アフリカがテクノロジーを活用し、グリーン成長への飛躍を遂げる方法

デジタル通信は、アフリカ全土に急速に広がっています。 Image: REUTERS/Antony Njuguna (KENYA)
- 経済の不確実性や地政学的な分断が進む中、インテリジェント時代の到来は、アフリカにとって従来型の仕組みを飛び越え、グローバルなバリューチェーンの変革を主導するまたとない機会となっています。
- テクノロジー、人材、インフラへの迅速な投資と、規制やガバナンスの改革という制度面の整備との間で、バランスの取れた取り組みが求められます。これにより、コネクティビティ、エネルギー、公的機関の制度運用力における根強い課題に対応することが可能になります。
- アフリカの人口ボーナスと資源の豊かさを活用するためには、複雑な国際貿易環境下で包摂的、持続可能かつレジリエンスの高いバリューチェーンを育成する、協調的な政策が不可欠です。
2024年、アフリカのデジタル決済ネットワークのモバイルユーザー数は11億人を突破し、1.1兆ドルを超える取引が行われました。これは、数百万人がグローバル経済に統合されたことを表す、画期的なマイルストーンです。世界がインテリジェント時代へと急加速する中、アフリカのデジタルトランスフォーメーションは、単にグローバル基準に追随するだけではなく、さらに大きく飛び越える勢いです。
世界中の各地域が急速に変革を行っています。例えば、ラテンアメリカのフィンテック業界は、資金調達額が2024年に73%増と急増し、金融イノベーションのハブとしての地位を確立。一方、東南アジアではAI人材プールが拡大し、国境を越えた協業を加速しています。また、持続可能性に重点を置き、テクノロジーを原動力としたグローバル化が、これまでにない包摂性、ダイナミズム、相互接続性を生み出しています。
アフリカ地域は、アフリカ連合の「アフリカ・デジタル化戦略2020-2030」に導かれた革新的なグリーン成長の試験場として、この変革の中心的役割を果たしています。予測によると、サハラ以南のアフリカの経済成長率は、2025年に3.5%、2026年から2027年には4.3%に達すると見込まれています。一方、グローバルバリューチェーンへの統合率はGDPの15%未満に留まっており、重要なボトルネックとなっています。これは未活用の潜在力の巨大さと、デジタルとグリーンにおける変革の完全実施に向けて、地域が克服しなければならない喫緊の構造的課題を示しているからです。
世界人口の18%を占め、中央値年齢が19歳というアフリカは、若く急速に成長する労働力を有しています。ナイジェリアだけでも世界人口の2.8%を占めており、その人口規模は未開拓の潜在的資源と言えるでしょう。また、コバルト、リチウム、グラファイト、レアアースなどの豊富な埋蔵資源は、デジタルとグリーン産業の基盤となるものです。AIとデジタル需要が急増する中、持続可能かつレジリエンスの高いエネルギーシステムおよびクラウドへの投資は、アフリカの目標を実現するために不可欠です。
アフリカのデジタルおよびグリーン変革の転換点
デジタルトランスフォーメーションとグリーン投資が融合することで、アフリカ経済の未来が再定義されようとしています。
2023年時点でアフリカのインターネット利用率は37%に留まり、世界平均の67%を大幅に下回っています。そのため、デジタル・インクルージョンの加速が急務ですが、すでにその動きが顕著です。サハラ以南のアフリカ地域では、2030年までにモバイルユーザー数が7億5,100万人になると予測されています。ケニアのエムペサ(M-Pesa)は、4,000万人を超えるユーザーを擁し、地域展開を拡大。ガーナとナイジェリアは、AIプラットフォームとデジタルIDを活用し、農業生産性と食料安全保障の向上を図っています。
グリーン分野では、モロッコのノール・ソーラー・コンプレックスとルワンダの再生可能エネルギーイニシアチブが先導している一方、エチオピアのエコ工業団地が、低炭素かつ持続可能なサプライチェーンのモデルとなっています。ルワンダのドローン会社、ジップラインのドローンは、遠隔地のクリニックに医療物資を配送。配送時間を大幅に短縮すると同時に、血液の廃棄率を3分の1に削減しています。また、ナイジェリアの決済インフラプロバイダー、フラッターウェーブは、100万社を超える企業向けに1日50万件を超える取引を処理し、企業価値は30億ドルに達しています。

進展と持続的な課題
こうした進展にもかかわらず、重大な課題は残っています。
- デジタル・デバイド(情報格差):サハラ以南のアフリカにおけるインターネット普及率は、平均27%に過ぎません。ケニアと南アフリカがデジタル分野でリードする一方、チャドやニジェールなど多くの国は、依然として大きく後れを取っています。
- 貿易と物流:アフリカの物流パフォーマンスは、OECD水準を大幅に下回っています。国境での遅延や非効率性により、輸出コストが上昇し、競争力が損なわれています。
- エネルギーと持続可能性:アフリカ諸国は化石燃料に多額の投資を行っている一方、クリーンエネルギーへの投資は不足しています。気候目標を達成するためには、年間2,000億ドル以上が必要ですが、送電網の非効率性、限られた電力供給環境、投資水準の信用力の不足に直面しています。
- 制度的差異:モーリシャス、ルワンダ、ケニアなどは安定性とビジネス環境の整備が進んでいる一方、他の多くの国は、投資と地域統合を阻害するガバナンスと制度の障壁に直面しています。
イノベーションエコシステムの強化
AI、クラウド、5G、再生可能エネルギーは、アフリカのデータセンター市場を2030年までに3倍に拡大し、30億ドルを超える規模にすると見込まれています。ナイジェリアのフィンテック企業の例として、モニーポイントは数百万人の決済方法を革新しており、eNaira CBDCは金融包摂を拡大しています。
AfCFTAとデジタル貿易が促進する飛躍
アフリカ大陸自由貿易地域(AfCFTA)とそのデジタル貿易協定が、アフリカのデジタル時代の基盤です。同協定の完全実施により、2035年までに3,000万人が極度の貧困から脱却し、大陸全体の所得が4,500億ドル増加する可能性があるのです。
ブロードバンド、クラウド、デジタルインフラへの大規模投資に加え、規制の統合と国境を越えた相互運用がこの進展を後押しします。官民連携により、主要市場で海底ケーブル、光ファイバー、データセンターの拡大が進んでいます。
ツーアフリカ(2Africa)、エクイアーノ(Equiano)等のテクノロジーイニシアチブが、ブロードバンドの拡大と5Gの実現を促進。「スマート・アフリカ・アライアンス」やアフリカ連合の「データポリシー・フレームワーク」のような汎アフリカ的取り組みにより、デジタル規制の統合と国境を越えたデータ流通が可能になり、グローバルなデジタル・バリューチェーンへの統合が加速。コネクティビティとエネルギーの制約は依然として存在しますが、アジアやラテンアメリカでの成功事例を参考に策定された、こうしたアフリカの協調的なデジタル政策は、農村地域を含む包摂的成長を推進しています。

アフリカの包摂的かつレジリエンスの高い成長戦略は、以下の4つの課題に優先して取り組むべきです。
1. デジタルインフラとスキル
ブロードバンドとクラウドインフラへの投資を強化し、2030年までに50万人のICT専門家を育成するプログラムを立ち上げます。この時には、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)を強力に推進する必要があります。
2. グリーン投資
ブレンデッド・ファイナンスと官民連携により、特に開発途上地域において再生可能エネルギーの拡大を図ります。
3. 規制の近代化
デジタル貿易枠組みの統一を図り、相互運用可能なデジタルIDを導入し、貿易を円滑化するためのツールを展開してコストを削減し、中小企業を支援します。
4. レジリエンスの高いバリューチェーン
アフリカの明るい未来
成長鈍化と高齢化に直面する多くの地域とは対照的に、若年層の多いアフリカの人口と、それによる巨大な経済ポテンシャルは、急速な成長を牽引するものです。一方で、この可能性を解き放つためには、テクノロジーを受け入れるための備え、貿易と投資、持続可能性、制度的な強靭性のすべてを同時に進展させることが不可欠です。
このデジタル化とグリーン化への飛躍は、地域的なマイルストーンを超え、変革的成長のグローバルな青写真となるでしょう。モーリシャス、ルワンダ、ケニアなどの国々の事例が、先見の明のあるリーダーシップとターゲットを絞った投資が、潜在力を持続可能な繁栄に変えることを示しています。アフリカにおけるダイナミックな労働力とイノベーションが、世界中の新興国のストーリーを書き換えています。
グローバルサプライチェーンの未来は、デジタル貿易、イノベーション、持続可能な物流の進展によって再構築されています。今こそ、各国政府、ビジネスリーダー、投資家が、地域内のデジタル化およびグリーン化の先駆者と共に、大胆に投資し、深く連携し、緊密に協力する時です。これを実現するためには、野心的なイノベーション、世界水準のインフラ整備、包摂的な政策の推進が不可欠です。これにより、レジリエンスの高い、グローバル・サプライネットワークの中で、全体的な成長が促進されるでしょう。
今こそ、グローバルリーダーたちがこれらの先駆者と共に投資し、連携し、イノベーションを推進する必要があります。共に、未来のグローバル経済を牽引する、レジリエンスの高い、持続可能なサプライチェーンを築こうではありませんか。
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