO)事務局長

同ツールキットにより、各国は宇宙活動を国家開発アジェンダと整合させる戦略を設計するための実践的指針を得ることができるでしょう。各国政府に向けたメッセージは明確です。今後数十年にわたる経済成長、持続可能性、影響力を確保するために、宇宙分野で行動を起こす時は今なのです。

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