イベリア半島の大規模停電から、空港が学ぶ教訓

空港には、将来起き得る混乱への備えが必要です。 Image: Reuters/Ana Beltran
- イベリア半島の大規模停電は、スペインのマドリード・バラハス空港やバルセロナ・エル・プラット空港などの主要国際空港に、即時かつ深刻な影響を及ぼしました。
- 空港は迅速に対応し、非常用発電機を使用して運用を継続。商業便の大部分は当日中に運航されました。
- この出来事は、将来、同規模の混乱が発生した際の影響を軽減するため、空港業界が3つの主要な分野で備えを強化する必要があることを浮き彫りにしました。
2025年4月28日、スペイン本土とポルトガルの大部分を襲った大規模な停電は、航空業界を含む広範な混乱を引き起こしました。
同国の電気事業者、レッド・エレクトリカによると、5秒足らずで15ギガワット分の電力が消失。これは通常時の電力需要の約60%に相当します。
大規模な停電は、マドリード・バラハス空港やバルセロナ・エル・プラット空港など、イベリア半島内の主要国際空港に即時的な影響を及ぼしました。スペインでは、6,000便のうち344便がキャンセルされました。
停電中の迅速な対応が必要
照明が消えたため、空港は迅速に対応する必要がありました。安全を確保し、状況を管理するため、一部の地上停止措置を実施。スペインのサンチェス首相は、「航空交通は影響を受けていませんが、安全と円滑な交通を確保するため、20%の減便を決定しました」と述べました。しかし、部分的な電力供給しかできない状況下では、基本サービスすら困難でした。
停電の影響は空港だけにとどまらず、公共交通機関も麻痺。地下鉄、列車、信号機が停止し、交通渋滞が発生し、乗客や職員の空港への移動が困難になりました。救急隊員と空港職員は対応に追われ、容易に現地へ移動できない状態が状況をさらに悪化させました。
こうした停電による混乱にもかかわらず、空港運営者は迅速に対応しました。すべての空港で危機対策委員会を設置し、航空会社、航空交通管制、インフラパートナーとの継続的な連絡を維持して対応を調整するなどにより、重要なサービスを復旧させたのです。
空港では、非常用発電機を使用したことにより、停電当日も商業便の93%が運航を継続することができました。一方、主なボトルネックはアクセスと外部インフラ関連でした。交通機関の混乱により、乗客と乗務員がターミナルに到着することが困難だったからです。
これは、バックアップ発電機で電力が復旧し、空港インフラが完全に機能していても、乗客と乗務員が空港に到着する際に直面する課題によって、飛行の混乱が続く可能性があることを意味します。
空港に必要な備え
今回の停電は、最も堅固な空港のレジリエンス戦略でさえも、外部インフラの脆弱性によって損なわれる可能性があることを強く印象づける事例となりました。イベリア空港で発生した事態は、3月の英国ヒースロー空港の混乱と類似したカテゴリーに属します。近隣の変電所で発生した火災が全面的な停電を引き起こした際、ヒースロー空港はほぼ18時間にわたり、すべての運航を停止しました。
これらの二つの事例は共通点を持つものの、様々な背景やインフラが対応に違いをもたらす可能性があることを示唆しています。
空港が気象の影響や運用上の混乱に備えを進める上で、これら二つの事例は、状況に応じたレジリエンス戦略と、電力会社をはじめとする外部パートナーとの強固な連携の重要性を示しています。航空業界にとってこのことは、将来の危機において業務の継続性を確保し、乗客への影響を最小限に抑えるためには、さまざまな事例から学ぶと同時に、レジリエンス計画を柔軟に対応させていく必要があることを改めて認識させる契機となりました。
では、そのような大規模な混乱の影響を軽減するために、空港運営者が重視すべきことは何でしょうか。以下がその一例です。
- 交通事業者の重要な役割:空港運営の復旧と同時に、混乱時におけるアクセスルートの維持は極めて重要です。緊急時のアクセスを確保して乗客と職員にリアルタイムの情報を提供できるよう、高速道路や公共交通機関の事業者がシナリオ計画に参画する必要があります。
- 標準化されたコミュニケーションと共同計画:外部パートナーとの標準化されたコミュニケーション手順や共同でのシナリオ計画が存在しない場合、混乱の影響が悪化する可能性があります。対応を協調的かつ効果的なものにするには、こうした枠組みの確立が不可欠です。
- ドミノ効果への対応計画:システムの一部分が機能停止すると、その影響は急速に広がる可能性があります。統合的なリスク評価を行い、システムを冗長化し、すべてのパートナーとシナリオを共有して計画を策定することで、危機に発展する前に脆弱性を特定することができるでしょう。
影響軽減に向けた投資の価値
スペインでは約14億ユーロの経済損失が発生し、保険求償のみでも1~3億ユーロに上ると推計されています。この数字は巨大ですが、航空業界が事前に賢明な計画を準備していたために、さらに大きな課題の発生は回避することができています。
停電が発生した際、スペインの空港では一部の便で遅延とキャンセルが発生しましたが、ほとんどの運航を継続できました。その理由は、バックアップ発電機と堅固な緊急計画を備えていたためです。これにより、キャンセル数を抑えることができ、旅行者と航空会社の双方にとって混乱が軽減されました。
では、ここから得られる教訓は何でしょうか。それは、バックアップ電源や危機管理計画への投資は初期費用がかかりますが、災害が発生した際にはその価値が発揮されるということです。航空業界では、1分間の運航停止が莫大な損失と評判の失墜を招く可能性があります。準備を怠るわけにはいかないのです。
もっと知る レジリエンス、平和、安全保障すべて見る
Benedikt Gieger and Mario Truss
2025年2月21日