サイバーセキュリティ

成長企業が選ぶ、国境を越えたデータ規制の対応方法

発行 · 更新
国境を越えたデータ規制により、データプライバシーは今や経営層レベルかつ組織横断的な重要課題となっています。

国境を越えたデータ規制により、データプライバシーは今や経営層レベルかつ組織横断的な重要課題となっています。 Image: REUTERS/Pawel Kopczynski (GERMANY - Tags: CRIME LAW SCIENCE TECHNOLOGY)

Alex Spokoiny
Chief Information Officer, Check Point Software Technologies
  • 国境を越えたデータ規制により、データプライバシーは今や経営層レベルかつ組織横断的な重要課題となっています。
  • 企業はデータに関するすべての課題を把握し、設計段階からプライバシー保護を考慮し、進化する規制に柔軟に対応できる体制を整える必要があります。
  • 明確な役割分担、社内教育の徹底、アカウンタビリティの共有が、データ保護に対する信頼を基盤とした積極的アプローチを可能にします。

現代の高度にネットワーク化された世界では、データは一つの場所に留まらず、またそれを規制するルールも固定されたものではありません。国境を越えたデータの移動は、組織に対してコンプライアンスへのアプローチを再考させる新たな複雑さをもたらしています。

欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)や、米国カリフォルニア州の消費者プライバシー法をはじめとする国境を越えたデータ規制と、増加する地域ごとの条例により、プライバシーは今や経営層レベルの重要な課題となっています。

プライバシーはもはや単なる法的チェック項目ではなく、組織全体に関わる戦略的な取り組みとして、すべての部門に影響を与えるものとなりました。

ただし、複雑さは必ずしも混乱を意味するものではありません。土台となる、透明性、柔軟性、責任の共有という適切な基盤があれば、プライバシーに関するコンプライアンスをビジネス上の強みへと転換できます。

重要な点は、個々の規制に個別に対応するのではなく、課題に先回りして対処する積極的なアプローチを取ることです。このアプローチは持続可能性が高いだけでなく、イノベーションの促進、顧客信頼の獲得、業務効率の向上にもつながります。

透明性の確保

プライバシー保護は、保護の対象を理解することから始まります。従来のデータインベントリ調査だけでは不十分です。リアルタイムかつ動的なデータ把握が必要です。具体的には、収集されるデータの種類、保存場所、システム間の移動状況、アクセス権限者を明確に把握しなければなりません。

例えば、セキュリティ製品を手掛けるチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズでは、データの機密性、文脈、利用目的に基づいて分類とタグ付けを行うツールとプロセスを採用しています。データ管理者と処理者を明確に区別し、データ収集の「理由」について全社的に共通認識を形成します。

組織が必要としているのは、法律の変更に適応可能な、柔軟かつ原則に基づいた枠組みです。

そのデータは本当に必要か。価値を生み出しているか。適切に取り扱われているか。こうした問いが、コンプライアンス遵守だけでなく、システムアーキテクチャ、リスク管理、製品設計におけるより賢明な判断にも指針を与えます。

このレベルの透明性があれば、規制変更やインシデント発生時にも迅速な対応が可能です。また、データの所在と流れを把握していれば、迅速かつ的確な行動を取ることができます。透明性は単なる第一歩ではありません。他のすべてのプライバシー対策の基盤となるものです。

設計段階で組み込むプライバシー

設計段階からのプライバシー保護という理念は、「言うは易し、行うは難し」です。そのため、開発ライフサイクルの基本原則とすべきです。企画段階から展開段階まで、私たちのチームは各機能がデータをどのように収集・処理・共有するか、また初期設定においてどのような制御を設けるべきかを評価します。

プライバシーへの配慮は設計初期における意思決定を左右します。ここでしっかりと検討することにより、後工程でのコストのかかる修正やコンプライアンス上のボトルネックを防ぐことにつながるのです。例えば同社では、最初から詳細なアクセス制御と同意取得メカニズムを組み込んでいます。

自動化ツールは、セキュリティが不十分なストレージや未検証のアクセス経路など、潜在的な脆弱性を、機能のリリースよりもかなり以前に検知します。

この取り組みの効果は計り知れません。最初からプライバシー設計を組み込むことで、開発サイクルが円滑になり、ユーザーとの信頼関係も容易に築くことができるのです。また、リリース後にコンプライアンス対応を後付けで行うと、多くの場合摩擦が生じます。最初から正しく対応することで、機動性と信頼性を高めることができるでしょう。

関連記事を読む

柔軟性の保持

プライバシー規制は、一度決まれば変わらないものでは決してありません。管轄区域によって異なり、常に進化し続けているからです。コンプライアンスを実現するアプローチがあまりに厳密すぎると、この変化の圧力に耐えられません。組織が必要としているのは、法律の変更に適応可能な、柔軟かつ原則に基づいた枠組みです。

同社のグローバルなプライバシー基準は、GDRPなどの最も厳格な基準に準拠しており、自動化とモジュール設計を通じて運用を調整しています。これにより、コアシステムを抜本的に変更することなく、地域ごとの規制を適用することが可能になります。また、新たな市場への展開時にも最小限の修正で対応できるようになっています。

柔軟性は組織のマインドセットにも及びます。同社のデータ保護責任者は、法務、IT、製品、マーケティング、業務など各部門横断的なチームを率い、法規制の動向を監視し、潜在的な影響を予測し、製品開発チームや法務部門と連携して効果的な対応策を計画しています。

先回りしたアプローチを取ることで、土壇場での混乱を回避し、チームと顧客の双方にとっての継続性を維持できるのです。

プライバシーの共有責任化

プライバシー保護は、特定の部門の責任ではありません。法務、IT、製品、マーケティング、業務など、すべての部門が共有する目標として位置付けるべきです。そのためには明確な役割分担から始める必要があります。

例えば、技術部門は技術的保護措置を実施し、マーケティング部門はメッセージの送出において透明性を確保し、製品開発チームは同意取得とデータ最小化を念頭に置いた設計を行うといったように、各部門にそれぞれ果たすべき役割を設定するのです。主要なチーム内にプライバシーに関する意識を根付かせることで、課題が早期に発見され、適切に対処されるようになります。

また、部門横断的な運営委員会を設置し、方針の整合とエスカレーションのための重要な場とします。戦略的なプライバシー目標の進捗状況を追跡し、リアルタイムの課題を明らかにするとともに、意思決定が実行可能な形で行われるようにする必要があります。

また、主要な業績評価指標を共有し、信頼とデータ保護を軸としたインセンティブ制度を導入することで、プライバシーが日々の業務プロセスに組み込まれ、後から追加することがなくなるでしょう。

意識向上に向けた企業風土の構築

ポリシーやフレームワークも重要ですが、持続的な変化をもたらすのは企業風土そのものです。そのため、同社では組織のあらゆる階層を対象に、プライバシー教育に投資しています。

プログラムは各対象者に合わせてカスタマイズされています。エンジニアには安全性の高いプログラミングとシステム強化の手法を、営業・マーケティング担当者には同意取得やデータ開示、責任あるデータ活用について、また経営層には戦略的トレンドや規制リスク、ブランドへの影響についての研修を実施しています。

グローバルなプライバシー対応に取り組むすべての組織にとってのメッセージは明確です。新たな法律の施行を待つことなく、行動を起こすべきなのです。

同社ではまた、EUと米国のプライバシーモデルの比較など、地政学的な動向に関する定期的な説明会も開催しており、チームがコンプライアンスリスクを事前に予測できるよう支援しています。

社内コミュニケーションも重要な役割を担っています。新たな法律の最新情報を共有する、ベストプラクティスを周知する、製品開発やキャンペーン実行においてプライバシーを優先するチームを表彰する、といった取り組みを続けることで、組織全体にプライバシーに関する共通理解が醸成されます。もはやプライバシー対応は単なるコンプライアンス上の負担ではなく、企業風土の一部となっているのです。

信頼の基礎となるデータ取扱方法

国境を越えたプライバシー保護は複雑で変化が激しく、時に重大なリスクを伴うものです。一方で、戦略的にアプローチすれば、それは競合他社との差別化要因となり得ます。信頼を獲得する組織とは、チェックリストに従うだけでなく、適応力のあるシステムを構築し、部門横断的な協力体制を強化し、プライバシーを最優先とする文化を根付かせる組織です。

個々の規制を逐一追いかけるのではなく、設計段階からプライバシーを組み込むことで、従業員が主体的に対応できるよう権限を与え、単なる付随事項ではなく戦略の中核に据えるのです。これこそが、組織が規制の変化にも柔軟に対応し、革新を続け、常に一歩先を行くための秘訣です。

グローバルなプライバシー対応に取り組むすべての組織にとってのメッセージは明確です。新たな法律の施行を待つことなく、行動を起こすべきなのです。常に一歩先を行く姿勢を持ちましょう。組織の基盤にプライバシーを組み込んでください。それを戦略的で、協調的、かつ一貫性のあるものにしましょう。そうすることで、プライバシーは組織の強みとなり、同時に必須要件となります。

結局のところ、プライバシーへの対応方法は、組織のビジネス運営そのものを反映すると言えるでしょう。一度獲得した信頼は、最も強力な競争優位性となるのです。

関連トピック:
サイバーセキュリティ
よりよい企業
シェアする:
コンテンツ
透明性の確保設計段階で組み込むプライバシー柔軟性の保持プライバシーの共有責任化意識向上に向けた企業風土の構築信頼の基礎となるデータ取扱方法

もっと知る サイバーセキュリティ
すべて見る

今、すべての企業に必要な「最高地政学責任者」とは

William Dixon

2025年7月18日

暗号通貨から気候変動まで、Z世代が再定義するサイバーセキュリティの未来

世界経済フォーラムについて

エンゲージメント

リンク

言語

プライバシーポリシーと利用規約

サイトマップ

© 2025 世界経済フォーラム